建築家であり、ゲストハウスを運営する立場でもある中村彩乃さん。空間を見つめ、地域に暮らし、多くの人と接してきた中村さんの感性あふれる5冊。地域で拠点を運営する人や、関係人口にたずさわる人におすすめです。
選者 category:ゲストハウス
『水戸宿泊交流場』では、客室を一つのまちとしてとらえました。そこに滞在する人の気配は分かる程度に仕切りつつ、中・長期でも滞在できるよう適度な心地よさも意識し、演出をしました。
チーム・ビルディングなど、運営や仕事の仕方のヒントにしているのが『HUNTER×HUNTER』。これは私のバイブルになっています。登場人物にはそれぞれ能力があって独立しているのですが、あるとき、課題に対して集まり、横並びに近い感覚でチームビルディングをし、それぞれが力を発揮して解決していくのです。その都度適任者が行い、解決すればチームが解散する。私は20代の頃から、そういう生き方がしたいと思っていました。似たような人が集まるコミュニティよりも、個性のある人々がたまたま集まって、そこで何かが生まれていくことをしたかったのです。現在『水戸宿泊交流場』で、実現しつつあります。今後は、たとえ私が不在でも、いる人によってその場が回るようにしたいです。
現在、少しずつ関係人口が生まれています。滞在をきっかけに、「観光以上、移住未満」の関係ができつつあるのです。運営側が密なコミュニケーションを取らずとも、滞在者が特性に合う地域のコミュニティとつながっていくことにも可能性を感じました。また、滞在者の方のおかげで、地元であるのにもかかわらず私が知らなかった方との出会いもあって、新しい地元を発見しています。
今回は空間づくりやチームづくりで参考にした5冊を紹介します。
磯崎 新著、藤森照信著、六耀社刊
ル・コルビュジェ著、坂倉準三訳、鹿島出版会刊
建築デザイン実践ガイドブック
主人公の少年・ゴンの夢は、別れた父と同じハンターになること。同じハンター試験の合格を目指す仲間との冒険ストーリー。独立した個と個の集合というチーム・ビルディングが理想的で、私のバイブルになっています!
空を見てよかった/内藤 礼著、新潮社刊
私が影響を受けている作家の一人・内藤礼さんの集大成にして初めての、およそ100篇からなる言葉による作品集。作品の空間に入ったようで、本というものを介してアート鑑賞の体験ができる一冊です。