香川県高松市の女木島は、周囲約9キロ、人口100人余りの小さな島。今年は「瀬戸内国際芸術祭2019」の会場としても賑わっている。
カラフルな海水浴客で賑わう夏の島。そのすぐ隣で観光客を唖然とさせる祭りがあった。瀬戸内海に浮かぶ女木島で、2年に一度開催される住吉神社の大祭だ。祭りの最終日、白装束の男たちは勢いよく砂浜を突っ切り、太鼓台もろとも海へ飛び込む。
つは女木島では、明治から続く若中規約(祭りのオキテ)を頑なに守り続けている。漁師の島らしく、豪快にして質実剛健。陸上では、4人の太鼓叩きの少年を乗せた太鼓台を30〜40人の男衆が担ぎ、ぐるん、ぐるんと、垂直になるまで何度も転がし続ける。弱音を吐かず歯をくいしばる少年と、それを汗だくで支える男たち。少年が島の男になるイニシエーションでもある。
今なら、なぜこんな危険で無意味なことを、と思うかもしれない。でも100年前はこれがリアルだった。力よりも、よう辛抱した、助け合ったと、心の強さを讃えながらこの島の人たちは生きてきた。時代が変わっても、失ってはいけないことがある。無骨な背中が、そう語っている。