関係人口を、外側の視点から考えてみます。

関係人口を、外側の視点から考えてみます。

内閣官房・内閣府の主催による「関係人口全国フォーラム」が2020年10月16日、オンラインによる3部構成で開催。関係人口と地域住民、自治体との関係性の築き方や今後の関係人口の展開を論じた第3部をメインに紹介します。

偶然生まれる関係人口。この偶然をどう演出する?


指出 今、関係人口への関心がいっそう高まっているように感じますが、地域に関係人口が生まれるためにはどういう視点が必要だと思われますか?


小田切 関係人口は偶発的に生まれることが多く、この偶然をどう必然に変えていくのかが大事です。


宮城 偶然をどう設計するか。関係人口は地域の「発酵」を促すような人たちですから、この発酵がうまく進むようにどう導いていくかが重要です。


指出 「友達に誘われ、暇だったから来ました」という、地域に無関心な若者がその日のうちに関係人口になり、地域にのめり込んでいく姿を何度も見てきました。予備知識がないぶん吸収力も高いからです。そんな偶発性をどう演出するか。僕は「関わりしろ」と呼んでいますが、地域で何かをやってみたいと思えるような「余白」が、若者の目を地域に向けさせるきっかけを生む大事なものだと考えています。


小田切 関わりしろとは、地域にある課題だと考えていました。その視点も必要ですが、最近はそれよりも「地域のおもしろさ」を関わりしろだと考えるようになりました。そのほうが若者の関心を集めやすいので。


宮城 住民や自治体職員に、人としての関わりしろ、つまり「おもしろさ」がある地域は魅力的だし、その魅力が関係人口の誘因力になると思います。


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地域の新たな経済を生み出す『ローカルベンチャー協議会』の活動を紹介しながら、関係人口の重要性を語る宮城さん。

関係人口が関わったその先に、地域がつくる未来は?


指出 関係人口が生まれ育った先に、どんな未来が見えてきますか?


宮城 一つではなく、複数の地域に関わる関係人口が増えそうです。また、そんな関係人口を支えつつ、自治体職員は政策の種を蒔き、地域の担い手として仕事をする喜びを得る。そんな希望が多くの地域に生まれたら日本は変わるはず。関係人口の概念は「地域づくりの民主化」です。小さくてもいいので、アクションを起こしてほしいですね。


小田切 関係人口は住民参加型の概念だと私も思います。関係人口や移住者が住民とごちゃ混ぜになって活動し、地域が賑やかになる。そんな「賑やかな過疎」が各地に生まれてほしいです。


宮城 関係人口は玉石混交であるべき。玉ばかりつくろうとしたら、関わりしろのないツルツルの地域になり、発酵も進みません。今、企業や自治体はSDGsに取り組んでいますが、進展させるためにも関係人口の概念を格上げする認識があってもいいでしょう。


小田切 関係人口を巡っては、各省庁が多様な政策資源を出し合いながら連携する動きもあります。国全体として、関係人口をサポートするイメージができつつあるので今後に期待したいです。


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農業指導で使われる「人の向こうに稲がある」との言葉を引き、地域づくりも人との関係性が重要と指摘した小田切さん。

参加者からの質問に回答。「地域内関係人口とは?」


指出 参加者の皆さんから質問です。「地域内関係人口とは?」ですが、例えば、自分が住む地域内を旅行したら、廃業した旅館が素敵な本屋になっていて、イベントに参加し、通うようになった。という動きが「地域内関係人口」です。一方、環境を活用して地域と関わる「オンライン関係人口」も増えています。ともに、コロナ禍だからこそ生まれた関係人口でしょう。


小田切 「活動を継続するための資金調達の工夫を教えてください」というリアルな質問も届いています。


宮城 ふるさと納税を利用した『ガバメント・クラウドファンディング』という、自治体が運営母体となって課題解決の資金を募る方法や、休眠預金の活用も検討してはどうでしょう。


指出 「地域の困り事をどうやって伝えればいい?」という質問も。


小田切 多様な人が集う場をつくり、そこで伝えましょう。北海道のJRニセコ駅前では中央倉庫群をリノベーションしてコミュニティ施設を設け、住民が集う場づくりが行われています。


指出 地域の人との関わりが、まさに偶然生まれる「関係案内所」ですね。


宮城 企業が地域にサテライトオフィスをつくり、若手社員が働くという現象も起きています。そんな企業を受容し、地域と社員をつなぐ力が自治体には求められそうです。


指出 関係人口の意訳は「connected mind」だと宮崎県の女性から教わりました。地域住民や自治体職員との心の交流を楽しみながら、関係人口の施策や活動に取り組んでほしいです。


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関係人口という言葉を初期に使い始めた一人の指出。都市の若者と地域住民とのゆるやかで、かつ確かなつながりに期待する。

分科会の様子。


「地域目線」も織り交ぜながら、当日行われた2つの分科会の様子もご紹介します。


分科会I 大事なのは、心の変化。コーディネーターも不可欠。


 明治大学農学部教授の小田切徳美さんのファシリテーションで、『中越防災安全推進機構』の稲垣文彦さんが、その活動の一つである、都市の若者を農村に受け入れるインターンシップを実施する『にいがたイナカレッジ』の取り組みを通じて関係人口の意義を述べた。「大事なのは、地域ビジネスや移住に至るまでの互いの心の変化」と稲垣さん。「電気が消えていた隣家に、都会から来た若者が泊まったことで電気が灯った。それだけで元気になり、何かやってみようと思えた」という変化だ。その地区では地域おこし協力隊の導入が決まったように、心の変化を促すことはエンパワーメントでもある。そのエンパワーメントを生み出すコーディネーターの存在も不可欠だと語った。


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『中越防災安全推進機構』業務執行理事の稲垣文彦さん。新潟県での事例を発表。

分科会II フラットな関係性づくりと、自治体と地域の連携が重要。


 小誌編集長の指出一正のファシリテーションで、ローカルジャーナリストの田中輝美さんと、『面白法人カヤック』ちいき資本主義事業部事業部長の中島みきさんが、関係人口の捉え方や施策について語った。島根県在住の田中さんは関係人口を、「都会からの『お客さん』あるいは『労働力』として迎えるのではなく、フラットな関係性をつくり、地域のイベントに一緒に汗をかいて参加してもらえる仲間」と捉えたいと言及。移住マッチングサービス「SMOUT」も運営する中島さんは、「地域と若者は多様なつながり方ができるはず。自治体も観光や商工、産業、移住など各部署で横断的に関係人口施策に関わりつつ、地域の中間支援団体や民間事業者と連携しながら取り組んでほしいですね」と話した。


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島根県からオンラインで参加した田中さん(右)と、『面白法人カヤック』の中島さん(中)、小誌編集長の指出(左)。

「かかわりラボ」について(坂本哲志地方創生担当大臣よりコメント)


関係人口創出・拡大官民連携全国協議会「かかわりラボ」は、「2020年度から5年間の「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の新しい取り組みです。中間支援組織や自治体などが一緒になって働き、更なる取り組みの深化を図るためものです。国と地方と民間とが助け合いながら取り組みを加速する契機にしたいと考えています。現在会員を募集しているので、ぜひご参加ください。

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