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サスティナビリティ

一級建築士/『みかんぐみ』共同代表/『エネルギーまちづくり』代表取締役|竹内昌義さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

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『みかんぐみ』の共同代表である、建築家・竹内昌義さんは、数々のエコハウスづくりを通じて、ローカルとエネルギーの関係、そこに建築がどう貢献できるかに気づいたと言います。竹内さんおすすめの5冊を紹介します。

竹内昌義さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

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(左上から時計回りに)2.『ビジネスの未来 ─エコノミーにヒューマニティを取り戻す』/1.『ハチドリのひとしずく ─いま、私にできること』/3.『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか ─近距離移動が地方都市を活性化する』/4.『研究者が本気で建てたゼロエネルギー住宅 ─断熱、太陽光・太陽熱、薪・ペレット、蓄電』/5.『日本のSDGs ─それってほんとにサステナブル?』 
 山形県内でエコハウスをつくったのが2009年。自然エネルギーを活かし、身近に手に入る地域の材料を用い、環境負荷を極力減らし建てるのがエコハウスの基本。でも、建設にお金はかかるし、断熱材も分厚いし、当時の僕にはなんというか”野暮ったい“ような印象があった。でも、それはまだ完全にデザインが入り込んでいない新しい分野であり、実は社会にとってすごく大事なことだし、むしろやるべきだなあと信じて、始めました。

 とはいえ、それをなかなか自分の中で意識化できない部分もありました。建築家のフィールドの一つであり、大学の活動としてエコハウスをつくっているような感じ。それが、2011年の東日本大震災を経験して一変しました。2日間停電しているんですけど、温度がまったく下がらなかったんです。室温が18度のままでずっと保たれたまま。そのときに、エネルギーと家というものが、ものすごく深く結びついているんだなってことを目の前に突きつけられた感じがしたんです。ここから、エネルギーに対して、建築がどう関われるかってことをより強く考えるようになりました。

 エコハウスをつくっていたときに、地域の木を使って、経済の小さな循環を生み出すことが大事だなあとか、余った木材をペレットにしてエネルギーを自家発電したりなど、地元の木を使った家づくりの可能性をなんとなく感じ始めていたときに出合ったのが『始まっている未来─新しい経済学は可能か』。この中で、フード(食べもの)とケア(福祉)、エネルギーという3つの公共圏について述べられているんですけど、これらは近距離であること、つまりローカルであることがとても大事で、グローバリズムではない経済、地域公共圏の考え方がすごく“腹落ち“しました。家づくりも、一つの単体の建築としてではなく、地域における経済や循環を促す手段になりうるんだなってことをはっきりと認識させてくれたのがこの本です。

 エコハウスはドイツが先進地域で、少し大きな社会の中での仕組みとしてのエコハウスや、エネルギーのことを紹介しているのが、『kWh=¥─エネルギー価値の創造で人口減少を生き抜く』。すでに地域の中での循環を生みながら、エネルギーが地域通貨になっている事例などを紹介しつつ、エネルギーシフトの必要性を説いています。地方で建築をやる人、エネルギーと関わる人のバイブルだと思いますね。

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竹内昌義(たけうち・まさよし)●神奈川県生まれ。一級建築士。省エネ建築診断士。『みかんぐみ』共同代表。東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授。専門は建築デザインとエネルギー。著書に『図解エコハウス』『新しい家づくりの教科書』など。
photographs by Yuichi Maruya text by Yuki Inui
記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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