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全米最強のパワーウーマン、RBGのドキュメンタリー。

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『RBG 最強の85才』

彼女は悪党だ、怪物だ、反米だ、憲法へ敬意がない、最高裁の名を汚す存在だ……。BGMの「セビリアの理髪師」に被る、保守派の人々の忌々しげな発言。あれあれと思っていると、音楽はヒップホップに一転、スーパーヒーロー、リベラルの救世主……と、彼女を称讃する女性や若者たちの声が続く。

トランプ政権が導入した、イスラム圏を中心とする7か国からの入国制限措置を支持したように、保守化が強まる合衆国の最高裁判所で、次々と反対意見を表明。80代にして”最高裁のロックスター“となったRBGこと、ルース・ベイダー・ギンズバーグ。

全米で最高裁判事に任命された2番目の女性、性差別による不平等だけでなく、法の下での万人の平等のために多くの裁判を闘い、85歳になった今も、現役判事として法廷に立つ偉大なる反対者……こんなふうに書くと、アクティブでアグレッシブな人物を連想されそうだが、二人の女性監督がとらえたRBGはつねに落ち着いた口調で話す、物腰の柔らかな女性だ。

淑女であれ、自立せよ。ブルックリンのユダヤ系の家庭に育ったRBGが、敬愛する母親から学び、自身の言動の指針としてきたのが、この2つの教えだったという。

「怒るのは時間の無駄」とはまさに、言うは易く行うは難しの格言だが、性差別の実態を知らない男性判事には「幼稚園の先生になったつもりで説き続ける」と話すように、教えを実行できる冷静さ、辛抱強さが、彼女を現在のポジションへと導いたのだろう。

『RBG 最強の85才』

映画は学生時代の友人や仕事仲間、家族など、身近な人間の証言に加え、幼少期や学生時代のモノクロ写真、70年代の映像を織り交ぜて、彼女の軌跡を伝えるが、なかでも重要な人物が、夫のマーティンだ。人生で最大の幸せは夫と出会ったことと公言するように、彼女の知性と才能に早くから気づいた最大の理解者は、自身も優秀な弁護士でありながら、彼女に伴ってワシントンに移住し、家庭では料理を担当。学生結婚して以来、生涯にわたってRBGを支えた。

彼女をイラスト化したTシャツやマグカップなどのグッズが販売され、大きなメガネと法服の首元を飾るカラーがシンボル化されるなど、ミレニアム世代の熱い支持を受け、アメリカのポップカルチャーのアイコンとなったRBG。その人気の背景に、グローバリズムと背中合わせで進む保守化・右傾化に対するリベラル派の懸念と抵抗があることを、忘れてはならないだろう。 

『RBG 最強の85才』
2019年5月10日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他公開

映画『RBG 最強の85才』公式サイト http://www.finefilms.co.jp/rbg/

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