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仕事・働き方

特集 | 未来をつくるキーパーソンに聞く 指出総編集長インタビュー

アグリローカルヒーロー! ─若い農家が日本を変える─ 奈良県五條市 柿農家・西出篤史さん

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『ソトコト』では、やりたい農業にチャレンジし、地域で質的変化を起こしている若者を「アグリローカルヒーロー」と呼んでいます。今回、小誌編集長・指出一正が訪ねたのは、奈良県五條市。若き柿農家・西出篤史さんにお会いしました。

目次

自分で考え、行動する。“自由”が農業の魅力

指出一正(以下、指出) 西出さんは、なぜ農家になったのですか。

西出篤史さん(以下、西出) 祖父母が、奈良県五條市西吉野町で柿づくりをしているんです。五條市は西吉野を中心に柿の産地で、日本一の生産量を誇ります。祖父母は、市場のほうから「欲しい」と言われるほど立派な柿をつくっていて、味が濃くておいしいんです。関東から直接買いに来るファンの方もいて、そういう様子を見て「すごいな」と思い、4年前に帰郷して柿づくりを始めました。実はそれまでは、大阪で歯科技工士として働いていたんです。一番の師匠は祖父です。祖父の柿の状態を見に行ったり、技術的な話をしたり。祖父がもっている昔ながらの知識と、現代のつくりかたを参考に、柿づくりを進めています。

指出 おじいさまの後継者?

西出 いえ、知識や技術が何もないところから自分なりにやってみたいと思い、一から西吉野でスタートしました。西吉野には若手の柿農家が多く、『JAならけん西吉野柿部会』で45歳以下が所属する青年部には60人ほどいます。そのなかで後継者ではない形をとったのは僕だけです。

指出 そうなんですか。この4年を振り返って、いかがですか?

西出 初年度は消毒の種類すらまったく知らない状態で。周りの人に教えていただき、なんとかやりきった形でした。基本的な知識は自分なりに勉強してきましたが、まだ知らないことが多すぎます。

指出 習得したいのは、例えばどういう技術ですか?

西出 特にむずかしいのは、柿の枝を切る「剪定」です。柿は毎年剪定をしなければいけません。理由の一つが、柿は新しい枝に実ができるからです。今年実がついた枝には、来年実がつかないんです。その剪定が栽培の基本で、翌年の実のなどがそれにかかってきます。

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奈良県の特産品で、西吉野で栽培が盛んな柿。西出さんは富有柿(写真)、刀根早生柿などを育てている。

指出 YouTubeチャンネル「アグリンch」にギタリストの「農Tuber」として出演されていた映像で、軽やかに切っているように見えましたが、むずかしいのですね。ところで、音楽はいつ頃から?

西出 母がピアノ講師をしていて、子どもの頃からピアノ、管楽器、ドラムなどいろいろな楽器をしていたんです。ギターを始めたのは専門学校時代です。仕事をしながらでも一人でできる音楽を探し、「みんながやっていることをやりたくない」という気持ちもあって、歌わずにギターを弾くスタイルになりました。

指出 柿づくりにも音楽にも「人とは違うオリジナルなものを追求したい」という発想があるんですね。

西出 縛られず、自由な発想でやっていけることが共通点ですね。

指出 これからの働き方を考えて「自由に仕事をしてみたい」という人は多いと思います。特に同世代に農業の魅力をどう伝えたいですか。

西出 特に僕は縛られたくない人なので(笑)、会社に入って仕事を指示されるよりも、自分で考えて、決めて、自ら行動できる自由なところに農業の魅力を感じています。自分ですべて考えてやらないといけないから責任もともないますけど、20代で、自己責任でやっていけるのは農業のいいところかなと。

指出 農業をしたくても収入面を心配している人も多いようですが。

西出 栽培面積の広さを基本として、そこに自分が費やせる時間や質によって収入が変わってきます。自分が好きなつくりたい作物であれば時間を費やせるし、やればやるほど自分に返ってくる。そうすれば食べていけると思います。

指出 夢や目標はありますか?

西出 徹底して質のよさを目指していきたいです。祖父の影響ですね。僕にとって質とは、大きさや味、見た目。つまりきれいで大きくて、おいしい柿。それをつくりたいです。

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西出さんが栽培した全量を出荷している『JAならけん 西吉野柿選果場』。カラーセンサー計測システムにより等級や階級を選別し、配送仕分けラインを経て自動箱詰機へ。ここから全国へと配送されていく。

 

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