「世界一チャレンジしやすいまち」の実現をビジョンに掲げる宮崎県新富町。人口1万7,000人の小さなこの町で、なぜ1粒1,000円ライチや企業との連携事例が続々と生まれ、移住者たちが飛びこんできているのか。仕掛け人である地域商社こゆ財団の視点から、その理由と気づきをご紹介します。今回のテーマは「チャレンジは小さくていい」です。自分の大好き!を掲げることの大切さをお伝えした前回の投稿でも触れましたが、今回は改めてメインテーマとしてお届けします。
チャレンジは小さくていい
2019年1月、新富町の小さな商店街で毎月第三日曜に開催している「こゆ朝市」に、東京から企業研修にやってきたみなさんがいました。研修は1泊2日で、この日は事前に考えた子ども向けのアトラクションを研修中の社員が実施することに。
この話の詳細は別の回に譲りますが、ちょうどこのときに企業研修に同伴されていた方から、ハッとさせられる言葉をいただいたのです。
「新富町に来るまでは、チャレンジというと頑張ってジャンプしてやっと手にすることのようなイメージを持っていました。でもこの二日間でこゆ財団や新富町のみなさんと会い、話をする中で、チャレンジは小さくていいんだということに気づかされました」
まずやってみよう
こゆ財団は2017年、起業家育成や商品開発、ブランディングなどの経験を持たないメンバーが集まってスタートしました。そのため、当初から今に至るまで「まずやってみよう」(=やってみることで、何がやれるか、何がやれないのかがわかる)というマインドを大切にしています。
それだけに、チャレンジに大も小もないという意識だったのですが、先述の方の言葉を受けて、自分たちがやっていることは本当に小さなことの積み重ねであることを改めて認識しました。
チャレンジは小さくていい。むしろ、小さいほうがリスクも少なく、仮に失敗しても次の行動に移しやすかったり、仲間を募りやすかったり、時間をかけずに済んだりと、いろいろなメリットが生まれます。
小さなチャレンジが大きなギフトに
そんな小さなチャレンジが、大きなギフトにつながることも本当にあります。
2021年3月14日、新富町に新しく完成したサッカー専用スタジアムで、宮崎県初のJリーグ参入を果たしたテゲバジャーロ宮崎の開幕戦が行われました。
スタジアムの名前は「ユニリーバスタジアム新富」。こゆ財団とユニリーバ・ジャパンの取締役である島田由香さんが2018年に出会ったことがきっかけで、2019年には町と企業の連携協定が締結され、スタジアムのネーミングライツを同社が保有。この日、その名が冠されたスタジアムがお披露目となったのです。
こう書くとおおごとのように思われますが(確かにおおごとなのですが)、島田由香さんとの出会いもまた、小さなチャレンジが結んだご縁でした。
2018年2月、空き店舗を改装したコワーキングスペース「移住交流促進ラボ」が完成しました。住宅県事務所の一角をお借りし、インテリアや設備の一部だけを簡単に手入れさせていただいただけのスペースなのですが、地域の活動拠点を求めていた島田由香さんからお話を聞いた私たちがおよそ2週間でここを用意したことで、由香さんは心の底から喜んでくださり、それ以来本当に何度も足を運んでくださっています。
スペースを用意するために私たちがやったことは、①やると決めること ②2週間以内でやると決めること ③大家さんに相談すること ④必要な備品を購入すること、でした。どれも、全国どこにいても、どんな方にでもできることだと思います。決して、大きなチャレンジではありません。
それがスタジアムの名前に企業名が冠されるような大きなギフトにつながるとは、もちろん全く想像していませんでした。
チャレンジは小さくていい。これをお読みいただいているみなさんには、小さなチャレンジを重ねることをおすすめしたいと思います。千里の道も一歩から。そうして進んだ道の先には、なかなかに得難いものが待っているように思います。