12月上旬、北風が冷たい中しまなみ野外学校スタッフはシーカヤックで海へ繰り出し、未来の受講生のためにルート、船の交通量、潮の流れといったポイントを肌で確認し現地視察を行なっています。今回編集部は現地視察に同行し、野外学校の魅力について伺いました。
しまなみ野外学校って?
しまなみ野外学校とは『株式会社今治.夢スポーツ』が提供する海、川、森や里の文化を通じて、自然と人の暮らしの共生を体感する事で、生きる力の育みや自然への関心の拡大を目的とした気づきのフィールドワークショップです。シーカヤックで700以上もある瀬戸内の島々の中を巡ったり、分水嶺から海を目指すハイキングをしたりなど今治の自然を舞台に様々なプロジェクトが展開されています。
しまなみ野外学校の活動ではコミュニケーション・アクティビティ・コーチングの3つを大切にしています。
コミュニケーション
・コントロールしようとするマインドを手放し環境に委ねる体験
・本音のコミュニケーション
・ 目標に向かう連携の実体験アクティビティ
・ 達成感/成功体験の積み重ね
・信頼関係の構築
・自尊心を高める
・チャレンジする心を育むコーチング
・本音が出やすい環境
・安心して話し合う環境
・本質的なポイントを直感的につかみやすい環境
自分の足で歩き、腕を使って漕ぐ。棲家を自分で作り、火を起こす。五感を使って創造性を育みながらチームメンバー同士が本音でコミュニケーションを取り共通のゴールを目指す。自然と自分と仲間と対話するフィールドワークは年齢にかかわらず非日常から多くの気づきを得ることができます。現代におけるまさに冒険教育といえるでしょう。今回は1泊2日に凝縮した、しまなみ野外学校の現地視察に特別に同行させていただきました!
1泊2日下見の様子を3分でまとめてみた
実際に体験してみて
肩に力が入る出発
初のシーカカヤックで防水具を見よう見まねで取り付けている中、「隊長やってみましょうか!」と隊長任命して頂き、なんとルート確認や海上での掛け声を担当することに。ルートを示す地図を見ると縮尺の感覚が狂うほど島々が大きく、普段スマホで地図を眺めている僕にとって少年時代の冒険感と本当にたどり着けるのかわからない不安な感情を抱きました。
いざシーカヤックに乗り込み海に出るとカヤックの中はそれほど寒くなく、むしろ自分の体温で、ほど良い暖かさでした。パドルは教えて頂いた通りに漕ぐとなんとか進むことはできるのですが、普段使わない筋肉を無理やり動かしている感覚でなかなか思うようには進めませんでした。
地図と実際の島々は違う
島は地図で見るのと、実際に目の前で見るのでは全く異なります。最初に目指していた島と実際に辿り着いた島が違うことに気づくシーンもありました。結果としてはルート短縮になったので問題はありませんでしたが、奇跡は二度起こらないと肝に銘じ、地図を凝視するだけでなく遠くに浮かぶ島の形や奥行きを意識し自分の感覚をフルで使うようになりました。
判断と決断の違いに気づく
どの島で夜を越すかもチーム次第です。風の向きや、砂浜に打ち上げられている流木の場所から満ち潮の加減を確認しながら探します。いい場所を見つけても本当にそこで良いのか?もっといい場所があるのでは?とネット環境が無い中では情報量の少なさに判断は鈍ります。ここで必要なのは判断ではなく決断だということを学びました。周りの意見に耳を傾けながら刻々と迫る夜に向けて今ある状況から決め切ることは社会においても必要なことかもしれません。
火を囲み語りあいながら食べる熱々のおでん
島に上陸してからあっという間に日は落ち、17:00ごろには真っ暗です。その分夜は長く火を囲みながらメンバー全員でこれまでの旅のこと、自分の歩んできた人生について語りあいました。過ごした時間は短いですがここまで共に旅をしてきたからこそ、心を許した会話が生まれました。
語りあいながら用意して下さったおでんを頂きました。冬空の下でハフハフ言いながら食べる熱々おでんの味は一生忘れることはないと思います。
朝焼けと共に出発
天気もよく、7:00頃には綺麗な朝日が顔を出しました。
砂で食器の汚れを落とすなど野外学校ならではの知識を活用し片付けた後、ゴールまでのルートを確認します。昨日の学びを生かしながら船の交通量や潮の流れ、タイムスケジュールをチーム全体で確認し出発をしました。体がパドルの漕ぎ方を覚えなめらかに前に進むことができ、人間の適応力に驚きました。
2日間とは思えない冒険の終わり
振り返ると2日間とは到底思えない経験をさせていただきました。情報がシャットダウンされた中でいかにゴールを目指すか。都会では感じる事のない自然に耳を傾け、自分の五感をフルで使い「決断力」「情報収集力」「チームワーク」を体感する。
まさに生きる力を育む冒険教育の一端を感じることができました。
しまなみ野外学校にかける思い
今回一緒に同行させて頂いたしまなみ野外学校エデュケーションプロデューサーの木名瀬さんに野外学校にかける思いを伺いました。
①しまなみ野外学校の魅力
結論に身を任せた上で確かめながら、なぞる野外体験では無く、しまなみ野外学校のプロジェクトは、最初から解っているものなど何1つなく、毎日の中で起こりうる出来事を積み重ね、全ての関わりが影響し合う中で、創り上げるプログラムです。時に弱い自分を受け入れたっていいし、時に仲間を頼ってもいいわけです。笑ったり、怒ったり、不安になったり、喜んだり…。仲間と共に、一つ一つ答えを見つけるような旅。日々変化のある自然の中で、何が必要か、何をすべきかに向き合う日々。信じるとは何なのか、思いやりとは何なのか、そして自分とは何なのか…。必死に向き合う旅が続きます。この経験が、直ぐに一人一人の変化として現れる訳ではないのだろうけど、それでも、長い人生の中での1ページの1行となり、自らの物語を作りあげた事と思います。
②参加者に感じてもらいたいこと
シーカヤックがはじめて、キャンプがはじめて、他社との共同的な事あんまりしたことない、山なんて登った事ない…。誰しも初めての経験に一歩踏み出すには、勇気が要るものです。人は様々な経験を通じて、自らを創り上げて行く生き物ですから“どうせ無理”なんて思わずに、自らワクワク感にどっぷりと向き合ってほしいと思います。
③ソトコトオンラインユーザーに一言
温暖な気候に恵まれている瀬戸内海です。私たちスタッフは、皆さんの自主性を重んじ、非日常の自然の中での経験を通じて、困難な問題に出会った時に、解決しようとする力を存分に引き出せるように、着かず離れず我々スタッフが全力でサポートして行きます。守られた環境から飛び出し、ありのままの地球の上を共に体感しましょう。