ストーンサークルのある里と「縄文」との新たなつながり。

ストーンサークルのある里と「縄文」との新たなつながり。

 新たに縄文遺跡群が世界遺産に認定され話題を呼びそうな北東北。同じ北東北の中でも盛岡市や秋田市を越えてさらに北へ向かうと木々の様子や景色も変わり、米の文化圏に代わって雑穀の文化圏が広がってきます。鉱山や火山地帯など山の文化が色濃くなり、地元もこうした特色を積極的に観光や物産に落とし込んでいます。
 『大湯ストーンサークル』がある秋田県鹿角市十和田大湯ではここ数年若い世代が移住して草木染で布を染めたり、パティシエと地元食材のお菓子作り教室をしたり、道の駅がワークショップ会場になったり、農業や観光などさまざまなジャンルで地元の風土と生活に根差した新しい動きが広がっています。鹿角は民俗学者の柳田国男も民俗調査の対象として重要視していたところ。彼はこの東北の最も奥に位置するエリアの文化的広がりの中心は津軽ではなくこの辺りにあると考えていました。

『道の駅 おおゆ』が拠点となってさまざまなワークショップが開かれている。

 近くの五城目町の中山遺跡からは「からむし」(苧麻)などの繊維を使った紐や布が出土しています。縄文文化の中にも土器や出土品の特徴などからいくつかの文化圏があり、北東北から北海道にかけては土にこれらの繊維を混ぜて焼く「円筒式土器」の文化圏にあります。生態系や気候による食文化の違いなどこうした文化圏は縄文時代から形成されていたといえます。十和田大湯で染め物や焼き物などのクラフトやデザインを手がける『工房天羽」の成田高秀さん・一加さんご夫妻は首都圏から本家のある鹿角に移住。糸を紡げる繊維を探しているうち、地元では「アイコ」と呼ばれ山菜としても食べられているミヤマイラクサにたどり着いて糸を紡いでみたそうですが、これが苧麻とともに縄文時代にも繊維に使われていたと知って驚いたそうです。また、焼き物を作ろうと土を探しても焼きにくい土しかなく、何度やっても「土器にしかならなかった」そう。そこでひび割れ防止に繊維を混ぜてみたらしっかりした割れにくい焼き物がようやく出来上がったのですが、それが実はこの地域の縄文遺跡から出てくる技法だったことを知ってまたとても驚いたとか。

山菜の「アイコ」(ミヤマイラクサ)は苧麻と同じイラクサの仲間で、縄文遺跡からも布片が出土している。

 尾去沢鉱山をはじめ、この辺りは中世から日本屈指の鉱山地帯でもあり、各地から出稼ぎに人が集まり温泉の存在も相まって山の中に都市的な場ができていったところ。移住してきた若い世代がいきいきと活動しているのもこうした土地柄が関係しているのではないでしょうか。
 縄文時代には新潟県で採れるヒスイや北海道で採れる黒曜石が全国あちこちの遺跡で出土するなど、列島上に広い交易圏があったことが知られています。世界遺産の登録は地元でも盛り上がりを見せていますが、縄文という視点から北東北は、またひとつ新たな表情を見せてくれそうです。

text by Kenichiro Hoshi

記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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