物や情報が簡単に手に入りやすくなった今、便利になっているはずなのに心が満たされず、どこか物足りなさを感じている人が多いように感じます。モノ消費からコト消費へと変わって行く中で、どんな体験をするかによって人生の豊かさや経験値が大きく変わっていくのではないでしょうか。今回は広島と東京で二拠点生活を行いながら、広島のタウン情報ウェブマガジン「ペコマガ」編集長として活動している市川梅さんとの対談記事をお届けします。
「広島が好き」広島愛溢れるウェブマガジン編集長の想い
中屋 市川さんは現在、どのような活動を行っているかお伺いしたいです。
市川 「明日の広島を今日よりもっと面白く」をテーマに広島の情報を発信する、タウン情報ウェブマガジン『ペコマガ』の編集長の他、WEB制作とWEBディレクター業務を行っています。
中屋 以前お話しさせていただいた際にも広島愛を熱く語ってくれましたが、広島の魅力を伝えることをお仕事にされたのはどういう想いからですか?
市川 「広島が好きだから」に尽きます。大学まですべて広島市の区内で育っていて、社会人になって初めて県外に出たんです。それから広島の良いところに気付き、さらに好きになりました。
県外に移り住んだ際、広島は暮らすのにちょうど良い場所だと実感したんです。食べ物が美味しく、たくさんの山と川が近くにあることにも、広島を出てから気が付いて。また、自治体の方々と一緒にお仕事をする機会がありましたが、 外へ発信することの苦手意識を強く感じたので、私が代わりにそのポジションを担いたいと感じました。「広島が好き」という気持ちがどんどん溢れて、発信したいと思うようになったのかもしれません。
二拠点生活をする中で気付いた新たな視点や発見
中屋 現在は東京と広島の二拠点生活をされていると思いますが、二拠点生活を始めたきっかけは何だったんですか?
市川 大学卒業後は県外の会社で2年半ほど働いて広島に戻りました。それから結婚を機に上京し、二拠点生活を行うことになったんです。東京に行くことが決まったものの、そのまま仕事を続けたい想いがあって。本社は広島にあるのですが、私から「東京にいるからこそ、できることもある」と会社に提案して、現在もリモートワークで仕事を行っています。
今は月に1回、1週間ほど広島に滞在しながら東京との二拠点生活を行っていて。広島のことを少しでも知ってもらうきっかけをつくりたいと思い、5月には新しいメディアを立ち上げる予定です。首都圏にある広島の情報や、広島に縁のある情報を首都圏の人に発信することによって、旅行に来てもらったり、移住したいと思ってもらったりしたいなと。広島の魅力をどんどん発信することで、読者が気付いたら広島ファンになっているメディアをつくろうと思っています(笑)。
中屋 広島の外交官みたいですね(笑)。生まれ育った広島から魅力を発信することも面白いと思いますが、一度他の地域に出てみると視点が変わってきますよね。東京に来てから気付いた新しい発見や広島を外から見て感じたことはありますか?
市川 広島は3年ほど流行が遅れていると実感しました。雑誌に載っている服を広島で着ていると「個性的だね」と周りから言われるのですが、東京の場合はみんなが雑誌に載っている服を着て歩いているので。
普段ペコマガで仕事をさせていただいている中で、今後のメディア戦略にも携わっているのですが、広島にいたときの視点と明らかに違うことが分かって。 他の地方も、中国地方だけでも見え方は違うのだと東京に来てから勉強になることが増えました。
中屋 東京に来て、広島の見方が変わったということですよね。僕も地方に住んでいたので、都会に出てから時間が過ぎる早さや仕事の多さなど、さまざまなことに驚きましたが、市川さんの中で違いを感じたことは他にどんなことがありますか?
市川 仕事の面だと、東京の方が仕事が細分化されているということです。私はWEBディレクターの仕事をする際にデザインまでの過程を全部1人で行うのですが、東京の会社は、社内に各過程を担当するプロフェッショナルがいて専門性がとても高いと思いました。専門的な知識を持った人がたくさんいる中で、 広く浅く学んできた私の知識を深めない限りは同じ土俵に立てないと思いました。
短時間で結果を出すための仕事術とは
中屋 市川さんが仕事をする上で大切にしていることやポリシーとしていることはありますか?
市川 仕事は1日に8時間しかしないと決めていて。自分の勉強や家事など、しなければならないことを除くと時間は限られているので、優先順位をつけてできることを広げていきたいと思っています。
中屋 昔は時間をかけることに価値がある時代だったと思います。時間をかけてモノをつくる過程が良しとされる風潮でしたよね。しかし今は、どのようなアウトプットを出すかが重要になってきていると思います。市川さんはどのようにして、8時間で結果を出し続けられているのですか?
市川 社会人として経験を積むごとに要領を掴んできました。期待値の1.2倍くらいのアウトプットを相手に返せるように意識して仕事を行う中で、作業に掛かる時間の目安が分かり始めてきて。それがここ1〜1年半くらいの出来事です。質は落とさずに時間を短縮することを繰り返し行っていたら、8時間で業務ができるようになりました。
中屋 時間をかけて何かをつくることがゴールではなく、相手に「良いな」と思ってもらえることがゴールなので、30分でつくられたものであってもいいんですよね。その感覚を意識しているのと意識していないのとでは、全然違うと思っています。
市川 私は基本的に負けず嫌いな性格なので、全部1番になりたいんです。人よりもできていたいですし、相手が想像している期待値を超えることが好きなので、そこを目指しています。
頑張るための原動力は「負けず嫌いと欲深さ」から生まれる
中屋 最速で期待値の1.2倍を超えるようなアウトプットを出す。そして、余った時間で次の準備を行い、自分に投資をしているんですよね。これまではどのような自己投資をしてきましたか?
市川 資格を取ることがとても好きで、ネイル衛生管理士の資格を持っています。純粋にやってみたいと思ったのと、ネイルの難しさや市場価値などを学んだ上で、相場や世の中の仕組みも知りたいと思い、資格を取得しました。技術や知識を自分のものにすることで、世の中の価値基準、周りの仕事の大変さや常識が知れて楽しいです。
また、広島は日本酒がたくさんあるので、利き酒師も取得しています。蔵に営業しに行ったり、ペコマガや生活に根付いた記事広告をいただいたり、イベント運営をやらせてもらうことも多いので、自分にもクライアントさんにも仕事にも役立つ資格をたくさん取得しました。
必要ではない資格も多いかもしれませんが、私は1番が好きなので、「会社の中で1番資格を持っている」という箔が付くと嬉しいですね。
中屋 市川さんがそこまで頑張れる原動力とは何ですか?
市川 原動力はおそらく欲深さですかね(笑)。さまざまなところに旅行に行けたら、その土地の美味しい物を食べられることができるし、その土地に住んでいる人を知ることができる。それが仕事やプライベートで大切な繋がりが生まれるきっかけになるかもしれないですよね。経験や何かを手にするためには必ずお金が必要になりますから。
中屋 「目標を達成するためにチャレンジしたい」「憧れの生活を送ることができたらきっと自分はワクワクするだろう」という想いをストレートに考えた結果、お金があった方が良いとなりますよね。
市川 生まれる環境はそれぞれ違うとしても、30万円のバッグを買ったり、2万円の夜ご飯を食べたりする人もいますよね。負けず嫌いかもしれませんが、私にもできるのではないか、私もそんな生活をしたという想いもあります。ただ、東京だと上には上がいてキリがないので、今は憧れの自分を日々追い続けている状況です。
魅力を発信するのが苦手な人の代わりに自らが架け橋となり、情報を届ける
中屋 東京から広島の関係人口を増やしていくにあたって、挑戦したいことはありますか?
市川 広島の人はオフラインで繋がりを持つことや、今までの繋がりを活かして自分の事業や活動をアピールすることはとても上手いんです!ですが、インターネット上の発信となると、魅力を上手く伝えられない人が多い印象を受けました。だから、発信をすることが苦手な人と情報が欲しい人の架け橋になれたら良いなと思っています。そして、最終的には広島を首都にするという野望があります。そのために、本社を広島にたくさん建ててもらいたくて。広島を豊かな都市にして、「市川さんのおかげだよ」と言っていただけるのが目標です。
中屋 暮らしを豊かにしたいと考えたときに、地方にいた方が良い面、地方でしか味わえない空気感や生活の豊かさがありますよね。広島の会社と、他の地域の企業を混ぜて刺激し合える環境をつくる。市川さんが東京と広島をかき混ぜる役割になることに大きな意味があるのではないかと思います。
市川 U・I・Jターンの斡旋がしたいです。私のように広島が好きだから発信したい、という人も増えたら良いですよね。そのために別の地域から来た人を受け入れる土壌を頑張って耕していかないといけないなと思っています。
中屋 笑顔が素敵な市川さんには周りをハッピーにさせる力があるので、会った人みんなが広島のことを好きになると思います。 こんなに楽しく広島のことを語る人がいたら、「広島のことをもっと知りたい」と思う人が増えますよ。都心から広島ツアーを企画して、市川さんならではの広島のガイドブックに載っていないお店にしか行かないツアーなども開催するのも良いですね。
市川 広島の知られていない観光スポットや美味しいご飯、素敵な場所を私がバスの中で紹介します。ツアーをきっかけに、参加した人が周りの人に広島のことを話してくれるような輪が生まれたら良いなと思います。
体験には何があった?
広島で生まれ育った市川さんが地元の魅力を発信したいと思ったきっかけは「広島が好き」という想いがあったから。東京と広島の二拠点生活をする中で、「外」から広島を見る視点を手に入れてより多角的に物事を捉えるようになったことで、地元の良さに改めて気付くことができたようです。
発信が苦手な人の代わりに自分が架け橋となって情報を届けようとする市川さんの原動力には、欲深さの他に「人との繋がりを大切にしたい」という想いもあるのではないかと感じました。
地元を離れたことで気付いた魅力を発信するため、努力を怠らず、常に笑顔で仕事を楽しむ姿勢は、周りに勇気と元気を与えているのではないでしょうか。
市川さんが編集長を務めるメディアはこちら
広島のタウン情報ウェブマガジン「ペコマガ」
文・木村紗奈江
【体験を開発する会社】
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