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特集 | 地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ。

奈良・奥大和に足を運んでもらうための、楽しい仕掛けづくり。【地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ。[第7回 奈良県編]】

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江戸時代初期に五條藩の城下町として開かれた「五條新町通り」があり、天誅組のゆかりの地で「明治維新発祥の地」と言われるなど、古くから栄えた奈良県五條市。美しいまち並みや史跡、社寺など見どころも多く、現在も残る「五條新町通り」は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

その通り沿いに、築約250年の町家を改装した和食レストラン『五條 源兵衛』があります。食材は、料理長が自ら「畑と対話しながら」選ぶ、朝摘みの野菜が中心。素材そのものが持つ旬な味わいを堪能することを目的に、五條市にやってくる人も多いそうです。

一方で、まちを走る唯一の鉄道であるJR和歌山線は、昼間は1時間に1本の運行と決して便利とはいえず、鉄道での来訪者は必ずしも多くありません。そこで、行政・地域の人々・交通事業者が連携し「もっと大勢の人に、五條市を含む奈良県の南部・東部の魅力を発信したい」と、新たな取り組みが始まりました。

「五條新町通り」のマップ。通り沿いを中心に、見どころのスポットが複数あります。
古いまち並みを楽しみながら、歴史を感じられる建物や寺社などを巡ることができます。
目次

県の取り組みを機に、地域でのコミュニティづくりを学ぶ

『五條 源兵衛』の料理長の中谷曉人さんは以前、五條市内で小さな割烹料理屋を経営していましたが、ある奈良県職員との出会いを機に、国と県と市の支援のもとで古民家を改修して再生し、地域のみんなで飲食店をつくるプロジェクトの存在を知ったといいます。

「私は当時24、25歳で、何から手をつけたらいいのか、まちづくりとはどうするのか、何も知りませんでした。『五條 源兵衛』の当時の建物は、外観はきれいだったものの、中は傾いていて畳から草が出ているような状況で、お化け屋敷のよう(笑)。そんなところからのスタートでしたが、地域の方と信頼関係を結び、コミュニティをつくっていくことを、県職員さんや地域の方々に学ばせていただきました」

そう振り返る中谷さん。2010年にオープンした『五條 源兵衛』は、少しずつファンを増やし、2017年に『ミシュラン2017奈良特別版』で一つ星を獲得。県内外での知名度を得ていきます。

『五條 源兵衛』の料理長・中谷曉人さん。五條市の隣にある和歌山県橋本市で生まれ育ち、小学生の頃に「料理人になりたい」と決めていたといいます。奈良調理短期大学校に通ったことで、奈良とのご縁が始まったそう。
お店の建物は築250年のもの。取り壊しの危機にあった際に地元企業の創業者が保存のために買い取り、地元有志で立ち上げ中谷さんが代表を務める『あすも』が建物を借り受けて運営しています。

奈良県が仕掛けた「奥大和」という地域ブランディング

中谷さんが「人生の転機になりました」と話す、県のプロジェクト。その背景には、奈良県の「県の南部・東部地域へ足を運ぶ人を増やしたい」という強い願いがありました。

奈良県の総務部知事公室・奥大和地域活力推進課の課長である米川浩さんは、こう話します。

「県の南部・東部の19市町村は、自然豊かで歴史もある、魅力あふれるエリアです。10年ほど前から、このエリアをみなさんに知っていただき、交流人口や関係人口を増やしていくため、『奥大和』という名称を考案し、ブランディングをしてきました。この約10年間で移住者が増え、移住した方がキーパーソンとなり、コミュニティを築いてくださっています。地域活性化において、地域のキーパーソンやコミュニティの存在はとても重要です。県でも奥大和の関係人口創出や移住促進などの取り組みを行ってはいますが、地域の外側からできることは限られており、この取り組みが長く続けられることも、行政の手が離れても地域が発展していけることも、地域のキーパーソンやコミュニティのお力添えがあってのことです」

奥大和地域活力推進課は、イベントの企画・運営など、プロジェクトの具現化を担当する部署。例えば、自然のなかでアートを感じる芸術祭「MIND TRAIL(マインドトレイル)奥大和 心のなかの美術館」や、若き日の弘法大師が歩いたとされる「弘法大師の道」を走り抜けるトレイルランニングレース「Kobo Trail」などを主催しています。

「イベント以外でも、奥大和へ足を運んでいただけるきっかけをつくりたいと考えました。でも、私たち行政は情報発信の手段が少なく、企画などが得意ではありませんから、人を呼び込む商品づくりや情報発信の得意な企業さんにお願いし、連携することになりました」そう話す米川さん。同課(当時は移住・交流推進室)が連携したのが、『JR西日本グループ』だったのです。

写真右から、奈良県の総務部知事公室・奥大和地域活力推進課の課長・米川浩さん、主事・森下亜希子さん。森下さんは「奥大和のなかでも特に五條市は美しいまちで、地域の方たちのご協力もあるあたたかい地域。奥大和をこれからもいろいろな方法で伝えていきたいです」と話します。
「五條新町通り」の南側には吉野川が流れています。まち中散策でその景色を楽しむことも。

地域に足を運ぶ、楽しい仕掛けづくりを

『西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)』の近畿統括本部・阪奈支社の地域共生室で奈良県を担当する松中紗恵子さんは、次のように話します。

「ありがたいことに奈良県様から当社グループにお声がけいただき、2019年から連携させていただくことになりました。奥大和地域の認知度向上・誘客促進に向けて、グループ会社と連携をして、日帰り・宿泊旅行商品の作成、魅力発信ポスターの作製・掲出、奈良駅や大阪駅での観光PRイベント開催などに取り組んできました」

写真右から、JR西日本阪奈支社の松中紗恵子さん、飯田慎也さん。JR西日本コミュニケーションズの小孫真帆さん。奈良市出身の飯田さんは「奈良県出身者でありながら、実はこの事業に関わるまで奥大和のことを知りませんでした。奥大和の五條市や御所市(ごせし)は都会から1〜2時間で行くことができる、すばらしいところです。この地に来てよかったと思っていただけるよう尽力していきたいです」と話します。
奥大和地域に特化した宿泊と交通がセットになった旅行商品。毎年内容をアップデートしながら奥大和の良さを発信しています。
奥大和地域の認知拡大として、JR大阪駅でのデジタルサイネージの掲出と、イベントを開催。

そんな中、2022年にJR西日本の移動生活ナビアプリ「WESTER」内で開催されたのが、「五條街並み散策デジタルスタンプラリー」でした。「五條新町通り」を中心に五條市を楽しんでいただきたいという思いでつくられ、「食べる」「見る」「買う」の対象スポットを巡るとデジタルスタンプをもらうことができる取り組みです。

「人々にとって目的地になるような魅力的なお店である『五條 源兵衛』さんに声をおかけしました」と、松中さん。快諾した中谷さんが、地域の約20店舗をまわり「やりませんか」と声をかけていったといいます。

松中さんや中谷さんたちは、どのような人が利用するのか、事前にはふわっとした想像しかできず「それぞれの飲食店に普段から来られているお客様が多いのかな」と考えていました。しかし、いざ始まってみると、五條市に現れたのは新たな客層だったのです。

「開催期間中(9月末〜11月)、スタンプラリーを楽しむ女性の姿をよく目にしました。また、アプリからこのスタンプラリーに『参加します』というボタンを押してくださった方も我々の予想以上に多くいらっしゃいました。その客層のデータや、どんな所に興味を惹かれたのかが分かったことは、私たちにとって有意義でした」と、松中さんは振り返ります。

中谷さんも、「『五條街並み散策デジタルスタンプラリー』は、価値のある事業でした」と話します。「『スタンプを集めるのがお好きな方がこんなにいらっしゃるんだ!』と、驚きました。遠方から来てくださり、『コンプリートするぞ』と楽しんでいらっしゃる様子を目の当たりにし、これまでの当店のお客様とは違う層にアプローチできる可能性を感じましたね」。

2022年度に開催された、デジタルスタンプラリーの特設サイトページ。

地域の魅力や情報を伝えるプロたちがバックアップ

松中さんは、「『五條街並み散策デジタルスタンプラリー』で人気だった店舗や、女性が多いと客層が分かったことで、具体的なお客様像を描きながら初めてつくったプランが、2023年度の『駅プラン』です」と話します。「駅プラン」とは、往復のJR券とランチがセットになったお気軽な日帰りプランで、JR西日本グループである『日本旅行』が手掛けています。

奥大和をPRするための一つの手段として、2019年度から和歌山線沿線の五條市や御所市をめぐる「駅プラン」が考案されました。「駅プラン」を担当している『日本旅行』奈良支店の作道陽子さんは次のように話します。

「当社はこれまでは、奈良から県外のエリアへ行く旅行商品がメインでした。でも、地方創生や地域の課題解決が叫ばれるようになり、奈良県への誘客にまつわるお仕事が増えたんです。今回の奈良県さんとのお取り組みも、他地域から奥大和へ来ていただく旅行商品をつくるお仕事で、むずかしさはありますがやりがいを感じています。奥大和は、本物を知る人たちにとって魅力的な場所だと感じています。うまくPRできるような商品をつくっていきたいです」

そして、完成した商品を広く知らせることも大切です。広告デザインや情報発信は『JR西日本コミュニケーションズ』が担当しています。

地域の課題を解決する専門部署であるソーシャル&コンテンツビジネス局で、プロデューサーをしている小孫真帆さんは、「地域のみなさまの熱い思いを節々で感じて、広告の力を使って発信することで、全国に魅力を伝えていければと思っています。より効果的なコミュニケーションにするため、さまざまな訴求方法を思索しました。また、デザインについては商品の特徴や季節感を大切にしながら、より奥大和のイメージが伝わるよう意識しています」と話します。

写真右から、『日本旅行』奈良支店・支店長を務める江畑隆史さんと作道陽子さん。「五條街並み散策デジタルスタンプラリー」の豪華な景品には『日本旅行』の協力があったそうで、江畑さんは「今後さらに旅行需要が増えてくると予想されるので、私たちの商品で多くの方に五條へ訪れてもらいたいと思います」と話します。
奈良県内の「駅プラン」は五條市と御所市の2種類。どちらも古き良きまち並みを堪能できるエリアです。

もう一度来ていただけるレストラン、地域でありたい

中谷さんは「駅プラン」での各社の連携について、こう話します。

「連携チームメンバーに女性が多く、立ち寄りどころや食について、女性目線のご意見をいただけたことが、私とは違う視点でとても役立ちました。それらをプラン形成の上で組み込み、今年度から『chocobanashi』さんでのチョコレートづくりプランを入れたのです。こうしたアイデアをみなさんからいただき、共に考えていける連携は、地域の宝ですね」。そして、「駅プラン」で奥大和を知った人への思いも語ってくれました。

「『駅プラン』でお越しになる方は、すてきな地域を探している方たちが多いと感じています。そして、その土地を好きになれば、度々足を運んでいるようです。実際に五條市に再訪してくださり、私たちが運営している宿泊施設『やなせ屋』やその他周辺施設に泊まってくださるお客様が増えています。もう一度来ていただけるようなコンテンツを提供できるレストラン、地域でありたいと思います」

最後に松中さんにも、奥大和への思いをお聞きしました。「奥大和、特に五條市や御所市には昔どこかで見たことがあるような懐かしい街角があり、故郷に帰ってきたような気持ちになれます。散策やお買い物を通じて、地元の方と触れ合ったときには、その懐かしさよりも一段深い、心の触れ合いがあるのではないかと思います。江戸時代のロマンあふれるまち並みを散策したい方、落ち着いた時間を過ごして癒されたいというときなどに訪れていただけたらと思います」。

収穫に応じて1コースにつき40〜80種の野菜が使われる『五條 源兵衛』の食事(写真は一例)。大和野菜や五條周辺で守り継がれた在来種の野菜など、年間数百種類が使われています。
『五條 源兵衛』の向かいには、中谷さんたちが経営する『旅宿 やなせ屋』があり、宿泊することもできます。宿泊は、かつて医家の邸宅だった離れと蔵の各一棟貸しきり。

Information
『五條 源兵衛』の食事はコース料理で提供。昼夜ともに営業しています。昼の料理は3500円〜、夜の料理は6000円〜の予約制。
『五條 源兵衛』の詳細についてはこちら

Information
奈良県 奥大和地域活力推進課では、11月12日まで開催中の芸術祭「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」など多数イベントを企画・実施中。
また、紀伊半島での暮らしや関わり方を体験できるツアーの参加者を11月12日まで募集中です。
・「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」についてはこちら
・紀伊半島の暮らしや関わり方体験ツアーについてはこちら
より奥大和を「人」や「暮らし」の視点で知りたい方は以下のリンクから!
・奥大和での暮らしや移住の情報をまとめたサイト「Local Life in Nara Okuyamato」はこちら

Information
日帰り旅行「駅プラン」は、奥大和地域では五條市と御所市のプランを発売中。もっとじっくり楽しみたい方には「赤い風船」シリーズの「奥大和へ行こう」で宿泊付きのプランもおすすめです。
・「駅プラン」の詳細はこちら
・赤い風船「奥大和へ行こう」宿泊交通セットプランこちら
・赤い風船「奥大和へ行こう」宿泊プランはこちら

魅力的で持続可能な地域づくりを。JR西日本が取り組んでいる、地域との共生とは?

JR西日本グループでは、2010年頃から「地域との共生」を経営ビジョンの一角に掲げ、西日本エリア各地で、地域ブランドの磨き上げ、観光や地域ビジネスでの活性化、その他地域が元気になるプロジェクトに、自治体や地域のみなさんと一緒に日々取り組んでいます。そんな地域とJR西日本の二人三脚での「地域共生」の歩みをクローズアップしていきます。

【第6回 滋賀県編】はこちらから。
今までに公開した【地域×JR西日本の「地域共生」のカタチ】の一覧はこちら
ぜひ他の地域の事例も読んでみてくださいね! 

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photographs by Hiroshi Takaoka
text by Yoshino Kokubo

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