夏に大垣駅前にある和菓子屋を訪れると、おちょこに入った水まんじゅうが店先の水槽の中で冷やされている光景を目にします。大垣の夏の銘菓としてすっかり定着している水まんじゅうですが、なぜここまで多くの人に支持されるのでしょうか。他の地域の水まんじゅうとは何が違うのかを探ってみることにしました。今回は、寛政十年(1798年)創業で、古くから大垣の良質な地下水にこだわった和菓子作りを続ける金蝶園総本家さんにお話しを伺いました。
大垣の「水まんじゅう」と豊富な地下水の関わり
「“そんな土地で“夏に冷やして食べられるお菓子はできないか”と誕生したのが水まんじゅうだったんです」と北野さん。明治時代より暑さをしのぐお菓子として地元で親しまれてきたそうです。
金蝶園総本家の水まんじゅうも豊富な地下水を利用して作られています。地下水の良い所は年間を通して水温が14~15℃ぐらいに保たれていること。冷たくてきれいな水が安定して出るのだそう。
“ぷるぷる、つるん” 独特の食感が魅力の「水まんじゅう」
葛やわらび粉はでんぷん質が含まれるため、水の中に入れると白く固くなってしまいがち。“ぷるぷる”の食感を保つため、大垣の水まんじゅうは形成段階で水の量をかなり多く配合しています。それは、温かい状態では糊状で手では形成できないほどなのだそう。
そこで登場するのが“お猪口”です。お猪口に餡と糊状の生地を流して形成し、こし餡を中に入れて蒸しの工程に進みます。その後、店頭に置かれた井戸舟に浸けた状態で冷やして販売されるのです。
あっさりとしたこし餡がクセになる!
こし餡を作る過程で、まず「渋きり」と言って、渋み成分であるタンニンを茹でて、茹で汁を洗い流すという作業を3~4回も繰り返しているのだと言います。その後に小豆の皮を取り、中身のでんぷん質に水を加えて沈殿させる「さらし」という工程が発生します。小豆のでんぷん質は水に溶けないので沈殿するそうですが、水に含まれた余分な成分を流して、また新しい水を入れてさらすという工程が繰り返されます。
「大垣の水まんじゅうは、こし餡作りにも、販売にも地下水が必須で、まさにここでしか実現できない味なのではないかと思います」と北野さん。
ぷるぷるの食感の皮と水にさらさらと溶けだすこし餡の絶妙なバランスがクセになる大垣の水まんじゅうは、大垣の地下水あってのものだということがよくわかりました。
できればその日のうちに食べるのがおすすめ
店頭に出される水まんじゅうも、出来てから2~3時間以内のものを常に補充していらっしゃるそうです。
「冷蔵庫に入れず常温保存すること」
「食べる時は器に細かい氷と水を入れ、そこに水まんじゅうを浮かべる」
「氷水で冷やしてから約2分で食べごろになる」
とのこと。この食べ方でいただくと、大垣の水まんじゅうのよさが引き出されるので、ぜひお試しください!
岐阜県大垣市の夏の名物「水まんじゅう」。大垣に足を運んだ際はぜひ食べてみてください。
■金蝶園総本家 大垣駅前本店
住所:岐阜県大垣市高屋町1-17
時間:8:00~18:00 TEL:0584-75-3300
http://www.kinchouen.co.jp/