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特集 | 続・道の駅入門

「コンパクトヴィレッジ構想」から生まれた、鳥取県・日南町の『道の駅にちなん日野川の郷』。

雑誌『ソトコト』編集部

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標高1000メートル級の山々に囲まれた鳥取県・日南町に、「コンパクトヴィレッジ構想」の一環として道の駅が生まれた。生産・加工者の高齢化と向き合いながら、持続可能な運営を模索中!

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目次

「コンパクトヴィレッジ構想」の一環として誕生した道の駅。

中国山地の真ん中に位置する鳥取県・日南町。山、渓流、ホタル、オオサンショウウオ、紅葉など豊かな自然に出合えるまちには、アウトドア派やナチュラル志向の人たちが四季を問わず訪れる。

左/建物の柱や梁には、日南町産の「FSC認証」のヒノキを使用。右/日野川の支流の石霞渓。晩秋になれば美しい紅葉が眺められる。

そんな日南町の唯一の平地でもある中心地域に、『道の駅にちなん日野川の郷』ができたのは2016年4月のこと。増原聡・前町長が掲げた「コンパクトヴィレッジ構想」の一環として、町民の憩いの場となり、交流人口を増やしたいという思いからつくられた。

梁や柱などに日南町産ヒノキの「FSC(森林管理協議会)」認証材を使った建物は、7年が経った今も扉を開けてなかへ入るとヒノキの香りが心地よく漂う。米やトマトなどの農産物や加工品を中心に、さまざまな商品を販売している。

季節ごとにさまざまな旬の野菜が並ぶ「農林産物直売所」。瓶詰、缶詰、レトルト製品など特産品を使った加工品もおいしそうだ。

提携する土佐清水市の道の駅の商品も販売。

「農林産物直売所」には、日南町内で採れたトマト、ニンニク、タマネギ、カボチャ、シシトウ、ピーマン、アスパラガス、ジャガイモ、キュウリ、ズッキーニ、ナスなどいろいろな種類の野菜が並べられ、料理方法も紹介されている。晩ご飯に何を食べようかと、地元の人なら考えながら買うところだろう。

地元野菜だけではなく、日南町は広島県、島根県、岡山県の3県に隣接する「県境のまち」なので、広島県のミカン、岡山県のモモ、島根県の海産物など、各県の季節の味覚を取り寄せ、販売しているのも買い物に来る楽しみの一つだ。

それだけではなく、高知県土佐清水市の特産品である宗田節を使った加工品や、柑橘も販売している。なぜ土佐清水市かというと、『道の駅にちなん日野川の郷』を運営する『サクセス』は土佐清水市にある『道の駅めじかの里土佐清水』も運営していて、2つの道の駅がある市町の交流を図っているからだ。日南町町長と土佐清水市副市長が互いの道の駅の交流イベントに出席し、関係性を深めている。

『道の駅めじかの里土佐清水』のリニューアルオープン・イベントでは、日南町の米でおにぎりを振る舞い、『道の駅にちなん日野川の郷』の7周年イベントでは、カツオや宗田節の出汁が振る舞われた。その後も交流は続き、柑橘を栽培していない日南町では土佐清水市産の柑橘がよく売れ、土佐清水市では日南町でつくる「自然薯バウムクーヘン」が大人気で、入荷してもすぐに売り切れるそうだ。

また、『道の駅にちなん日野川の郷』は、日本初のCO₂排出ゼロの「カーボン・オフセット道の駅」としても機能している。全商品、買うと1品につき1円が日南町の森林支援に活用され、道の駅のカーボン・オフセットも行われる仕組みになっている。林業が盛んなまちとして、地球温暖化の抑制やSDGsの課題解決に、道の駅を通じて貢献している。

商品にはすべて値段+1円の表示があり、1円は日南町の森林支援に活用される。

日南町の生産・加工者が心を込めてつくった、とっておきの商品です!

天然記念物のオオサンショウウオのかわいいクッション。日南町には資料館があるほど、数多く生息する。
日南町の標高1004メートルの三国山に源流がある日野川の水で育てたコシヒカリ・「にちなん日野川の郷」。
日南町産のトマトを使い、大山産ハーブチキンとじっくり煮込んだ「完熟とまとたっぷりカレー」。
『松尾農園』の松尾馨さんが家で食べていたスープを商品化した「松尾さん家のかぼちゃのポタージュスープ」。
トマトの酸味が効いた醤油味のドレッシング「とまとDeべっぴん」。サラダはもちろん、肉、魚、フライにも。
標高約500メートルの阿毘縁地区で育ったリンゴのジャムを使ったホワイトチョコ「チョコッtoあびれ」。
日野川の水で育った「ヒメノモチ」という品種の「もち米」。粘りと甘みのある、おいしい餅がつき上がる。
自然薯が練り込まれ、もっちりとした歯ごたえの「自然薯バウムクーヘン」。自然薯栽培農家がつくった人気商品。
阿毘縁の女性たちが、阿毘縁産のリンゴで手づくり。自分たちで瓶詰まで行っている「あびれのりんご酢」。

高齢化が進むまちで、求められる道の駅とは?

前・町長による「コンパクトヴィレッジ構想」によって、『道の駅にちなん日野川の郷』の周りには、以前からあったものも含め、さまざまな店舗や施設が集約されている。ホームセンター、コンビニエンスストア、ショッピングセンター、子育て支援センター、デイサービス施設、森林組合、消防署、美術館、町役場。今、老朽化している病院もこのエリアに移転するかどうか検討中だそうだ。

日南町産のトマトの味わいが楽しめる、「トマトソフトクリーム」。

なぜ、コンパクトなまちづくりを目指したかというと、複数の自治体が町村合併によって生まれたまちのため、交流を盛んにして一つになるために、町民が同じ地域に集まり、ふれ合う機会を増やしたいという思いが強かったためだ。

日南町の新鮮な食材を使った料理が味わえる『レストランほっとす』。
日南産トマトとタマネギをじっくりと煮込んだ「とまとカレー」。

ただ、店舗や施設はまちの中心部に集約されているが、町民が住む家は以前と同じように山村の集落に点在したまま。したがって、町民がまちの中心部に出てくるための交通機関が必要になる。特に高齢化が進む今、公共の交通機関はなくてはならない。まちでは町営バスや、「たったもバス」というデマンドバスを運行し、病院やショッピング施設、道の駅などへの外出をサポートしている。

車を使った移動が難しくなってきているのは、一般の町民だけではない。農家もそうだ。「道の駅の直売所に登録されている農家さんは70名ほどで、平均年齢は70歳を超えています。以前は、道の駅まで農産物を運んできてくださっていた方々が、『取りに来てほしい』とおっしゃるようになりました。体力的にきついのでしょう。加工者さんも同様で、製造をやめざるを得ない状況が近づいています。高齢化は待ったなしの課題です」。

道の駅にちなん日野川の郷』を運営する『サクセス』道の駅推進室室長の宮崎忠司さん。

そう話すのは、『サクセス』の宮崎忠司さんだ。生産者や加工者の高齢化対策として、日南町は地域おこし協力隊隊員を募集している。隊員は就農の準備を進めながら、同時に道の駅の運営にも携わるというもので、「簡単に言うと、半分は農業、半分は道の駅勤務です。道の駅では農産物の集荷や高齢農家の見守りも行います。報酬は両方から得られるので、しっかりと生計を立てながら、3年後の独立に向けて活動を続けられます」とのこと。若い世代やファミリー世代が自分のために、そして、まちのために働き、スムーズな移住を実現するために考えられた対策だ。

「道の駅を持続的に運営していくには、まちの方にもっと来ていただく必要があります。旅行客向けのお土産だけでなく、日常の生活必需品も販売することで、地元の人がふだんの買い物に使えるような気軽な店舗にしていくことを検討していきたいです」と宮崎さんは、道の駅の将来に向けた一つの方策を提言する。

道の駅がもっと地元に根付き、住民の暮らしに花を咲かせるためにも、これからのあり方を考える必要がありそうだ

SDGsのアイコンカラーの和傘を天井に吊り下げた、日南町役場の「和傘の“アンブレラスカイ”」。

『道の駅にちなん日野川の郷』・宮崎忠司さんの、道の駅を楽しむコンテンツ。

Instagram:インスタグラム全般

全国の道の駅が発信しているインスタグラムを全般的に見ています。農産物や加工品などどういった特産物を販売しているのか、また、どういう発信の仕方をしているのかなど、いろいろと見て勉強し、運営に積極的に取り入れています。

YouTube:道の駅王子の彦太郎

滋賀県出身の彦太郎さんという自称・「道の駅王子」が、全国の道の駅を巡り、販売されている特産品や道の駅の施設を紹介しながら、自分の持ち歌を歌うというユニークな番組です。それぞれの道の駅の個性を参考にしています。

Website:JAFナビ

「JAFナビ」で行われている「ドライブスタンプラリー」という、全国の人気の観光スポットを回って、スマートフォンでスタンプを集めて応募すると、ご当地の特産品が当たるという企画。道の駅も紹介されていて、ドライブに出かけたくなります。

photographs by Yusuke Abe text by Kentaro Matsui

記事は雑誌ソトコト2023年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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