「持続可能性」や「人と自然環境の共生」をキーワードに、食資源を活かした地域・まちづくりを研究・実践する吉積巳貴さんが、私たちの生活に欠かせない「食」におけるサスティナブルな買い物のポイントを提案します。
目次
買い方の3つのPOINT
地球環境や、地域経済の持続可能性に貢献する食品かどうかを示す認証ラベルを見て選ぶ。
地元周辺でつくられたものを購入する。生産者とつながることで、生産と販売方法が見直されるきっかけになる。
食べたあとの「廃棄」まで考えて買う。買いすぎや過剰包装を減らす「量り売り」は、今注目のキーワード。
自分が買いたい食品の背景を、「見える化」して買おう。
「食」に関する行動が、持続可能なまち・地域づくりにどのように関わっているのか。さまざまなプロジェクトに携わるなかで実感したのが、「食は、人間の生活と自然環境を結びつける一つの媒体」だということです。たとえば、農業は食べ物を供給するだけでなく、その土地の生物多様性や自然環境を守ることにつながるほか、神事などの文化継承に貢献する面もある。食べ物は、消費すれば終わりではなく、地域や地球の持続可能性に多面的に関わっているのです。ところがさまざまな商品があふれる今、「生産・販売・消費」の過程が見えづらくなり、自分が買う物が環境や社会にどう影響するかが分かりにくくなっています。そこで「食」の背景をちゃんと「見える化」して商品を買うことが大切です。
まず意識したいのが、信頼できる「生産者」かどうか。購入時にその都度調べるのは大変ですから、参考にしたいのが認証ラベルです。環境に配慮した商品であることを示す「エコマーク」、持続可能性に配慮していることを示す「レインフォレスト・アライアンス認証マーク」など、さまざまな種類があります。ほかにも、各地域の自治体が地元農産物の安全性を証明するためにつくった認証ラベルも増えています。
暮らしている地域の近くでつくられたものを買うことも、「生産・販売」の過程が見えやすく、サスティナブルな食品かを見極めやすくなるポイント。消費者と生産者の距離も近いので、互いに刺激し合い、地域の資源や環境、経済の持続可能性に貢献する生産・消費行動につながるという大きなメリットも感じています。海外商品よりも販売店までの輸送エネルギー量も少ないので、環境負荷も軽減できますね。私もスーパーマーケットの直売コーナーや地元野菜の産直通販などをよく利用しています。
そして、忘れてはいけないのが「消費」の部分。食品ロスや過剰包装の恐れはないかなど、「廃棄」のことまで考えましょう。今注目なのが「量り売り」で、青果店や精肉店のほか一昨年に京都にできた量り売りのスーパーマーケット『斗々屋』など「ゼロ・ウェイスト」に取り組む店を選ぶのも手です。
自分が買いたいと思う食品の背景を一つずつ「見える化」していくことは、実はつくり手との信頼関係を構築することにつながっています。そんな関係性がそれぞれの土地で生まれれば、最終的に地球や社会の持続可能性につながるのではないでしょうか。
よしづみ・みき●京都大学大学院で「まちづくり」のベースとなる人文地理学や環境経済学を学び、2018年から立命館大学食マネジメント学部で地域づくり、環境教育、ESDなどの研究のほか、環境問題解決のプログラムの開発にも携わる。
text by Haruna Koutake illustrations by Yuka Hashimoto
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。