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連載 | リトルプレスから始まる旅

『よむ処方箋 01 失恋』

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目次

誰かを少し、元気にする。

小さな本屋を営んでいると、お客さんと話をする機会も多い。本についてはもちろん、本と直接関係ない話をすることもある。

ここ最近、「犬の本はありませんか?」と聞かれることが続いている。

「犬の本はあまり置いていないのです」と、小さな本屋の僕たちは答える。

ただ、探している事情を聞くと、「家族同然だった愛犬が亡くなり、家族の悲しみを癒やす本を探しています」という同じような答えが返ってきた。

少ない犬の本の中から選んだ本を見てもらうと、「どれもよいけど、できれば亡くなった犬と同じ犬種が登場する本が欲しい」。

その亡くなった犬のことを僕たちは聞き、その思い出から、なにかよい本はないかとヒントを探し、思案する。

今回紹介するリトルプレスは、『よむ処方箋 01 失恋』。

『よむ処方箋 01 失恋』
このページに驚いた! どこか人の気配を感じる、都会の一風景。

失恋したときに「ふっと手にとれて、ほんの少し元気になれる本があったなら」と、『襟巻編集室』のハタノエリさんと井上真季さんが作り始めたリトルプレス。

「失恋」をテーマに寄稿した作品が一冊にまとめられている。

くどうれいんさんは失恋の心象風景を描いた俳句とショートショート。

編集者のハタノエリさんは「永遠の片想い」から失恋を描いている。

工学者の羽鳥剛史さんは「失恋」を糧に、「次の恋愛はぜひとも成功させるぞ」と前向きになれる方法。

コピーライターの池田あけみさんは、自身の人生から思う「恋より 切ない はなし」、などなど。

人の気配を感じさせながら、喪失感や、疎外感を切り取った、竹内いつかさんの写真も各所に掲載されている。

結局、亡くなった犬の犬種が登場する本は見つからず、ほかによい本はないかと、本探しは続く。

癒やしが必要な家族の関心のあること、喜びそうなもの、気が紛れそうなもの。

「こういう本が欲しい」と本を探しても、そのまま当てはまるものを見つけることは難しい。

たとえ見つかったとしても、それは自分の分身であって「本と出合った」とは必ずしも言えない。

ズレや違和感、見たことのないもの、感じたことのないものに意味がある。それぞれの本に、誰かに伝えたい思いが込められ、出会いがある。本を選ぶ行為は、その思いに出合うこと。

「本を選ぶこと」は世界を広げ、いろんな価値観を学ぶ手助けをすること。自分のために、そして大切な人のために「本」を選び、届けてほしいと、僕は思う。

『よむ処方箋 01 失恋』

今月のおすすめリトルプレス

ふっと手にふれて、ほんの少し元気になれるような本。
編集:ハタノエリ、
デザイン:井上真季、
写真:竹内いつか
出版:襟巻編集室
2019年3月発行、
189×128mm(46ページ)、1080円

『よむ処方箋 01 失恋』出版室から一言

ソトコト読者のみなさま、愛媛からこんにちは。エリとマキで営む『襟巻編集室』です。マキの失恋時、「心に効く読み物が欲しい」と思ったのが“失恋本”をつくった動機。マキを癒す本になるはずが新たな恋は始まっていて……。人生きっとそんなもの、ですよね。

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