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仕事・働き方

【北海道旭川市】夫婦で新規就農、花農家に転身。「農家の妻」になった長谷川由三子さんに聞く今の暮らしと想い

炭本まみ

炭本まみ

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かつて札幌で仕事をしていた長谷川雅浩(はせがわ まさひろ)さんは早期退職し、北海道旭川市東旭川で念願の新規就農(花農家)を果たしました。それまで専業主婦だった妻・由三子(ゆみこ)さんも花農家の妻として日々奮闘しています。2012年に就農してから10年が経ち、最近になってようやく暮らしが自然になってきたと言う由三子さんに、花農家の仕事、花農家の妻の暮らしぶり、北海道の農家の冬の暮らしなどを聞いてみました。

目次

「はせがわファーム」として、新規就農のきっかけ

はせがわファーム

はせがわファーム

via mami sumimoto
雅浩さんは札幌でサラリーマンをしていましたが、旭川市へ札幌からの転勤が決まり、その後55歳で早期退職、友人たちの心配をよそに、憧れていた農家になりました。そのとき、由三子さんは子育て中の主婦でした。夫婦で就農を考え始めたとき、新規就農について市役所へ相談したところ、露地栽培や米農家ではなく、花農家を勧められたと言います。「お花を育てている農家さんは少ないんですよ。と市役所の方に勧められ、それなら花の農家がいいかもしれない」

もともと由三子さんはお花が好きだったこともあり、地元で数少ない花農家になることを決意したのです。

【由三子さん、農家の妻としての一日/オンシーズン】

はせがわファーム

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via mami sumimoto
旭川における花農家のオンシーズンは2月から。4月から定植(植物を苗床から畑に移して本式に植えること)がスタートします。農家の妻となった由三子さんにシーズン中の一日の動きについて聞きました。5:00 起床。お弁当と朝ごはんづくり
7:30 自宅を出発。畑へ向かう
8:00 畑仕事、芽かき、収穫、水やりなどの作業
10:00 一服(休憩)
10:30 畑仕事を再開
12:00 お昼休み
13:00 畑仕事再開
15:00 一服(休憩)※お手伝いやアルバイトの方がいない時は、休憩なしのときも
17:00 仕事終了。帰宅
18:00 夕飯の支度や入浴など
22:00 就寝

【由三子さん、農家の妻としての一日/オフシーズン】

秋になり雪が降る前には、少しずつビニールハウスの片付けなどを進めます。雪が降ると農家はオフシーズン。雅浩さんはビニールハウス周辺の除雪に追われ、同時に「寒締めほうれん草」の栽培が始まります。由三子さんのオフシーズンは、夫の仕事を手伝うほか、パートの仕事も掛け持ちます。北海道は雪がたくさん降るので、一年を通して農業を続けることはできません。農家の中には、冬になると夫が道外へ出稼ぎに行ったり、市の委託を受けた業者へ期間就職し除雪車に乗って除雪の仕事をしたり、近くの企業で期間限定の仕事をしたりするなどして生計を立てるといいます。また、妻も同様に働きに出て収入を得ている世帯が多いようです。

なかには長期のお休みを取る方もいますが、それでも冬の間は何もせず、おうちでゆっくり……というわけにはいかないのが現状です。

「オンシーズンの1日について、ほかの農家さんと違って、わたしは起きるのが遅い方かもしれません。それでも年々疲れは溜まりますし、もうやめたいなと思ったことも何度かあります。」

と話す由三子さん。それでも頑張って続けられる理由とは、どんなものなのでしょうか。

花農家がいいと思う理由は、暮らしのなかで培った感覚、 「好き」という気持ちを糧にできると感じたから

はせがわファーム

はせがわファーム

via mami sumimoto
「小さな頃から家には必ず花が飾られていました。玄関や食卓などにいつも母が飾っていて。花が生活の中に自然とある、そんな暮らしでした。大人になった今も花が大好きです。」と由三子さん、話します。『はせがわファーム』では、スターチスという花を栽培していて、スターチスは仏壇やお葬式にお供えする「仏花」のイメージが強いですが、由三子さんはそのイメージを払しょくしたいのだとか。「スターチスと言えば、白や紫色のイメージが強いかもしれませんが、こんな素敵なニュアンスカラーもあるんです」

と、淡いピンクやパープルのスターチスを見せてくれました。最近は、はっきりとした色合いの花よりも、ふんわりとした色合いやあまり色味の強くない花を好む人も増えているんだとか。スターチスの他にも、時代のニーズに合った、長谷川さん夫妻のセンスが活きた花をビニールハウスで栽培しています。

花農家として加工品を企画しイベント出店。 その醍醐味は、花を愛する生花店や消費者との繋がり

はせがわファーム

はせがわファーム

via mami sumimoto
『はせがわファーム』で生産した花は、乾燥バラを使ったローズティー、石鹸、食べられる花「エディブルフラワー」など加工品としても販売されています。「咲いたバラを何かに使えないかな? と考えたのがローズティーづくりのきっかけです。かつてバラ園で働き今はカフェを経営している人と知り合い、いろいろなことを教えてもらいながら、ハーブをブレンドしたおいしいお茶なんかも開発してもらいました」由三子さんは、花農家の切り花をお客さんに直接届ける「お花の直行便」もやっています。

「花農家の仕事のなかでこういった商品づくりも始めたことで、農家にならないと経験できなかったことがたくさんあります。また、農家にならなければ出会えなかった人もたくさんいますね。SNSを通じて、自分たちの育てた花を知ってくださり、花を使ってくれる人とのつながりもできましたし、それは憧れていた花屋さんだったので、とてもうれしかったです。」と由三子さんは語ってくれました。

花農家の妻が描く夢は、自分の店に自分たちが栽培した花を並べること

はせがわファーム

はせがわファーム

via mami sumimoto
「いつもSNSで、花の種類や花のアレンジを見ているんです。自分たちの育てている花を千葉県の大好きな花屋さんが使ってくださったのをきっかけに、いつか自分の花を販売する店舗が持てたら……という夢があります。3年前くらいから、やっとこの仕事をコツつかめてきた気がします。これからも夫と一緒に二人が手の回る範囲で続けていきたいですね。花は小さな頃から身近にあったので、大人になった今も大好きです。自宅に飾ろうかなとハウスの中の花を選んでいるときの気持ちは、仕事をしているときの気持ちとは全く違いますし、それはとても楽しい気持ちです。そういう意味で、今の仕事ができることを幸せに感じています」農家の仕事は楽ではありませんが、農業経験のない人や実家が農家じゃない人でも、自治体のさまざまなフォローを受け、農家での研修を重ね、長谷川さんのように新規就農する人は少なくありません。花農家として新規就農を夢見る方なら、長谷川夫妻の道のりは参考になるのではないでしょうか。

はせがわファーム
住所:北海道旭川市東旭川町上兵村291‐1
公式HP:https://www.hasegawa-farm.jp/

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