ドイツで始まった子ども大学をモデルに、日本で初めて開校した『子ども大学かわごえ』。地域づくりに長く関わってきた学長の真下英二さんが紹介するのは、地域で活動する人たちのヒントになる本だ。
真下英二さんが選ぶ、ローカルプロジェクトのアイデア本5冊
私は政治学を学び、地方自治をフィールドに「どうしたら地方が力をつけることができるのか」を研究してきました。子ども大学も、大学時代からまちづくりに関わってきた川越を元気にする一つの答えだと思っています。『スマートコミュニティ―都市の再生から日本の再生へ』は20年近く前に出版された本ですが、まさにまちづくりについて実践的に触れています。この本の中核となり、一番心に残っているのは「打たれる杭を育てること」。日本社会は出る”杭“を打ってしまいがちですが、地域の中から打たれるような”杭“が出てこないと、地域に新しい風は吹いてきません。多様な”杭“が出てくることで地域は力を取り戻します。子ども大学もそんな”杭“を育てられるようになりたいと思っています。
『私がくまモンの上司です』は、ゆるキャラの”くまモン“で熊本県の知名度を上げ、地域再生に貢献した熊本県知事の蒲島郁夫さんの著書です。蒲島さんは知事の仕事を「県民の幸せを最大化すること」としていて、「そのためには経済(Economy)、プライド(Pride)、安心・安全(Safe
ty)、希望・夢(Hope)という4つが満たされなければならない」と語っています。EPSHを満たし、県民の幸福度を上げるためにくまモンを売り出し、アイコン化していった過程が、地方自治体の戦略としてとてもおもしろかった。
EPSHは、まちづくりやローカルプロジェクトを実践するうえでもベースとなる考え方になると思います。EPSHを満たすために何をするのかを考えれば、プロジェクトの軸はぶれません。県知事としての戦略のユニークさだけでなく、地域を元気にしたいと考えている多くの人々の参考にもなると思います。