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サスティナビリティ

特集 | ローカルヒーロー、ローカルヒロインU30

起業家/『AIA』代表理事/内閣府地域活性化伝道師・木下 斉さんが選ぶ「自分を見つける本5冊」

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「ローカルの仕事で必要なのは、整理されていない問題を解決する能力」と話す木下斉さん。その能力を養い、今の自分の立ち位置を確認するためにも、過去を「整理」した本を読み、地域や日本の歴史を知ることが大切だと、この5冊の本を順番に読むよう勧めてくれました。

*30代の先輩からU30の皆さんへ。今回は先輩たちの選書を通して、U30の皆さんに、自分たちにもこれからやってくる30代をより豊かに、気持ちいい生き方をしてもらえたらと思い、11名の方に本を選んでいただいています。
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補注 報徳記(上・下巻)/富田高慶著、佐々井典比古訳、一円融合会刊
二宮金次郎の弟子・富田高慶が著した本。地方の財政再建や農村再生の実績は明治天皇の目に留まり、明治初期にベストセラーになりました。神奈川県小田原市の『報徳二宮神社』で購入でき、取り寄せも可能です。

都市の魅力学/原田 泰著、文藝春秋刊
戦前の地方都市はなぜ栄えていたのか。東京と地方がどういう構造で現在の関係になったのか。大阪、京都、名古屋、神戸、横浜、札幌、仙台、広島、福岡など地方都市の歴史や特性を示しながら、その答えを探ります。

ローカルでまちづくりの仕事をしたいと考えるとき、その地域がなぜ課題を抱えるに至ったのか、この5冊で地域や日本の歴史をたどりながら学び取ってほしいです。

1冊目は、『補注 報徳記』。二宮金次郎(尊徳)の伝記です。二宮金次郎と言えば、薪を背負いながら本を読む少年の像が思い浮かびますが、何をやった人か知らない人も多いのではないでしょうか。今、盛んに取り組まれている地域活性化を江戸後期に実践し、人口減少ステージにあった、主に北関東から東北地方の600以上の農村の再生に携わった人です。本にはそのエピソードが多数、書かれています。江戸後期は藩、今で言う地方自治体の財政が逼迫していたため、増税ばかり行われていました。多くの年貢を取られる庶民の就労意識は失せ、特に若者は稼げるまちへ移住。人口が減少した地域では新規就農者を外から募るも、既存の住民とトラブルが発生。「今と同じじゃん」という内容に驚きつつ、そんな地域の財政を立て直し、農村の再生事業を展開した二宮金次郎の手腕に感嘆します。若い人たちもこの本を読むことで、約200年前に地域で活躍した二宮金次郎から「見えないバトン」を渡されて、今ここに立っているという気持ちにさせられるでしょう。

2冊目は『明治維新1858­‐1881』で、3冊目が『都市の魅力学』です。「出生率の低下」「止まらない地方の過疎化」とメディアは報じますが、なぜそうなってきたかに目を向けようとはしません。地方が魅力を失った理由は、東京一極集中のせいではないというのがこの本の論拠です。ザクッと言うと、地方は自らイノベーションを起こす気がなかったがために衰退し、住民からも支持されず、若者が出ていくのだという、至極当たり前のことを経済産業論の観点から述べた本です。太平洋戦争以前は、地方都市も独自の発展を遂げようとし、100年単位で地域の未来を考える人が大勢いました。ところが今や、ふるさと納税でいくら集まったとか、移住者が何人とか、短期で成果を上げることが地域活性化だと勘違いの多いこと。今こうなっている因果関係を歴史に見出し、本質的な課題に目を向けなければ、魅力ある地域の未来は訪れないと考えたほうがいいでしょう。

4冊目は『経済白書で読む戦後日本経済の歩み』で、最後は『自動車の社会的費用』です。歴史を俯瞰することで、地域のなかの自分の立ち位置が見えてくることを期待します。

明治維新1858-1881
坂野潤治著、大野健一著、講談社刊
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政治学者と経済学者がコラボレーションした本。明治時代となり、日本が近代化する過程でどんな方法を取ったのか。議会制民主主義と経済発展を両立させるという困難な道を歩むことができた背景が書かれています。
経済白書で読む戦後日本経済の歩み
土志田征一編、有斐閣刊
 (162312)

太平洋戦争後に刊行が始まった『経済白書』の内容を時系列で解説。工業都市として成功し、富が生まれると、次は内需のステージがきてサービス産業が成長する、という日本の戦後経済史の流れを読み取ることができます。
自動車の社会的費用
宇沢弘文著、岩波書店刊
 (162314)

日本の自動車産業がイケイケだった1970年代、すでに著者はそこに依存することへの危険性を見据え、警鐘を鳴らしています。「ウォーカブルなまちづくり」が盛んに行われている今、関係者にぜひ読んでほしいです。
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きのした・ひとし●1982年東京都生まれ。早稲田大学卒業。『エリア・イノベーション・アライアンス』代表理事として、まちづくりの事業開発とノウハウの体系化による事業成果の拡大を推進。著書に『まちづくり幻想』(SBクリエイティブ刊)など。
photographs by Yuichi Maruya text by Kentaro Matsui
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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