「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「多様性」です。
「はじめまして」が毎日生まれる町
宮崎県新富町の地域商社こゆ財団は、2017年4月の設立から現在に至るまで、多様性を大切にしたいと思いながら活動しています。
老若男女はもちろん問わず、移住者や学生、さまざまな地域からのゲスト、多彩な職業の方々がいつも交わり続けている状況こそが、新しいチャレンジの創造につながるものだと感じているからです。
おかげで私たちのオフィスは、一年を通して「はじめまして」が途絶えることはありません。
2019年からは、外国人留学生の受け入れも始めました。近隣に大学のない新富町では、学生とかかわる機会は決して多くありません。ましてや外国人の姿を見かけることもまれです。受け入れ期間中は、町内の学校や事業者の方々とのふれあいも企画したのですが、そこに少なからずの不安や恐れが生まれると考えるのは自然なことでした。
町に留学生がやってきた!
それでも受け入れを始めたのはなぜか。それは不安や恐れを乗り越えて全てを受け入れる場をつくることが、「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンの実現につながると考えたからです。
2019年2月、法政大学と広島大学から、コロンビアとバングラディシュ出身の留学生2名が新富町にやってきました。留学生たちは地域のイベントに積極的に参加し、母国の紹介や英語を使ったゲームなどで、地域の人たちと交流をしました。言葉の違いや文化の違いがお互いの興味と関心をひき、たくさんの笑顔が生まれていました。
毎月開催している商店街でのマルシェ「こゆ朝市」では、留学生が自作のゲームを出店。故郷を紹介したり、簡単な英語や身振り手振りで町内の方々と交流しました。
伝統芸能の神楽(かぐら)の準備をお手伝いした際は、地区の方々とすっかり打ち解け、大蛇に見立てた大綱を支えるという本番の大切な役目まで引き受けさせていただきました。400年前から続く神楽の歴史の中で、外国人が引き受けたのはおそらく初めての出来事だったのではないでしょうか。
不安や恐れがあったのは初めのほんのわずかな期間だけ。何も特別なことをしなくとも、みんなが異なる文化を受け入れ、違いを楽しむことができました。
多様性が秘めた可能性
もし留学生を受け入れなかったとしたらどうでしょうか。留学生と交流する貴重な機会は失われ、異なる文化を受け入れて違いを楽しむ経験もできなかったはずです。多様性の大切さに気づくこともなかったでしょう。
気づき、経験、そして仲間。多様性には、新しいチャレンジの創造につながる多くの可能性が秘められています。
今回は留学生の事例を紹介しましたが、不安や恐れはどんな人に対しても生まれるでしょう。そして「この田舎町にエグゼクティブの方なんて来てくれないだろうな…」「大学生との交流はあまり経験していないからきっとやりとりも大変なのでは…」など、思い込みや先入観もあると思います。
まずはそれを取り払ってみてください。これまで見えなかったたくさんの可能性に気づくことができると思います。