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東京農工大学農学部環境資源科学科教授|高田秀重さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

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環境汚染リスク、とくにマイクロプラスチックの汚染について、日本国内から世界まで幅広く研究・分析を行っている高田さん。マイクロプラスチックの問題を自分ごととして正しく捉え、持続可能な未来につなげていくための知識を身につけるための5冊とは。

高田秀重さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

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(左上から時計回りに)1.『プラスチック・フリー生活 ─今すぐできる小さな革命』/2.『奪われし未来』/3.『沈黙の春 ─生と死の妙薬』/4.『胎児の複合汚染 ─子宮内環境をどう守るか』/5.『人新世の「資本論」』 
 近年では多くの人が、マイクロプラスチックで海が汚染されていることを知っています。これはもちろんSDGsの観点からも問題ですが、最初に紹介する『プラスチック・フリー生活』は汚染の全体像を描くのではなく、プラスチックから出てくる有害な化学物質が、人体にどんな悪影響を及ぼすのかに焦点を当てて書かれた本です。この本の特筆すべき点は生活に密着した知識が身につくところでしょう。特にどんな製品を避ければいいのかということや、悪影響を軽減させるために備長炭やクッキングシートを使う例など、指南書のように読むことができます。それだけにマイクロプラスチックの問題をきわめて身近なものとして捉えることができます。

 さらに詳しく人体への影響を知りたくなったら、『奪われし未来』を読んでみてください。専門的な内容になりますが、有害物質が人体のホルモンバランスを崩す事例などが詳しく書かれています。『奪われし未来』で取り上げられた問題は、1962年に発刊された『沈黙の春』が警鐘を鳴らした環境汚染問題と地続きになっており、「第二の『沈黙の春』」ともいわれています。『沈黙の春』は農薬によって起こる問題を取り上げましたが、自然界に及ぼす異常な影響が似た形で、今度はプラスチックで起こっているのです。『沈黙の春』は、持続可能な未来のためにも歴史から学ばないといけないという意味で選書しました。

 マイクロプラスチックの問題は根が深く、表面化するのに時間がかかることを示してくれるのが『胎児の複合汚染』です。場合によっては世代を超え、親から子へと影響を及ぼしてしまう危険について書かれています。具体的には母胎のヘソの緒からプラスチックや農薬に含まれる化学物質が検出された話などが挙げられ、それによって子どもの成長が通常より遅くなったり、逆に早まったりする危険が疑われていることもあります。読めば危機感を覚えるでしょうが、それだけにアクションを起こす動機づけにもなるでしょう。

 ここまではマイクロプラスチックの問題を「点」的に指摘する本を紹介しましたが、そもそもなぜこの問題が起こっているのか、時代の全体像から把握するためには、『人新世の「資本論」』を。資本主義がプラスチックを必要とし、その処理にもまた社会システムの問題が関わっているとわかります。賛成しづらい論もありますが、プラスチック問題の社会背景をつかむのにいい本です。

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高田秀重(たかだ・ひでしげ)●東京農工大学農学部教授。東京湾とその流域、アジアやアフリカなどで、環境中における微量有機化学物質の分布と輸送過程について研究。1998年からプラスチックと環境ホルモンの研究を開始。「International Pellet Watch」主宰。
photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa
記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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