『東京愛らんど』で扱う各島の選りすぐりの特産品の中からセレクトし、関係する方々と“勝手に”盛り上がる本企画。第二回目は「美容・工芸編」です!
東京諸島が誇る、美容&工芸の特産品とは?
日本のローカルの特産品に興味があるゲストや、『ソトコト』が企画・運営に関わっている、 地域と首都圏に住む人々をつなげる「関係人口講座」の受講生とともに「あれこれ特産品座談会その2 テーマ『美容、工芸編』」を開催しました。
お土産ではあるのですが、実用的な特産品が多数集まった今回。ゲストの専門的なコメントも示唆に富み、充実した学びの機会となりました。
乾祐綺さん
写真家、編集者。昨年はソトコト編集部ともに大島、利島、新島、御蔵島、青ヶ島を巡った。「島の恵みを活かした美容や工芸品の数々。今日も楽しみながら談義したいと思います」。
下河辺悠美さん
『東京都島しょ振興公社』事務局長。「公社の仕事は島に軸足を置き、地域振興をお手伝いする団体。今回は、個人的にも関心の高い美容と工芸。楽しみたいと思います」。
百井陽敏さん
『東京都島しょ振興公社』業務課 課長代理。新島村役場から派遣。「生まれは式根島です。今日はみなさんに島のことを知ってほしいと思いつつ、自分自身今日の談義を通して、新たな島の魅力発見をできたらなって思っています」。
三田かおりさん
『Retocos』代表取締役。佐賀県唐津市の沖合にある8つの離島に自生する地場の産物でオーガニックコスメや香料の原料を生産。「今の事業の視察で、東京諸島を巡ったことがあります。今日は、久しぶりに島に触れることができてうれしいです」。
小林遼香さん
『ソトコト』とシーズ総合政策研究所と共同で実施している、富山県を舞台とした「とやまつながるラボ」の三期生。「島が好きで、沖縄や、海外などでも島を巡ったりしてきました。東京の離島はずっと行きたいなって思っていました」。
引間彩さん
東京農業大学3年、地域創成科学科専攻。山形県金山町との関わりを考える 「カネヤマノジカンデザインスクール」修了生。「東京の離島は行ったことがありませんが、春休みに友だちと行ってみたいなって話していたところなんです」。
実は万能オイル。パッケージもかわいい椿油。
三田かおりさん(以下、三田) はい! 私は佐賀県唐津市の離島で、島に自生する植物からオーガニックコスメなどをつくる会社をしています。加唐島という島では、島の人たちに収穫や、搾油などをお願いして、一緒に椿油をつくっていますよ。
乾祐綺さん(以下、乾) 三田さんとは以前、雑誌『ソトコト』の取材でもご一緒させていただきました。加唐島や九州などと比べて、東京諸島の椿は違うんですか?
三田 確実に違うのは、加唐島では木に成っているものを摘果しますが、大島や利島では、熟して木から落ちたのを拾っている点です。また、利島では誰の木から採れたものかがはっきりわかる点もあります。トレーサビリティ(*)がしっかりしていると感じます。
*トレーサビリティ:商品の生産から消費までの過程を消費者自身が確認できること
下河辺悠美さん(以下、下河辺) 島内に約20万本の椿があると言われる利島の椿は、まさに畑。完熟し、落ちたものだけを拾うから、椿畑の整備もしっかりされています。下草狩りなどもていねいで、庭みたいにきれいに手入れされています。
引間彩さん(以下、引間) そんな特徴があるんですね。それだけでもなんだか特別な感じがします……!
三田 全国の椿油の生産量のほとんどが、利島を含むここ東京諸島と、九州の五島列島で占めているほど、一大産地でもあるんですよ。
編集部 では、まず、利島の「神代椿」を試してみてください。
小林遼香さん(以下、小林) パッケージが上品ですね。リブランディングされたのかなあ。
乾 金と銀という、2つのパッケージがありますね。
三田 金は、見た目からもわかるように椿油本来の色。成分、香りなども残したものですね。銀は、そこからさらに精製し、色と匂いを取り除いたものです。
乾 さすが三田さん、詳しい!
引間 (勾いと実際に手の上に試して……)私は金かなあ。匂いがあるほうが好き。ほのかに香るのがちょうどいいです。
小林 確かにいいですね。金もいいですけど、私は香水をつけるので、普段使いには銀かなあ。
三田 椿油って、香りについては好みが分かれますので、抵抗のある方には銀がいいですね。その差も含めてぜひお気に入りを見つけてほしいです。
引間 ボトルが小さくてかわいいいです。見た目だけで、買っちゃうかも!
小林 ボトルは3色あるんですね。並べるとさらにかわいい!
乾 これはお土産としても手頃なサイズ感ですね。
下河辺 椿油って、いろいろな用途で使えるのも特徴です。髪の毛にツヤを出したり、リップクリームのように使ってもいいですし、ハンドクリームにも。椿油一本持っていると、本当に便利。荷物も少なくて済みますしね。
三田 椿油を髪の毛に付けてからシャンプーで洗い流す、オイルパックのような使い方もできるんですよ。
引間 いろいろ使えるんですね、椿油。
引間 あ、石鹸なんですね! (触ってみて)石鹸の表面がしっとりしています。
三田 (パッケージを見て)この石鹸の材料は、石鹸素地と椿油油脂のみとのこと。とシンプルでいいですね!
編集部 ちょっと、流しのほうで試してみましょう。どうですか?
小林 滑らかです!
下河辺 椿油の香りがしっかりするのもいいですね。
三田 椿油に多く含有しているオレイン酸は、人の皮脂の主成分。そのため、肌にも馴染みやすいんですよ。
乾 椿油って万能なんですね。今日の座談会で再認識しました。
島の「素材」のおいしさを感じる。
小林 明日葉、知っていますが初体験です!
引間 私も!
下河辺 明日葉は、東京諸島のほとんどの島に自生している野草です。なんで明日葉という名前が付いているかというと、諸説あるのですが、切ってもまた明日には生えてくるといわれるくらい、生命力が強いことから名付けられたとも言われているんですよ。
小林 明日葉……すごくポジティブな名前ですてきですね。
下河辺 効能などはまだまだ研究中ですが、明日葉に含まれているカルコンという成分には注目が集まっているようです。
三田 以前、島に伺った際に、天ぷらやおひたしで食べさせてもらいました。おいしいですよね。
乾 本当に島のどこにでも生えていました。僕は民宿でいただいた、明日葉のツナマヨ和えが気に入りました。
下河辺 個人的に、味は春菊に近いように感じます。この商品はそんな明日葉の粉末です。実は私は毎日これを飲んでいます。朝やお風呂上りに、熱湯で溶いて、常温の水を足して、グビグビと。
小林 なんだろう、落ち着く香りがする。
乾 たしかに。ちょっと、お出汁のような感じでしょうか。
三田 明日葉はセリ科かな。八丈島に行ったときに1株いただいて育てましたが、うまく育たなかった思い出があります。
百井 島でないとうまく育たないとも聞きますね。湿度などが関係しているのかもしれません。
小林 島ならではの植物なんですね。そういうところにも、心惹かれます。
三田 なんと、ぜいたくな!
下河辺 御蔵島は水が豊かな島。東京諸島の中では珍しく川も流れ、モズクガニやウナギも生息していると聞きます。
編集部 島の周囲には小さな滝が50本くらいあると伺いました。
乾 巨大な山塊が、海面からすっと立ち上がっているような形状の島で、鹿児島県にある屋久島のような深い森に覆われ、年間降水量も3000ミリを超える水の豊かな島でした。ただの水ではありますが、そんな御蔵島の恵みだと思うと、感慨深いです。
三田 お水そのまま飲んだのですが、めちゃくちゃやわらかいですね。
小林 軟水で飲みやすいです。
引間 普段飲むのにいいかも。ちなみにこれはどこで買えるのですか?
百井 御蔵島と、あとは東京都港区・竹芝客船ターミナル内にある東京諸島のアンテナショップ『東京愛らんど』では直接買えます。ネットでも買うことができますよ。
新島とイタリアにしかない、唯一無二の素材を使った工芸!
小林 わー、光が当たるときれいなグラスですね。
百井 式根島出身の私から説明させていただきます! まずは原料から。ガラス質が多く含まれたコーガ石というもので、実はこのコーガ石は、世界でも新島と、イタリアのリパリ島でしか採れないとされている貴重なものなんです。
引間 オリーブ色がきれい。これは自然な色なんですか?
百井 はい、着色などはしていない、そのままの色です。石自体は白いのですが、原料を1200度の高温で成形し、冷めてくるとこういう色になるのだそうです。
三田 新島に行った際、島のタクシーの運転手さんから聞きました。歴史も長いんですよね?
百井 1987年にガラスアートセンターという施設が島にできて以来、アーティストの方々が特産品やアートとして発展させてきた歴史があります。島では「新島国際ガラスアートフェスティバル」という、世界的なガラス工芸の祭典も開かれています。
乾 取材で行ったとき、島の風景がコーガ石でよってつくられていると感じました。古い家々の中には、コーガ石で建てられたものもあり、それらをリノベーションしたゲストハウスなどもありましたね。
百井 ちなみに、渋谷駅前にあるモヤイ像も新島産のコーガ石でつくられたものです。
小林 (島の風景の写真を見ながら)街並みが石造りで、どことなく沖縄のような印象を受けます。
三田 このグラス、見た目よりもずっと軽い。なんかいいですね。お酒が進みそう(笑)
小林 大きさもちょうどいいですね。
引間 私はちょっと手が小さいので、もう少し小さいのがあるとさらにうれしいかも。
百井 サイズや形はいろいろな種類が揃っていますよ。宙吹きという、ガラスを吹いて膨らませて成形していく製法で、型でつくっているわけではなく、一つ一つ職人さんが手作業でつくりあげています。
乾 世界的にも希少な原料、そして職人さんが手づくりされているという新島ガラス。お土産で渡したら絶対喜ばれますし、なにより自分が欲しくなります。
島の月桃とレモンを使ったアロマグッズが登場!
三田 月桃は殺菌効果などがある、天然のハーブ。月桃っていうと、沖縄が有名で、向こうではお餅に巻いたりしていますね。これは月桃の葉の蒸留水ですね。フレーバーウォーターみたいな感じで、シュッシュと空間に吹き付け、ミストのように使用するものですね。うん、癒し効果もあるし、これは特に女性が好きな香りかも。
百井 初めて体験しました。これは男性も好きですよ!
下河辺 独特のスパイシーな感じもいいですね。
三田 月桃はショウガ科ですので、少し刺激がありますよね。
小林 ミストは家ではあまり使わないのですが……これはアリかも。
引間 すっきりしますね。すごく爽やかな香り。アロマオイルなんかは好きで使うのですが、これもいいな。
小林 こういう形のディフューザー、まさに家で使っています。しっかりしたレモンの香りで、夏にいいような感じがしますね。
三田 このディフューザー、初めて知りました。柑橘系の香りは多くの方に好まれやすいですよね。
下河辺 この商品は私たち公社と島の生産者の方が一緒に開発したものです。大島と小笠原で収穫した「御神火レモン」「小笠原レモン」を使っています。生食や、加工品で人気の高いレモンを活用した、新たな商品として、今年300個限定で販売を開始しました。
引間 私はこのパッケージも気になります。島の風物かな? たくさん描かれていてかわいいなって。
下河辺 クジラやイルカ、アカコッコなど、東京諸島の生きものが多くモチーフになったパッケージなんですよ。
下河辺 東京諸島は火山が多いことから、温泉が多くの島で楽しめるのも魅力の一つなんです。
百井 式根島を代表する露天風呂温泉 「地鉈の湯(じなたのゆ)」と、新島にある「湯の浜」の成分を使った入浴剤セットです。「地鉈の湯」は海のすぐそばにある温泉で、満ち潮のときに、海水と混ぜ合わさったタイミングに入るとちょうどいい湯加減になります。
下河辺 「湯の浜」は、パルテノン神殿のような、あの独特の景観がたまらないですね。どちらも24時間入ることができます。混浴で、水着の着用が必要です。
引間 島に温泉があるのは知らなかったです。行きたい!
小林 「野湯」めぐりの友人がいるので、おすすめします!
乾 秘湯マニアの間では、憧れの温泉ですね。
編集部 これもお湯を用意しました。地鉈の湯の温泉の素を溶かしてみたので、ぜひお試しください。
引間 しっかりとしたベルガモットの香り付きなんですね。ツルツルになりそう。
三田 めっちゃしっとりする〜。
小林 島の温泉に行ってみたくなりました(笑)。
今回、特に好きになった特産品は……?
引間 やっぱり椿油がよかったです。島ならではのものですし、三田さんのご説明で、非常に実用的なものなのだと理解できました。「神代椿」はお母さんへの贈り物に、「三原椿油ミニボトル」は、自分用や、友人とお揃いで買ってもいいなって思いました。あとは、「明日葉粉末」。私は毎朝白湯を飲んでいるのですが、混ぜて飲みたいなって。お菓子づくりも結構するので、米粉などと合わせて使ってみたいです。
乾 椿油については、三田さんの解説がとても専門的で、それぞれお土産なんですけど実用的であり機能的でもあるということがわかってよかったです。贈り物を渡すときに相手に教えてあげたくなりました。個人的には「新島ガラス」がよかったです。実は家で使ってもいて、これにワインを入れて飲んでいます。飲みながら、島の風景やストーリーが思い浮かんで、とても豊かな時間に浸れるんです。特産品の背景って大事だなと、改めて思いました。
下河辺 今回の座談会で試した感想からのセレクトなら「生の椿油(シャボン)」ですね。実は知ってはいたのですけど、使ったのは今日が初めてで。これはいいなって思いました。小林さんのご指摘にありましたように、トライアルできる仕組みや、小さいサイズなどがあってもいいのかもしれないなって感じました。いつも私たちは特産品に向き合って仕事をしています。そんな中で、今日体験していただいた椿油や明日葉など、島の原点みたいないところを評価いただいたことを、とてもうれしく思いました。
百井 島出身ではありますが、お恥ずかしい話、椿油を使ったのは今日が初めてで……。成分や使い方など、プロである三田さんから直接お聞きできて、大変意義のある機会になったと思っています。イベントなどでお客さまと直接やりとりする折には、今日いただいた知識を活用させていただければと思っています。引間さん、小林さんの、消費者としての視点、感想もとても参考になりました。今日は本当にありがとうございました。
今回の島紹介は、「利島」&「式根島」!
お椀を伏せたような円錐形の島の形が特徴的な利島。東京・竹芝桟橋から大型船や高速船で、また伊豆・下田港からも客船でアクセスできます。また、大島からヘリで向かうこともできます。島の80%がヤブツバキに覆われている島で、特産品は、もちろん椿油などの加工品です。椿は紅葉せず、冬でも葉が緑色の常緑樹。日本らしい自然の四季を感じることは島では難しいですが、夏から秋にはツバキの実を収穫する風景が、冬になれば一面にツバキの花が咲く絶景が広がります。ツバキとともに生きる島の暮らしこそが、この島の大きな魅力の一つです。
利島同様に、東京・竹芝桟橋から大型船や高速船で、また伊豆・下田港からも客船でアクセスが可能。本土側からだと4番目に近い島で、面積は東京諸島の中でもっとも小さく、一周12キロなので歩いて島を巡ることもできます。コンパクトな島ではありますが、入り組んだリアス地形でアップダウンが多い。また、秘湯好きの間でも有名なのが温泉。24時間、好きな時間に入れる露天風呂が3か所あり、しかも無料。これを目当てに訪れる人も少なくありません。最近はワーケーション施設なども整備された注目の島です。
東京諸島をもっと知ろう!【海と温泉編】
東京諸島といえば、そのほとんどが火山の島。そして多くの島で、その恩恵である温泉を楽しめます。式根島にある野趣あふれる露天風呂である「池鉈の湯」をはじめ、個性的な温泉も、東京の島々の魅力の一つです。