熊本県菊池市出在住。寿司職人でありながら、大のホルモン好きで、「ホルモン道場」という焼肉店を経営する梅田雄二さん。19歳で地元へ戻ると、まちは子どもの頃より活気がなくなっていた。時折、「このまちにはなんもない」という声が耳に入るのがつらくて、「だったら自分たちで魅力を作ろう」と決心。地元でチャレンジし続けた想いや料理人としてのこだわりを取材しました。
梅田さん:幼い頃から寿司屋の両親の背中を見て育ったから、僕も寿司屋になりたいって夢がありましたね。人と喋るのが好きだったから、カウンターに出てお客様に接客できるような寿司屋や居酒屋をやりたいなと憧れていました。そして、夢を叶えるために、18歳で料亭に修行へ出ました。
僕が幼い時って菊池市はとっても面白かったんですよね。夏休みの期間、毎週土曜日は、土曜夜市が開かれ、歩行者天国に人がたくさん来て、お祭り騒ぎだったんですよ。
寿司職人になるための修行を終え、妻と子どもを連れて菊池に帰ってきました。僕は、子どもの頃の楽しいイメージを持ったままでしたが、実際はがらーっとしていて、とっても寂しい雰囲気でした。
このまちをなんとかしたいなと思ったのですが、まだ19歳で帰ってきたばかりで何からどうしていいのかわからず、商工会青年部に入りました。時折、周りの大人たちが『菊池はなんもない』と言うのがとても嫌で、「だったら、自分たちが何かしよう!」と音頭をとり、動き始めました。今振り返ると、商工会青年部での活動は僕の原点だと思います。
高本:19歳という若い年齢からのチャレンジがあるのですね! 具体的にどのような活動を始めたのですか?
梅田さん:菊池市は温泉街がある観光地ということで、初めて人力車を取り入れました。最初の1回は、県南地域の知人に土日限定で人力車を借りました。日曜日に先輩の結婚式があり、花嫁さん花婿さんを乗せて人力車で商店街を走ったり。その経験がとてもよくて、地元の友人に、「人力車買うぞ!」と掛け合って300万円の人力車を購入。妻に内緒でマイカーローンを組んで払っていたのですが、その後色々教えてもらい補助金にも助けてもらいました。
高本:自分が目立ちたいという思いから、それまでまったく菊池にないことをはじめたんですね!
梅田さん:菊池の夏祭りや秋祭りも、だんだん規模が縮小し寂しくなっていました。だからこそ「菊池に昔から伝わる白龍伝説をコンセプトに、活気が蘇るようなことをしようよ」と動きはじめました。
そして「大きな白龍を作りましょうよ!」と呼びかけ、1997年から祭りに白龍が登場するようになりました。今では、菊池の祭りと言ったら白龍祭、高校の入学式で白龍が2体並んだりと、菊池にとってなくてはならない存在になっていることが大変嬉しいです。
平成28年8月には、ももいろクローバーZワンマンライブ「桃神祭2016~鬼ヶ島~」に出演。平成30年1月には、「ふるさと祭り東京(東京ドーム)」に出演して、後輩たちの活躍が全国に認められていて本当に嬉しいですね。
<菊池市の白龍とは?>
まつりは、4体の龍が地元商店街を練り歩き、クライマックスには、会場前の道路を封鎖して雄龍・雌龍2体による蛇行演舞は迫力満点です。
梅田さん:元々寿司職人だったのですが、今はホルモン道場という焼肉屋を営みながら、昼間は両親が営む寿司屋で和食を作っています。休日イベントがあるときは、こだわりのキッチンカーで出向いて、ホルモンや馬肉丼を提供しています。また最近は、仲間と出張BBQを始めました。それ以外は、温泉街を盛り上げるようなイベントなんかも定期的に企画しています。
高本:えーと、いろいろありすぎて混乱しそうです(笑)。まずどうして寿司職人が焼肉屋を始めたんですか?
梅田さん:普段は魚ばかり見て捌いていますが、たまには肉も食べたくなって週に1回近所の焼肉屋さんに通っていたんです。その当時は、生ビールと丸腸をひたすら食べ続けて1回2万円くらいの会計になっていました。月に約8万円だと考えると、もったいないな……と思い、自分で焼肉屋をすれば良いんじゃないか? と考えはじめたんです。そして約1年焼肉屋で修行し、肉の捌き方など全部教えてもらいホルモン道場という自分の焼肉屋をはじめました。最近は菊池産のホルモンが購入できるようになり、内臓を一頭買いして、丁寧に掃除して提供しています。
梅田さん:全てはお客様のためですね。味噌汁も昆布や鰹で1から出汁を取ります。焼肉のたれも出来合いのものは使わず、ニンニクひとつ、レモンひとつにこだわりを持っています。そのこだわりがなくなるくらいなら料理人なんてしなくていいと思っています。若い時から修行してきて、『見て盗んでとことんこだわる』という精神を学んできたんだと思います。
梅田さん:僕は昔からずっと睡眠時間は2〜3時間で、その生活に慣れているので睡眠不足できついということはないです。5時頃、朝刊が入る頃から新聞を読み、その後散歩をします。だいたい2時間くらいはゴミ拾いをしながら歩いています。ゴミと思わずに、『宝拾い』と思ってやってると全然嫌な思いせずに楽しいですよ。
梅田さん:最初は、娘が幼い頃一緒に散歩をしていました。散歩途中に栗が落ちていたら、『帰ったら湯がいて食べようかねー』と言いながら拾い集めていました。その時、ゴミが落ちていることもあれば、ゴミも拾っていました。娘が栗など拾いながら『これは宝物だよー!』と言っていたので、それからは『宝拾い』と思うようになり、それから20年今でも僕は続けていますね。
梅田さん:「子どもたちの思い出を作ってあげたいな」というのが一番の原動力ですね。子どもたちが大きくなって県外へ仕事に出て行っても、ニュースとかで「熊本」「菊池」って出た時に、楽しかった思い出を思い出して、地元に誇りを持っていてくれると嬉しいなといつも思っています。地元の自慢ができるようなことをたくさん作ってあげたいですね。
地元以外の地域で面白いイベントがあって行くと、「なんで菊池にないんだろう」って悔しくなります。だから、「ないなら僕たちが作ればいい!」といつも思っていますね
高本:子どもたちへの想いを胸にたくさんの仕掛けを作ってきた梅田さん。「ないなら作ればいい!」という心理はどこから湧いてくるのですか?
梅田さん:負けず嫌いの目立ちたがり屋だからかな(笑)。どこか九州各地で面白そうなイベントがあったら、足を運ぶようにしています。そして、良いものはいつも盗めるようにと思っています。これは、幼い頃から父の働く姿を見て学んできたという板場の修行と一緒ですね。それと、いくつになっても好奇心がなくなったら面白くないなと思い、僕はいつもワクワクして生きていますね。
「もうこのくらいでいいかな?」という気持ちになっても、周りにすごいなと思う人がたくさんいて、活躍を見ていると負けられないなと、僕も火をつけられます。子どもの頃はちょっと悪さもしてきましたが、若いうちから色々な経験をしてきました。年齢はただの背番号。今神様に生かされているわけだから、まだまだ何かしなきゃなと思っています。人生は楽しいです。
店舗名:ホルモン道場
住所:〒861-1331 熊本県菊池市隈府1108-9
営業時間:18:00~24:00
定休日:不定休
予約・お問合せ:090-3191-4391
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ライタープロフィール
高本梨花|田舎で探究ローカルイノベーター
熊本在住24歳のフリーライター。化学反応が起こる瞬間をデザインしたいと20歳で起業。人が好き、田舎が好き、魚が好き、探究が好き。取材を通して面白い地域の方々と出会える事を楽しみにしています。
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