もしあなたが、茅葺き屋根の古民家を相続したらどうする? 取り壊して新たな家を建てるか、古民家のよさを生かしてリノベーションするか。屋根の茅を降ろして今どきの屋根にするか、茅葺き屋根を維持するか。考えてみると、茅葺き屋根の維持や費用について、分らないことがたくさん出てきそうだ。千葉県南房総エリアで、冬の期間だけ茅葺き職人のワラジを履く3人がいる。茅葺き屋根を維持しながら葺き替えを依頼する人と、依頼されて葺き替える人に、茅葺きの作業や金額、この仕事を始めたきっかけについて話を聞いてみた。
そもそも、茅葺き屋根の長屋門を維持し続ける理由とは? 「百姓屋敷じろえむ」の場合
親方を務めるのは、岡巌(おかいわお)さん。南房総エリアで茅葺きを行っていた70~80代の職人が8人ほどいたとき、2年ごとにこの長屋門の手入れをしに来ていたという。20年前、茅を運んだり掃除したりする手元として働いたのが、この仕事を始めたきっかけだった。 2010年、この長屋門で作業を行ったときに初めて、職人として仕事をしたという。あれから12年、当時の親方や職人たちはみんな引退してしまい、岡さんが親方を務めるようになった。
「残していると観光資源になる」
という答えが返ってきた。たしかに、百姓屋敷じろえむといえばこの茅葺き屋根の長屋門が印象的だ。
茅葺き屋根のメンテナンス費用はどれくらい?
手間賃:60万円(職人が用意した資材費含む)
これが今回の差し茅にかかっただいたいの金額だが、この金額を払えばどこの葺き替えでもできる訳ではない。なぜなら、茅は南房総エリアで刈り取りを行っている会社から購入しているので、運搬費があまりかからない。使用している足場は稲葉さんが所有しているものなので、これにもお金はかかっていない。竹を使うときも、稲葉さんの敷地の竹を使っている。
なので、都内で同じ作業をするとしたら、資材の運搬や職人たちの滞在費、足場代など、金額はもっと膨れ上がるだろう。そして、メンテナンスのタイミングでかかる費用も違ってくる。稲葉さんは毎日茅葺き屋根の状態を確認しているという。
稲葉さん「今やっとけばいくらもかかんないなとか、これは早くやんないととか、見極めてる。茅の質によっても持ちが違うし、茅にはグレーゾーンがいっぱいあるんだよ。台風で傷みが酷かったから、今回はがっちりやってもらった。これで10年はさわんない」
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新築で茅葺き屋根の家は建てられるのか?
水田家とは、千葉県鴨川市にある国登録有形文化財の旧水田家住宅のことで、千葉県大多喜町の職人が親方を務めていた。坂本さんは以前ゼネコンで高所作業の仕事をしていたが、持続不可能な都会生活に見切りをつけて田舎へ移住したという。そこで茅葺き屋根に出会い、「3Dでしか、図面に落とせない未知の世界、茅沼にはまっています」と話す。
法第二十二条の規定による区域の指定の解除については、法令上特段の規定は存在しな
いが、当該区域及び周囲の建築物の状況等地域の実情に応じて防火上支障がないと判断さ
れる場合は、同条第二項の規定の準用等により区域の指定の解除が可能である。
茅葺き屋根の古民家を維持し続ける理由とは? 築200年の古民家「ろくすけ」の場合。
遠藤さん「この家は昔のままで、仕切られていない部屋を子どもたちが走り回って遊ぶことができます。昔こんな風に暮らしていたことを、子どもたちに伝えたい。自然の中の暮らしを伝えることが、ろくすけの存在意義だと思っています」
足場に運んだ茅の残り具合を見て下に降り、新たな茅の用意をしているのは宮下翠(みやしたみどり)さん。3人衆のなかで一番若い30代だ。大工仕事もしている宮下さんは、2014年に栃木の会社が行った高家(たかべ)神社拝殿屋根葺き替えの手元として仕事をし、そこで岡さんとも出会っている。若手の宮下さんから見た茅葺きの魅力を聞いてみると……
逆に、茅葺きの難しいところを聞いてみると「大工は糸を使って合わせるけど、茅葺きは目見当で合わせている。あんばいや加減が難しい」と言う。
3人衆はそれぞれ、農業や大工仕事などいろいろなワラジを履き替えながら仕事をしている。そんななかでも茅葺きの仕事は勉強になると岡さん。
「縄をなう(※)」とは、縄になる材料をより合わせて縄を作るということ。茅の葺き替えを行いながら、ほかでも生かせる技や昔の知恵を学べるのはやりがいがありそうだが、「冬は寒いし、ほこりだらけだし、中に入ればススでまっ黒になるし、大変なことばっかだよ」と、岡さんは笑いながら付け加えた。
取材協力:茅葺き職人
百姓屋敷じろえむ(http://jiroemu.kikirara.jp/)
NPO法人千葉自然学校(https://www.chiba-ns.net/)
※順不同