竹内昌義さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
とはいえ、それをなかなか自分の中で意識化できない部分もありました。建築家のフィールドの一つであり、大学の活動としてエコハウスをつくっているような感じ。それが、2011年の東日本大震災を経験して一変しました。2日間停電しているんですけど、温度がまったく下がらなかったんです。室温が18度のままでずっと保たれたまま。そのときに、エネルギーと家というものが、ものすごく深く結びついているんだなってことを目の前に突きつけられた感じがしたんです。ここから、エネルギーに対して、建築がどう関われるかってことをより強く考えるようになりました。
エコハウスをつくっていたときに、地域の木を使って、経済の小さな循環を生み出すことが大事だなあとか、余った木材をペレットにしてエネルギーを自家発電したりなど、地元の木を使った家づくりの可能性をなんとなく感じ始めていたときに出合ったのが『始まっている未来─新しい経済学は可能か』。この中で、フード(食べもの)とケア(福祉)、エネルギーという3つの公共圏について述べられているんですけど、これらは近距離であること、つまりローカルであることがとても大事で、グローバリズムではない経済、地域公共圏の考え方がすごく“腹落ち“しました。家づくりも、一つの単体の建築としてではなく、地域における経済や循環を促す手段になりうるんだなってことをはっきりと認識させてくれたのがこの本です。
エコハウスはドイツが先進地域で、少し大きな社会の中での仕組みとしてのエコハウスや、エネルギーのことを紹介しているのが、『kWh=¥─エネルギー価値の創造で人口減少を生き抜く』。すでに地域の中での循環を生みながら、エネルギーが地域通貨になっている事例などを紹介しつつ、エネルギーシフトの必要性を説いています。地方で建築をやる人、エネルギーと関わる人のバイブルだと思いますね。