美しい海・山・川、温暖な気候、そして地域で採れる新鮮な土地の恵み。住環境として好条件を揃える高知県は人気移住先。当地へ移住した『中里自然農園』の中里拓也さん・早紀子さんご夫妻に“移住のリアル”と田舎暮らしのコツを聞きました。
自然豊かな高知県への移住。“求めすぎない”ことが大事。
高知市内から車で1時間ほどの中土佐町久礼で、二人は『中里自然農園』を営む。拓也さんは20年間、アメリカの大学で進化学の研究を続けてきた。「いずれは農業に携わりたい」という気持ちが大きくなり、2013年に帰国。神奈川県横浜市に暮らしていた両親とともに、母の実家があった当地へ移った。
拓也さんが独学で有機農業を始めるころ、早紀子さんは東京で広告代理店に勤務していた。忙しくも充実した毎日を送っていたが、「10年後、今の仕事を続けられるのだろうか」という想いを抱き、元来の自然好きも後押しし、ある日移住を決意する。東京の「高知県移住相談窓口」を訪ね、折良く仕事も見つかり、2016年に安芸市へ。広域の観光協議会で働き、地域の魅力をPRする仕事をする中、二人は出会い結婚。2018年から中土佐町での暮らしが始まった。
二人が営む『中里自然農園』は中土佐町久礼の、約30世帯が暮らす大野集落にある。海に近く、小高い山に囲まれた立地。1ヘクタールほどの畑で、年間50〜60品目ほどの野菜を育て、主に個人向けの「野菜ボックス」を販売する。農薬・化学肥料は一切使わない。「土づくりがすべての基本」と話す拓也さんが特に注力するのが、カツオのアラを発酵・熟成させたカツオ堆肥。カツオで有名な高知県ならではだ。
二人に、中土佐町での暮らしについて聞いてみた。「人間本来の生き方ができているような気がします。太陽が昇ったら起きて畑に出て、沈んだら作業はおしまい。職場(畑)も目の前だし、海に入りたいときはすぐ入れるし、“生活の効率”がいいです!(笑)」と早紀子さん。拓也さんも、「自然は厳しいけれど、逆にその恩恵を享受できる。時間の流れもゆったりしているし。みんな生活において重きを置く部分が違う。けど、自然の中でなにか活動することを大切にする人にとっては、すごくいいと思います」。
人間関係や集落での共同作業など、地域ならではの習慣も話してくれた。「いいとこでもあるけど、常に見られている感じはあります(笑)。ただ、逆に言うと安心。みんな気にしてくれているということですから。みんな仲がいいし、助け合うときにはお互いが助ける。栽培用のハウスが破けたり、車が脱輪したら、すぐに集まる。都市から離れれば離れるほど、その点は覚悟しないとなかなか難しいかも」と拓也さん。
昨今、地方への移住がトレンドになっている。が、単なる引っ越しとは訳が違う。移住は人生における大きな決断だ。自身、東京から縁もゆかりもない高知へ移住した早紀子さんは、移住の秘訣を「期待し過ぎないこと」と言い切る。
「移住するときになにを望むか。理想を追い求めていると時間だけが過ぎる。一つだけ譲れないポイントを持って、そのほかのことは融通を利かせて、多少の我慢も必要。結婚生活も同じ。期待があり過ぎると、できなかったときに大変。うちらはそれがないから楽(笑)。移住も同じで、住み始めてから思いがけないことが起きたときにしょんぼりするんじゃなくて、思い切って地域の人に相談したりすると意外と早く解決することもある。だから、地域の人と積極的に関われる人はうまくいくんだと思います」。
Information
高知県へのU・Iターンを支援するサイト
中里さんご夫婦の暮らしがわかる動画を掲載中!高知家で暮らす
https://kochi-iju.jp/
こうち二段階移住 ~愛のある移住のかたち。~
https://www.city.kochi.kochi.jp/deeps/01/010999/renkei-nidankaiiju/