みなさんこんにちは。突然ですが、今年の7月1日付でNPO法人『グリーンバード』の代表を退任し、それに伴いこの連載を今回で終えることになりました。退任は自ら望んだことではありますが、みなさんと誌面上ではお別れとなってしまい、悲しいです……。
以前のコーナー タイトルである「まちのプロデューサー論」も含めると、約7年間、計86回にわたり、連載させていただきました。その数だけ各地の「まちのプロデューサー」を取材したことになりますが、本当におもしろい方ばかりで、私も多くの刺激を受けました。学んだことの一番は、まちを盛り上げるには、「まず自分が汗を流す」「走りながら考える」、そして、「とにかく自分が楽しむ」ことが必要だという、(名付けるなら)「プロデューサーの必須3か条」でした。登場していただいた方々は、皆多くの時間を費やし、リスクをとって活動している人ばかりでしたが、目を輝かせながら活動を紹介してくれるたびに、まちのために尽くすと知らぬ間に自分自身に"徳"と"得"がたまっていくのだと感じていました。
まちで得られる"得"とは?
ごみ拾いには、「一度でも参加したことのある人は二度とポイ捨てしない」法則というのがあるのをご存じですか? 私はこれまで、『グリーンバード』の代表として、ポイ捨てゴミをゼロにするべく、なるべく多くの人に参加してもらうための仕掛けづくりを試行錯誤してきました。その際、とにかく、「かっこよさ」や「話題性」を追求してきました。同時に、みんなでごみを拾う行為を通じて自然とできる、老若男女が交じり合ったごちゃ混ぜなコミュニティに可能性を感じてきました。
また最近、講演などに呼ばれると必ず唱えるのが、「脱SNS」という呪文です(笑)。FacebookのタイムラインやGoogleの検索結果など、私たちが普段接している情報は、属性やインターネット上でとったアクションを考慮したアルゴリズムによって一人ひとりに最適化されています。それはすなわち、自分と異なる価値観と出合いにくいということ。摩擦が起きなければ、人々の発想力や構想力、それにイノベーションを起こす力はどんどん失われます。そして、ほかの価値観を持った人や別の境遇に置かれた人を思いやる気持ちが失われていきます。それは社会で起きているいろいろな困難や、その解決に向けて取り組んでいる人への眼差しを失うということと同じことです。
一方、まちのリアルなコミュニティには、本当に多様な人がいて、多様な価値観があります。イノベーションは、異なる価値観が出合ったときに生まれるのだとすれば、言ってみれば、まちはイノベーションの源泉だともいえます。「まちのプロデューサー」は、多様な人とともにコミュニティの課題を解消していく活動の中できっとその醍醐味をもっとも感じていて、それが彼らの"得"になっているんだと思いました。
これからのこと。
グリーンバードを辞めるものの、まちで得られる"得"はみすみす逃すわけにはいきません。3期目に突入した東京都港区の議員として、引き続き身近なまちで成功事例をつくり、それを各地に展開していく活動は続けつつ、これからは全国のまちプロデューサー同士、またそこに住む人同士をつなげて、さまざまな場所の関係人口を増やしていくことにも取り組んでいきたいと思っています。AⅠを使ったツールを開発したり、ツアーの企画なども行っていますが、具体的な活動については、またどこかで改めてお話ししたいと思います。
あともう一つ。現代版! のスナックもやります。 SNSでは出会っていなかった、でも出会うべき人と人をつなげる場をつくるべく、現在準備をしているところです。スナックのママ兼ファシリテーターが社会課題の解消に取り組むみなさんの出会いをサポートします。ぜひ遊びにきてください。そのほか、『グリーンバード』で活動していた分の時間が空きますので、これを機に、これまでとは違った分野の人たちとも活動できればと考えています。
改めて、長い間の連載、本当にお世話になりました! このような機会を与えてくれたソトコト編集部のみなさん、ゲストの皆さん、毎回の取材につき合ってくれたインターンの学生たち、そして何より読者の皆さんに心から感謝いたします。そして今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!