自らのことを「川に取り憑かれている」と話す岩ヶ谷充さん。それはいったい、どういうことだろう。河川敷や川に関する活動をすでにしている人も、そうでない人も思わず近くの河川敷に訪れたくなる5冊を紹介。
岩ヶ谷 充さんが選ぶ、河川敷×ローカルデザインのアイデア本5冊
『ONE RIVER』では、河川敷でのイベントやワークショップなどを通じて乙川の魅力を伝え、「乙川らしさ」を地域のみなさんと見つけていく、そんな活動をしています。
いまは川が暮らしの中心にあるような生活をしていますが、もともと川に興味があったわけではありません。約5年前に参画した岡崎市の社会実験プロジェクトで乙川に関わることになったのをきっかけに、その魅力に気づき意識が変わりました。
僕たちの活動の根底にあるのは、住民一人ひとりが主役になれる市民参加のまちづくり。この考えのベースを養ったのが、コミュニティデザイナーである山崎亮さんの著書『コミュニティデザインの時代』です。この本の中で、僕が特におもしろいと感じたのは、事前のリサーチの仕方や、住民への話の聞き方をはじめ、コミュニティデザインを具体的にどう進めていくかの方法が書かれていること。僕たちが川を"開く"なかで、最も大切にしている住民のみなさんとのコミュニケーションや、参加しやすい空気づくりに関するポイントが詰まっていて、初心に立ち返れる本でもあります。
今ではほぼ毎日、乙川に通うような生活を送っている僕ですが、単にプロジェクトのためという概念を超えてしまっています。いうならば川に取り憑かれているんです(笑)。でもそれは、僕が特別なわけではなく、川には人を引き寄せる不思議な力があると思っています。そのことがよくわかるのが、『河原にできた中世の町』です。中世とありますが、原始から始まり、平安、室町、江戸、現代まで時代ごとの川と人との関わりが絵と文で描写されています。
川はときに氾濫を起こし、まちに大きな影響を与える恐ろしい一面もあります。そう考えると川で何かをしようとするのは、あまり効率的ではないのかもしれません。でもこの本には、それでも河川敷で市を開いたり、芝居小屋を建て芸能を楽しんだりと、川とともに豊かな文化を育む人々の様子が描かれています。その姿を知ることは、自分たちのまちを流れる川を見つめ直すきっかけにつながるはずです。僕らもいつかこの本の一ページになれるように、今後も活動を続けていきたいと思っています。