群馬県高崎市の知る人ぞ知る絶品グルメを紹介する「絶メシリスト」、広島県の牡蠣をこよなく愛する人が集う「牡蠣食う研」……。数々のプロジェクトに関わる“ローカルおじさん”こと日野昌暢さんが、地域で挑戦する人に贈るエールとして選んだ5冊。
日野昌暢さんが選んだ、地域を編集する本5冊
地元の人は、地元の魅力に気づきにくい。よく言われることですが、本当にそうだと思います。僕は広告業界で培った経験をもとに、まちを元気にしようと頑張っている人に併走して、地域の資産を見つけ、編集し、外に向けて発信する仕事をしています。直近では、「九州のいいヒト、いいコト、いいシゴト」を紹介するローカル発Webメディア『Qualities』を立ち上げました。九州に人を呼び戻したいと考えている地元企業にスポンサーになってもらい、民間で運営しています。
プロジェクトを立ち上げるときに大事にしているのは、参加する人に楽しんでもらえること。「業界の発展に寄与できる」「地域に関わることができて誇らしい」など人によって動機は異なると思いますが、「まちをよくしたい」という熱量のある人に参加してもらうにはどうしたらいいかをいつも考えています。
『魔法をかける編集』は、そんな僕の原点といえる本。国が地方創生に予算をつけたとき、広告会社はこぞっておもしろ動画やゆるキャラをつくったのですが、僕は「本当にそれで地域は活性化するのか?」と疑問を抱いていました。広告の力はもっと地域の役に立てるはずなのに、能力の使い所を間違っているんじゃないか——そう悩んでいたときにこの本を読んで、励まされたんです。編集者である藤本智士さんは、地域にある小さいけどすばらしいものが放つ光を「編集」の視点で捉えることで価値化していた。ぼくも広告の力をこんな風に使いたいと思いました。
『凡人のための地域再生入門』の木下斉さんは、高校生の頃から商店街の活性化に関わってきた方です。これは木下さんが見てきたまちづくりを巡る諍いやジレンマをフィクション化した本で、地域で何かを始めた人がぶつかる壁がフェーズごとに全部書かれています。たとえば、まちのお偉いさんから突然プロジェクトを中止しろと言われる、なんていうのはよくある話ですが、予備知識がないと戸惑ってしまいますよね。この本を読んでいれば心の準備ができるし、相手の意図を推測できて、冷静に対処できるかもしれません。
『日本列島回復論』は、地域が衰退していった歴史と背景をきながら、未来のつくり方を紹介する本です。いまなぜ、地域がこういう状態なのか、その構造を理解することで、どんな手を打つべきかがより明確になるはず。先の2冊に比べると少し難しいけれど、ぜひ、おすすめしたい一冊です。
▶ 『博報堂ケトル』チーフプロデューサー|日野昌暢さんの選書 1~2
▶ 『博報堂ケトル』チーフプロデューサー|日野昌暢さんの選書 3~5