フードジャーナリスト/『Chefs

フードジャーナリスト/『Chefs for the Blue』代表理事|佐々木ひろこさんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

フードライティングやサスティナブルシーフードの啓発活動など、持続可能な食生産について積極的に行動しながら考えている佐々木さん。世界中の料理人、生産者、アクティビストなどとサスティナブルフードについて模索してきた佐々木さんの選書とは?

佐々木ひろこさんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊

(左上から時計回りに)2.『食の未来のためのフィールドノート(上・下巻)─「第三の皿」をめざして』/1.『最新漁業の動向とカラクリがよ〜くわかる本』/3.『食の終焉 ─グローバル経済がもたらしたもうひとつの危機』/4.『追いつめられる海』/5.『タネの未来 ─僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』 

 食をめぐる状況は年々めまぐるしく変化しています。私の場合はフードライターのほかにも『Chefs for the Blue』という水産資源について考える社団法人でも活動を行っているので、海の環境や資源問題については、特に強く意識を向けるようにしています。

 日本の海の問題を、漁業にフォーカスして考えられるのが『最新漁業の動向とカラクリがよ~くわかる本』です。著者は乱獲に対して警鐘を鳴らし続けてきた研究者で、水産業の現状を知るのにいいでしょう。データや図解も多く、専門的でありながらわかりやすく読めます。

 さらに視野を広げて現状を読み解くには、『食の未来のためのフィールドノート』を。アメリカの有名なシェフが自ら生産現場を訪ね歩き、シェフとしてサスティナブルな食物生産にどうやって携わっていけるかを模索した本です。内容自体もおもしろいのですが、下巻の冒頭、フードメディアがバーバーシェフの食材の選択方針に大きな影響を与えたくだりがあり、書き手として思わず背筋が伸びた一冊でもあります。

『追い詰められる海』は、今、世界中の海で起こっている問題を全体的かつ多角的に採り上げた本。海のさまざまな問題についての現状と、背景にあるものを教えてくれます。

 そういった模索を放棄し、現代の食経済をこのまま続けた場合には、やがて終焉を迎えざるを得ないことを丹念な取材によって書き上げたのが『食の終焉』です。これまでの第一次産業がいかに自然に負荷をかけながら拡大してきたか、そして巨大化・グローバル化した流通システムがそれをさらに助長してきた現実について綿密なリサーチのもと書かれています。またこの本からの学びが多い理由には、今後地球が採るべき選択肢について、一方向からのみで語っていないことがあります。激増する人口を養うための食糧増産が必須のなか、たとえば遺伝子組み換えかオーガニックかという真逆の可能性を等しい重みで論じていたり、地産地消のメリット・デメリットをそれぞれ冷静に分析したりと誠実な議論が展開します。

『タネの未来』は若き種苗流通会社が語る、種の多様性を未来に残すことの価値が書かれた本。この本によると、20世紀以前は3万種以上あった食用種が今は約120種しか残っていないそうです。画一的な流通や栽培に適したものだけを残した結果ですが、環境の変化でたやすく絶滅する危険があることは明らかです。料理の面でも、種の多様性はあってほしいことですね。

佐々木ひろこ(ささき・ひろこ)●日本で国際関係論、アメリカでジャーナリズムと調理学、香港で文化人類学を学び、企業勤務ののちフリージャーナリストに。食文化や飲食業、食のサスティナビリティなどをテーマに執筆を行う。『Chefs for the Blue』代表理事。

photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa

記事は雑誌ソトコト2021年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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