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多様性

連載 | ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ

「今のところは、異性が好きっす☆」推奨。

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結構前になるが、キアヌ・リーブスがゲイ疑惑の真相について聞かれた際に、クールな返答をしたことが話題になったのをご存知だろうか。その返答っていうのは、だいたいこんな感じ。「噂を否定することは簡単だ。けれどそんなことをすれば、僕はゲイやバイセクシャルの人間であると思われたくないということになるだろう? それはひとつの差別意識の表れだよね。だからその質問に対する答えはたった一つ、『ノーコメント』だよ」。今ではゲイとして95パーセント悩むことなく生きている僕でも、仲のいい友達が「ちがう! 俺はゲイじゃない!」と頑なに否定する場に出くわした時は、ほんのり切なさを噛み締めてるので(笑)、この返答は最高だと思った。キアヌ、イケメンすぎる。

とはいっても、じゃあ自分の友人に「ノーコメント」って返そうね! なんて言いたいのかといえばそうではない。どう考えてもその一言で会話が終わるし(笑)、それにゲイの僕でさえ「ノーコメントって……それ、ゲイやん!」とツッコミたくなると思うから。なので、何かキアヌ超えを狙えるような、絶妙な否定の仕方ってのはないもんかと考えていたわけだが、「サラッと」とか「優しく」とか、すべてコミュニケーション力に頼ってしまうもので、そんな選ばれた人だけのスキルじゃキアヌは褒めてくれないと思った。やはりイケてるセリフを考えたい。そこで一つ思いついたものを今日はひとつ提案したいと思う。こんなのはどうだろうか。

「今のところは、女の子(or男の子)しか好きになったことないんだよね〜」

サラッと気楽な感じで言うと、なお良しである。やたらと「今のところ」を強調したら「これから先はどう想定してんだ、こいつ……」って気になってくるから(笑)。これがいいと思ったのは、否定の具合が弱いっていうのもあるが、何より「いつまでも一つの性別を好きかなんて分かんなくない?」というスタンスっていいなと思うのである。

事実として、電通が2012年に7万人に対して行った調査では、自分がセクシュアル・マイノリティだとはっきり自覚するタイミングは、中学・高校・大学生時代に次いで、40代以降が多いと出たそうだ。12.9パーセントが、40歳を超えてハッとしてる。自分の実体をつかむのが難しいのは、本当にやりたいことに気付くのって難しいよねというのと同じで、セクシュアリティにおいても同じなんだと思う。

こういう僕も、いつまで「ゲイ」と自認しているんだろうとよく思ったりする。そもそも「ゲイ=男として男が好き」ということなんだそうだが、なんか全然ピンとこない。「男として」というか「男として♡」とか「男として(笑)」という感じである。あと僕が今のところの人生で「この人と結婚したい」と唯一思ったことがある相手が、実は女性だというのもある。この人の人生の舞台袖で横顔を見つめていたい、そう思う相手に性別なんて関係ないのではなかろうか。

だからもう、ゲイだ! とかゲイじゃない! とかレズビアンじゃない! とか強く言うのはやめて「今んところそういう気分っす〜☆」くらいでいいんじゃないか、と言いたいのだ。そっちのほうが楽しい気がするし、自分を簡単に定義せず、変化を楽しむ人生ってかっこいいと僕は思う。「今のところは、女の子(or男の子)しか好きになったことないんだよね〜」。これだわ。僕の心の中では、キアヌが拍手してる。

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