高田秀重さんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
さらに詳しく人体への影響を知りたくなったら、『奪われし未来』を読んでみてください。専門的な内容になりますが、有害物質が人体のホルモンバランスを崩す事例などが詳しく書かれています。『奪われし未来』で取り上げられた問題は、1962年に発刊された『沈黙の春』が警鐘を鳴らした環境汚染問題と地続きになっており、「第二の『沈黙の春』」ともいわれています。『沈黙の春』は農薬によって起こる問題を取り上げましたが、自然界に及ぼす異常な影響が似た形で、今度はプラスチックで起こっているのです。『沈黙の春』は、持続可能な未来のためにも歴史から学ばないといけないという意味で選書しました。
マイクロプラスチックの問題は根が深く、表面化するのに時間がかかることを示してくれるのが『胎児の複合汚染』です。場合によっては世代を超え、親から子へと影響を及ぼしてしまう危険について書かれています。具体的には母胎のヘソの緒からプラスチックや農薬に含まれる化学物質が検出された話などが挙げられ、それによって子どもの成長が通常より遅くなったり、逆に早まったりする危険が疑われていることもあります。読めば危機感を覚えるでしょうが、それだけにアクションを起こす動機づけにもなるでしょう。
ここまではマイクロプラスチックの問題を「点」的に指摘する本を紹介しましたが、そもそもなぜこの問題が起こっているのか、時代の全体像から把握するためには、『人新世の「資本論」』を。資本主義がプラスチックを必要とし、その処理にもまた社会システムの問題が関わっているとわかります。賛成しづらい論もありますが、プラスチック問題の社会背景をつかむのにいい本です。