石井菜穂子さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
こうした仕組みと地球の現状をわかりやすく教えてくれるのが、『小さな地球の大きな世界─プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』です。「プラネタリー・バウンダリー」とは、地球上で人間が安全に生存できる限界を表す概念で、環境学者のヨハン・ロックストローム博士をはじめとする科学者グループが提唱しました。この本で書かれている内容が私の活動の軸となっている、地球を人類の共有財産として捉える「グローバル・コモンズ」という考え方の土壌にもなっています。本書は、プラネタリー・バウンダリーはもとより、多数の要素が相互に影響し合い、全体として機能している「地球システム」の危機の意味やそれに対する私たちの選択肢についてもわかりやすく書かれており、気候変動や生物多様性喪失など地球環境問題をこれから学ぼうとしている人にまず読んでいただきたい一冊です。
この本と併せて読むことでグローバル・コモンズの考えをさらに深められる、という点でおすすめしたいのが、経済学者の宇沢弘文さんの著書『宇沢弘文の経済学─社会的共通資本の論理』です。宇沢さんは1970年代の初頭から経済学の視点で地球温暖化などの環境問題に取り組んでこられ、炭素税の研究もされていました。本書では、「社会的共通資本」について詳しく書かれています。この概念の基礎は、自然環境や社会的装置(社会インフラや教育など)は社会が協調して管理すべき共通の財産だという考えであり、グローバル・コモンズの考え方にもつながります。宇沢さんは残念ながら2014年に他界されましたが、社会的共通資本は地球環境問題を考えるうえで今日に生きています。
地球規模の問題は、気候変動をはじめとする環境問題も身近な社会問題も根っこでつながっています。人々がそれを理解し行動することで、人類の未来への新たな道が開けると思います。