弊誌『ソトコト』は、地方自治体との取り組みでさまざまな「関係人口講座」を運営しています。今回、関係人口講座の一つ、和歌山県田辺市が舞台の「たなコトアカデミー」第3期修了生である山中明日子さんにインタビュー。講座の受講動機や、都内在住の山中さんがどのように田辺市と関わっているのかなど、根掘り葉掘り聞いてみました。『ソトコト』が手がける講座がどんなものかを読者のみなさまに知ってもらうとともに、関係人口としての山中さんの「地域との関わり方」をお届けします。
東京から田辺市への移住経験を持つ山中さん。
「東京での仕事に行き詰まりを感じることが増えました。かと言って全く新しい職種の仕事を始めるのもピンと来なかった。だったら『場所を変えてみよう』と思いついたのが、移住への一歩でした。
思い立ってからはさまざまな場所を探し始めました。全く知らない土地に行くのは当然不安もあります。私の場合、和歌山県には数回旅行で訪れたことがあり、その時から居心地のよさを感じていました。
『あえて新幹線が停まらないエリアを選んでみよう』『緊急時には移動がしやすいよう空港は近い場所が好ましい』など少しずつ具体的な条件を考えていきました。」
田辺市には新幹線の駅はありませんが、隣の白浜町まで行けば南紀白浜空港があり、交通の便がいいエリアです。
こうして移住を決めた山中さんは、1年間の契約社員として田辺市で仕事を始めました。実際に移住してみてからは、田辺市での生活がとても気に入り、さらに1年間契約を伸ばし、計2年間を田辺市で過ごしたのだそうです。
2年間の移住生活が終わって、戻ってきた東京で「たなコトアカデミー」を知る。
「たなコトアカデミー」は、首都圏と田辺市をつなぐ関係人口育成の連続講座。都内で田辺市とのつながりを一緒に考えながら、現地実習を通して田辺市で活躍しているローカルプレーヤーと出会い、田辺市との自分らしい関わり方を見つけていくプログラムです。
2020年度開催の第3期「たなコトアカデミー」は、「地域の魅力を伝える」がテーマ。地域の魅力を多くの人へ届ける編集方法を学び、インタビュー記事にまとめる形で実践する内容でした。
「東京に戻ってきてからも、友人と旅行で訪れるなど田辺市との関わりを続けていましたが、魅力を伝えられる相手が自分の周りの友人にとどまってしまうと感じていました。私はSNSをあまり使わないので、情報発信に疎かった。そんな中、田辺市にいなくても地域の魅力をどう発信するかを学べる『たなコトアカデミー』のテーマにひかれ、受講を決めました。」
都内の飲食店と田辺市のローカルプレーヤーを繋げた山中さん。
現在は東京に拠点を戻した山中さんですが、田辺市での移住生活の経験とローカルプレーヤーとの関わりがあるからこそのエピソードを話してもらいました。
田辺市での生活が終わり東京に戻ってきてから、ふと見ていたテレビ番組で紹介されていたポルトガル料理を食べてみたくなり、都内のポルトガル料理店をネットで検索しました。すると、大好きなコショウダイを提供している浅草のポルトガル料理店を発見。これはすぐ行くしかない、と思いその店を訪れました。」
足を運んだ「ポルトガル食房ジーロ」の店主と仲良くなり、田辺市にかつて住んでいてコショウダイを知ったことや、お店を訪れた経緯を話した山中さん。田辺市では一年中柑橘がとれるという話をしたところ、お店で取り扱いたいということに。「たなコトアカデミー」でつながった野久保さんを紹介することになったそうです。
山中さんの今後の田辺市との関わり合いについて。
「田辺市のみなさんはとても前向きでオープンな方が多いのが印象的です。私もとても多くの刺激を受けました。新しいことに挑戦したいけど、まだ迷いや悩みがある、そんな方に受講をおすすめします。『たなコトアカデミー』に参加することで、田辺市のみなさんに背中を押してもらえると思います。
“地方を盛り上げたい”、 “東京に疲れた”と感じている方にもおすすめしたいです。空港に近いので、二拠点生活にも適していますね。」
「何度も考えているのですが、都内にいる両親のことやコロナ禍のご時世を考えるとまだ実現まで至っていないんです。けれど、これからも田辺市との関わりを東京でも持ちつつ、魅力を人々に伝えていくことができたらいいなと思っています。」
元々、移住者として田辺市に住んでいた山中さんは、現在都内に戻りながらも山中さんらしい田辺市との関わりを継続しています。地域との多様な関わり方を肯定する、まさに「関係人口」を、山中さんは体現しているのではないでしょうか。