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サスティナビリティ

連載 | テクノロジーは、人間をどこへつれていくのか

デジタルレイバーは目の前に

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 人工知能やロボットが人間の仕事を担うようになることは、遠い未来の話。もしくは絵空事。結構そう思い込まれているのだなあと感じる場面は多い。

 とある人材派遣会社では、派遣登録をしてきた人の個人情報をエクセルに保存し、自社で保有するデータと照合して属性を自動で分類する。登録者個々の履歴に応じて同社スタッフとの面接の案内メールが送信される。これも自動。以前は、数名の社員がすべて手作業で行っていた業務で、繁忙期にはミスも生じていたようだ。

 ところがいまや、月に40時間相当の仕事をロボットが代行し、ミスはまだゼロ。繁忙期ともなると、月に130時間以上の業務を削減できる。24時間休みなく働こうがを上げないロボットにとっては、働き方改革も関係ない。人間に必要な節度は、ロボットには不要である。

 このレベルのことは、実は一般的になりつつある。ロボティック・プロセス・オートメーション(robotic process automation: RPA)という、仕事を自働化できるツールにより、データの収集や処理などを人間に代わって作業してくれる。ルールで決められた定型業務は、人工知能を用いるまでもなくなんなくこなす。自働化にも何段階かあり、学習能力を伴わせ、ルール作りや意思決定も任せようとした場合、高度な人工知能を活用する。人工知能が人間の仕事を代行する未来について語ると、「まずはこんな非効率を改善できないか」と目下のところの相談を受けたりする。いまのところ、人工知能不要のRPAレベルで片付くことも多く、まだまだ自動化の入り口に過ぎない。

 デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも称されるRPAは、短期間でホワイトカラーの単純業務を自動化するテクノロジーとして、先進国を中心に広まっている。深刻な人材不足、人件費の高騰化、そこに折り重なる働き方改革。先進国の中でも、特に日本の高齢化率は2割を超え、労働人口の減少に加えて労働生産性が低迷している。そこで脚光を浴びているのがRPAであり、もはや魔法の杖ではなく実用的ツールだ。

 すでにPCの画面上ではロボットが自動的に働いており、絵空事どころか人間の代役は現在進行形である。財務や経理、人事、金融機関のローン審査、保険会社の保険金請求処理、病院の患者データ処理、店舗の在庫や商品情報の管理。さまざまな業界、業務の自動化が進んでいる。ロボットは不平不満も言わず、黙々と24時間ミスをせずに働き続ける。

 初歩的なロボット相手には、自動化したい業務、自働化できる、もしくはできないことを見極めて、人間との役割分担をしてあげる。それこそが人間の仕事であり、何でもかんでも丸投げするわけにはいかないのが現状である。

 人間の業務を補完するレベルのデジタルレイバーも、高度な人工知能を武器にして自主的に学習して成長する次元に至ると、“仮想”という要素は外されるようになるかもしれない。仮想ではなく現実、補完ではなく主役、そんなステップをロボットは踏んでいくだろう。

 かつては人間のみが対応可能と考えられていた作業が、認知技術を活用して代行されるようになったいまをみれば、人工知能やロボットが人間の一定の仕事を担うようになる可能性に関する議論も不毛な段階に入った。焦点は、人間が何をなすべきかということ。そこに尽きる。

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