ハワイの現在の社会目標の一つに、「ゼロ・ウェイスト(ゴミをゼロにする)」があります。とくに、プラスチックゴミを出さない社会づくりが進められています。その理由は、島から出るゴミと、太平洋ゴミベルトから何百トンと流れてくるプラスチックゴミが、海洋生物を傷つけて絶滅の危機に追いやるなど、海洋環境に深刻な影響を及ぼしているからです。そこで今回は、ハワイ州の脱プラススチックに向けた取り組みと、観光客も楽しめるビーチ・クリーン・アップやゼロ・ウェイスト・ショップをご紹介します。(TOP写真提供:ハワイ州観光局)
海洋生物を傷つけるプラスチックゴミと太平洋ゴミベルト
世界で最も大きな海面浮遊ゴミの渦は、ハワイ州とカルフォルニア州の間にある「太平洋ゴミベルト」です。主にプラスティックゴミで構成される太平洋ゴミベルトの大きさはなんと、日本の国土面積の4倍の約160万平方メートル。そしてこの太平洋ゴミベルトのすぐそばにあるのがハワイ諸島です。
世界の海洋プラスチックゴミは、2015年時点で合計1億5,000万トン(参照出典:Stemming the Tide:
Land-based strategies for a plastic- free ocean)と推計されています。『アメリカ海洋大気庁(NOAA)』によると、そこに毎年800万トンが新たに流入しているとも。単位が大きすぎてピンとこないかもしれませんが、800万トンとは重さにして、ジェット機5万機相当だそうです。
海洋プラスチックゴミの問題は、美しい海やビーチの景観を損なうだけではもちろんありません。ウミガメやイルカなどをはじめとする海洋生物に絡まってケガをさせたり動けなくしたり、クラゲなどと間違えて食べてしまったりすることも大きな問題です。プラスチックは胃腸で分解されないので、うまく排出できなければ死に至ります。
人間にも悪影響を及ぼす可能性 マイクロプラスチックによる海洋汚染
プラスチックが分解されるための時間はものすごく長く、たとえばペットボトルは450年、プラスチックバッグ(レジ袋)は10~20年かかると言われています。微生物等によって分解されないからです。
そのためプラスチックは細かくなってもいつまでも残り、海中のゴミとなります。海の最深部に大量のマイクロプラスチックが積もっているという、近年の研究論文もあります。
海水に混ざったマイクロプラスチックは、海で暮らすあらゆる生物に誤飲のリスクをもたらします。マイクロプラスチックももちろん消化・排泄しづらいため、誤飲すれば胃腸に問題を起こして死に至る可能性が高まります。
プラスチックゴミは人間にも悪影響を及ぼすと考えられています。小さな魚が食べ、その魚をウミドリや大型の魚が食べるといった食物連鎖を通じて、私たちの体内にも蓄積されるリスクが指摘されています。またプラスチックに含有されている有害物質が溶け出したり、マイクロプラスチックに有害物質が付着し運ばれたりすることによる、健康への影響もあると考えられています。
旅行者必見! プラスチックゴミを減らすためのハワイのルール
さらに、レストランなどを含む食品販売業者へ「石油系プラスチック製の使い捨て容器やビニール袋を使用し食品を提供することを禁止」とする条例が施行され、プラスチック製のカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン、ストローなど)、発泡スチロールが含まれているすべての商品の販売・提供が禁止されているほか、生肉や未調理の農産物などに使用されるプラスチック製の使い捨て容器使用も完全廃止になっています。
カイルア地区|ゼロ・ウェイスト・ショップやエコショップが続々オープン
プロテアの隣のジュエリーブランド直営店『Leinaiʻa(レイナイア)』では、ビーチ・クリーン・アップ活動で集めたマイクロプラスチックを再利用したジュエリーコレクションや、しおれて散った花を拾い、押し花にしてレジンで固めたボタニカルコレクションなど、サスティナブルなシリーズにも力を入れています。
カイムキ地区|意識とこだわりをもった オーナーのセンスが光るショップ
環境に優しい商品を集めた家庭用品&ギフトショップ『Every Day Better by Green Meadows(エブリデイ・ベター・バイ・グリーン・メドウズ)』はコロナ禍前の2019年にオープン。プラスチック製のパッケージを極力使わない商品、ナチュラルな素材でできた商品が多くあります。
エコツアーもいいけれど ロコたちのビーチ・クリーン・アップに参加するも楽しい!
ハワイ島のヒロで生まれたブランド、『Upcycle Hawaii(アップサイクル・ハワイ)』も、ビーチクリーンをして拾ってきた漁業用網やロープ、商品包装用のビニール袋を集めて材料として再利用し、ポーチ、バッグ、ジュエリーなどのハンドメイド商品を作っています。
またこれらのオーナーのように、ビーチ・クリーン・アップに参加すると、今のハワイの自然環境の現状を知ることができるうえに、ハワイのコミュニティに触れることもできます。ハワイ各地では定期的に非営利団体などによって、ビーチ・クリーン・アップが行われています。誰でも無料で参加できることが多いので、普段の旅行では味わうことのできない体験をしてみませんか?
次回は、地産地消とメイド・イン・ハワイについて。ハワイならではのおみやげをご紹介します。