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関係人口

特集 | 関係人口入門 2023

建築家・茶人・『水戸宿泊交流場』オーナー・中村彩乃さんが選ぶ「関係人口を理解する本5冊」

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建築家であり、ゲストハウスを運営する立場でもある中村彩乃さん。空間を見つめ、地域に暮らし、多くの人と接してきた中村さんの感性あふれる5冊。地域で拠点を運営する人や、関係人口にたずさわる人におすすめです。

*今回の選書人は、それぞれの分野で関係人口に向き合い、関係人口を理解するうえで大切な活動をされている11名の方々です。これから関係人口を受け入れるみなさんや、今まさに地域と関わり始めた人がよりよいアクションができるように、おすすめの本を選んでいただきました。

選者 category:ゲストハウス

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HUNTER×HUNTER/冨樫義博著、集英社刊
主人公の少年・ゴンの夢は、別れた父と同じハンターになること。同じハンター試験の合格を目指す仲間との冒険ストーリー。独立した個と個の集合というチーム・ビルディングが理想的で、私のバイブルになっています!

空を見てよかった/内藤 礼著、新潮社刊
私が影響を受けている作家の一人・内藤礼さんの集大成にして初めての、およそ100篇からなる言葉による作品集。作品の空間に入ったようで、本というものを介してアート鑑賞の体験ができる一冊です。

私は地元である茨城県水戸市で、ゲストハウス『水戸宿泊交流場』を運営しています。空き家を改修して2021年に誕生しました。『水戸宿泊交流場』の空間づくりに影響を与えた一冊が、造形やインスタレーション作品を制作するアーティスト・内藤礼さんの『空を見てよかった』です。読んだきっかけは、香川県の豊島にある『豊島美術館』を訪れたこと。『豊島美術館』は、西沢立衛氏の設計と一体となり、美術館そのものが内藤さんの作品という空間です。季節などの条件が変わっても、誰がいても、どの角度でも美しく、「使う人や条件によってその都度完結する、可能性あふれる空間をつくりたい」と感じました。この本は二次元でありながら、読むだけで内藤さんの作品の空間に入った感覚にさせられ、『豊島美術館』のような空間が広がっていると感じ、感銘を受けました。私は建築で、そういうことをやりたいと思ったのです。

『水戸宿泊交流場』では、客室を一つのまちとしてとらえました。そこに滞在する人の気配は分かる程度に仕切りつつ、中・長期でも滞在できるよう適度な心地よさも意識し、演出をしました。

チーム・ビルディングなど、運営や仕事の仕方のヒントにしているのが『HUNTER×HUNTER』。これは私のバイブルになっています。登場人物にはそれぞれ能力があって独立しているのですが、あるとき、課題に対して集まり、横並びに近い感覚でチームビルディングをし、それぞれが力を発揮して解決していくのです。その都度適任者が行い、解決すればチームが解散する。私は20代の頃から、そういう生き方がしたいと思っていました。似たような人が集まるコミュニティよりも、個性のある人々がたまたま集まって、そこで何かが生まれていくことをしたかったのです。現在『水戸宿泊交流場』で、実現しつつあります。今後は、たとえ私が不在でも、いる人によってその場が回るようにしたいです。

現在、少しずつ関係人口が生まれています。滞在をきっかけに、「観光以上、移住未満」の関係ができつつあるのです。運営側が密なコミュニケーションを取らずとも、滞在者が特性に合う地域のコミュニティとつながっていくことにも可能性を感じました。また、滞在者の方のおかげで、地元であるのにもかかわらず私が知らなかった方との出会いもあって、新しい地元を発見しています。

今回は空間づくりやチームづくりで参考にした5冊を紹介します。

磯崎新と藤森照信の茶席建築談議
磯崎 新著、藤森照信著、六耀社刊
 (176399)

磯崎さんも藤森さんも茶室を手がけていて、空間について語り合った一冊。使い方や人数を規定しない、幅広い用途の空間は日本的で、ゲストハウスにも取り入れました。日本的精神がある空間を残していきたいです。
輝く都市
ル・コルビュジェ著、坂倉準三訳、鹿島出版会刊
 (176401)

20世紀の都市計画のあり方に大きな影響を与えてきた、ル・コルビュジエによる都市像。「建物は道具であり、自分の体の延長のものだ」と書いてあり、広い視野で建物がどういう役割を持つか、考えさせられました。
環境シミュレーション
建築デザイン実践ガイドブック
 (176403)

環境シミュレーションを活用するための、新築について扱ったガイドブック。人々の記憶の詰まった建物をいかに残すか。昔の建物に環境シミュレーションを活用すると残しやすくなるか。この本には実践法やヒントが載っています。
 (176404)

なかむら・あやの●住宅メーカーと空間デザイン会社を経て、『Fumihiko Sano Studio』にて伝統などを現代の感覚と合わせ新しい価値観をつくることを経験。現在、東京と水戸との二拠点生活をして建築設計・地方創生・プロダクトデザインなどに携わる。
photographs by Jiro Matsushita text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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