新進気鋭のクラフト家具職人・武内舞子さん。木そのもののこと、資源について考えること、デザインのこと、家具と人の関係のことなど、学びたいことはまだまだ多い。そんな中で、これまでの武内さんの「家具づくり観」を育ててくれた5冊を選んでいただいた。
武内舞子さんが選ぶ、家具×ローカルデザインのアイデア本5冊
私が所属する『KOMA』は東京にあり、「メイドイン東京の家具を世界に積極的に発信して、家具の中の『一番』になりたい」と考えています。私も東京の出身ですし、その志は同じですが、その一方で日本の地方とコラボしたり、地方ならではの風土で育った木を使った木工に携わる機会も少しずつ増えています。それぞれの性質の違いに驚いたり、使い方に頭を捻ったりすることもあり、木のことはさらに経験と勉強を積み重ねていきたいですね。
『夜の木』は1枚ずつ手作業でシルクスクリーンで印刷している本で、インクの触り心地や質感の美しさにも感動する本です。同じものがほかに一冊もないというのは、仕上げを手作業で行う家具づくりにも共通しているかもしれません。
『形の素』は、親方(松岡茂樹さん)から頂いた本です。親方は、「シンプルな中にも機能美がある。家具もそんなふうにつくりたい」とも言っていて、私もそこを意識して作品を見るようになりました。古代の外国の壺など古いものも多いのですが、形の美しさには古さも新しさも関係ないのだなと、しみじみ思いながら眺めています。
『シェーカー家具 デザインとディテール』は、私の好きな家具のひとつ、「シェーカー家具」の写真、図面、解説などが載っている本。海外の家具は装飾が多いイメージですが、シェーカー家具はシンプルでスッキリとしていて、全体のバランスがよく、機能性を重視するデザインです。それでいてディテールの設計がおしゃれで、そこが素敵なところですね。
『HANS J WEGNER on Design』は、世界的な家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーの家具の写真集で、解説も豊富です。家具をつくる人は、ウェグナーの本を一冊は持っているのではないでしょうか。デザインのバリエーションも豊富で、なおかつ量産もできるのがウェグナーの家具の特徴ですが、その源泉には「家具が好きだ」という気持ちがあるのでは、と伝わる一冊です。