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サスティナビリティ

未財務データを可視化することによって実現する社会とは?〜サステナブル・ラボの平瀬氏に話を伺った〜

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いま企業に求められているのは、経済的な強さだけではなく、環境・社会的な優しさも高次元に併せ持つ「強く優しい」あり方です。持続可能な社会へと転換期を迎えるいま、企業のSDGs/ESG貢献度をAIで解析し、数値化するデータバンクを開発しているのがサステナブル・ラボ株式会社です。今回は代表の平瀬氏にお話を伺いました。

目次

サステナブル・ラボの事業とビジョン

​御社の事業内容を教えていただけますか?

平瀬:企業や自治体の非財務データを集めて、AIで解析し、一元的に確認できるようなデータバンクを開発しています。簡単に言うと、帝国データバンクのSDGs版ですね。前提としてお伝えしておきたいのは、弊社は評価会社ではありません。データプラットフォーマーとして、あらゆる非財務情報を整理し、解析するという立場です。具体的に「ESGテラスト」というプロダクトを開発しているのですが、これは、AIで分析したデータを元に、専門家や有識者と協議し、気候変動、環境管理、働きやすさ、ダイバーシティなどといったテーマに落とし込んで、企業や自治体の環境・社会貢献度を可視化する非財務データバンクです。

ー​ビジョンやミッション、企業のDNA等、大事にしている想いは何ですか?

平瀬:「資本主義をアップデートすること」です。これまでの資本主義社会では、企業価値は経済力という「強さ」を基準に判断されてきました。これからは、環境・社会貢献という「優しさ」も含めた新しい資本主義の考え方が必要です。SX(サステナビリティ・トランスレーション)とも表現されます。“強く、優しい未来を作る”ために我々はビジネスを行っています。

​御社に入社される方は、どんな方がいらっしゃるのでしょうか?

平瀬:大きく2つのタイプに分けられると思います。グローバルな経歴の持ち主と、社会を良くしながら意義のある仕事がしたいという志の持ち主ですね。メンバーの前職は、コンサルティングファーム、金融機関、アカデミア、公的機関、スタートアップ企業などです。性別や国籍も様々ですが、年齢は概ね20代後半~30代後半がメインです。

非財務データを可視化しビジネスにつなげた理由や課題

ー​非財務データを可視化してビジネスに繋げようと思った理由は何でしょうか?

平瀬:世の中の“良い”企業に光を当て、資本主義をアップデートしたかったからです。ビジョンでもお話しした通り、持続可能な社会にするためには、費用対効果の考え方を変えることが重要だと思っています。私が大学の研究室で学んでいた理論物理学の世界では、この世の理は、重力や電磁気力など4つの力(=4つの式)によって説明できるということになっていました。しかし、従来型の資本主義では「費用対効果(=経済合理性)」という単一の力が異常に強い。これでは式が足りず、これからの経済の理を説明できないはずで、あらたなパラダイムが求められているという理解です。

これからの社会に必要な考えと言えど、この領域はマネタイズしづらいところがあると思います。会社としてサステナビリティに取り組まなければいけないが、すぐに結果が出る領域ではないし、結果に結びつくのかも分かりづらいため、予算も考慮すると取り組めない。潜在的なマーケットはありますが、予算も含めた需要はまだ少ないと見ています。そういう点で、事業の難しさがあると思いますが、どのように考えていますか?

平瀬:そうですね。たしかに、現時点で市場ができ上がっていません。ニーズが顕在化しきっていないものを数歩先の未来へ向けて創造しているので、その難しさは常に感じています。

企業への提案時など、交渉にはどんな課題がありますか?

平瀬:主に2つあります。ひとつ目は、経済的な強さと社会的な優しさを二項対立的に捉えられている場合。会社としてSDGsの取り組みは進めるものの、経済成長とは繋がりがなく、別物であると判断されている場合は、交渉や説得に時間がかかり、難しさを感じますね。ふたつ目は、事業が多岐に渡る企業では、サステナビリティを推進したいものの、事業特性から経済的な強さと社会的な優しさの整合性がとれなくなって、社内政治が必要になる場合があります。例えば、脱炭素化したいが、社内にCO2を膨大に排出する商品を扱う事業がある場合、などです。両者ともに、弊社が事業をやっていく上で、避けられない重要な課題と捉えています。

ソトコトニュースと御社の連携に期待していますが、その中で、非財務データは企業経営に、どのように活用できるでしょうか?

平瀬:非財務データは、将来のより良い経営判断や投資判断に繋げることができます。これまでの資本主義社会では、経営・投資判断は、費用対効果、経済効率の高さで判断されてきました。これからは違います。我々が研究・開発している非財務データを見える化すれば、経済効果だけではなく、環境・社会貢献度も含めた費用対効果で経営や投資を判断できるようになります。また、企業と生活者の接地面が増え、IRやHRとのより良い対話の機会も生み出すことができます。

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可視化された非財務データ

今後の展望と企業がSDGsを実現する方法

今後、どんな未来を実現していきたいですか?

平瀬:やはり重要なのは、費用対効果の考え方をアップデートすることですね。投資・経営判断をする上で、これが重要なドライバーであることは、今後も変わりません。一方で、財務データからの費用対効果は計算しやすいですが、環境・社会貢献度といった非財務データからは計算しづらいです。そのため、我々のツールをより良いものにして展開することで、スピーディーかつシンプルに費用対効果を判断できる世界に近づけて行きたいと考えています。資本主義のパラダイムが進化し、世の中が環境・社会効果も含めたコストパフォーマンスで判断することが当たり前になっていくような、そんなツールを提供するのが我々の目指している姿ですね。

サステナビリティ推進と言っても、どのように取り組めば良いかわからない企業も多いと思います。具体的に何から始めれば良いでしょうか?

平瀬:まずは「見える化」することです。それによって、自社のサステナビリティ経営における現在地がわかります。現在地がわかれば、今後の対応策も自ずとわかってきます。

顧客にプロダクトを導入していただいて終わりではなく、きちんと活用していただかなければならないですよね。例えば、社内ルールを作ったものの、そのルールを守ること、遂行することが一番難しいということはよく起こります。この点は、どう考えられていますか?

平瀬:とても難しいポイントですよね。一般的な方法論としては、入口側ではなく、出口側を抑えることです。つまり、業界のルール決定権を持っている人から攻めていく方法です。これを簡単にできれば良いのですが、ビジネスではなかなか一筋縄ではいきませんね。日々、学んでいるところです。

プロフィール

平瀬錬司 Hirase Renji

サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役。大阪大学理学部在学中から環境、農業、福祉などサステナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。これらの領域において2社のバイアウト(事業売却)を経験。2019年に同社を立ち上げ、SDGs×ビッグデータを軸に、自治体や企業の環境・社会貢献度をAIで数値化した非財務データバンク「ESGテラスト」等を開発。真に”良い企業”が照らされる社会の創成を目指す。京都大学ESG研究会講師。
https://suslab.net/

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