佐々木ひろこさんが選ぶ、SDGsと地球環境に触れる本5冊
日本の海の問題を、漁業にフォーカスして考えられるのが『最新漁業の動向とカラクリがよ~くわかる本』です。著者は乱獲に対して警鐘を鳴らし続けてきた研究者で、水産業の現状を知るのにいいでしょう。データや図解も多く、専門的でありながらわかりやすく読めます。
さらに視野を広げて現状を読み解くには、『食の未来のためのフィールドノート』を。アメリカの有名なシェフが自ら生産現場を訪ね歩き、シェフとしてサスティナブルな食物生産にどうやって携わっていけるかを模索した本です。内容自体もおもしろいのですが、下巻の冒頭、フードメディアがバーバーシェフの食材の選択方針に大きな影響を与えたくだりがあり、書き手として思わず背筋が伸びた一冊でもあります。
『追い詰められる海』は、今、世界中の海で起こっている問題を全体的かつ多角的に採り上げた本。海のさまざまな問題についての現状と、背景にあるものを教えてくれます。
そういった模索を放棄し、現代の食経済をこのまま続けた場合には、やがて終焉を迎えざるを得ないことを丹念な取材によって書き上げたのが『食の終焉』です。これまでの第一次産業がいかに自然に負荷をかけながら拡大してきたか、そして巨大化・グローバル化した流通システムがそれをさらに助長してきた現実について綿密なリサーチのもと書かれています。またこの本からの学びが多い理由には、今後地球が採るべき選択肢について、一方向からのみで語っていないことがあります。激増する人口を養うための食糧増産が必須のなか、たとえば遺伝子組み換えかオーガニックかという真逆の可能性を等しい重みで論じていたり、地産地消のメリット・デメリットをそれぞれ冷静に分析したりと誠実な議論が展開します。
『タネの未来』は若き種苗流通会社が語る、種の多様性を未来に残すことの価値が書かれた本。この本によると、20世紀以前は3万種以上あった食用種が今は約120種しか残っていないそうです。画一的な流通や栽培に適したものだけを残した結果ですが、環境の変化でたやすく絶滅する危険があることは明らかです。料理の面でも、種の多様性はあってほしいことですね。