シングルのモヤモヤ!?

連載 | 毎日がサスティナブル!? —アムステルダムとニッポンのSDGs— | 9 シングルのモヤモヤ!?

パートナーがいることと同様に、シングルでいることも一つの選択肢。でも、日本でも、それこそオランダでも、シングルでいると妙な圧力を受けたりすることがあるようです。多様な価値観を認める社会を築くためにも、当たり前ですがシングルへの配慮も大切だなあと思います。

シングルは不幸じゃない。

 前回の結婚の流れから、シングルでいることなどについて話していきたいと思います。

桑原果林(以下果林) 先日、オランダの国会議事堂の前で、シングルの人々の権利を訴えるデモがありました。シングルの人は家族割やペア割りを受けられないのが、不公平だ、と言うのが彼らの主張です。民主主義が生きているオランダならではですよね。

桑原真理子(以下真理子) パートナーがいたらいたで、それはすばらしいこと。でも、一人で楽しめる、というのも、すごくステキなことだと思います。そういう能力を培っているシングルの人から、パートナーがいる人は学ぶことが多いとも思います。私も今長くお付き合いした人と別れてシングルなんで、こんなことを言うと強がっちゃって、とか言われたりするんですけど(笑)、本当にそう思います。

編集部・竹中(以下竹中) カップルからの謎の上から目線ってありますよね(苦笑)。

真理子 オランダでもありますよ。「真理子は犬を飼いなさい。そうすれば犬好きな男が寄ってくるよ」とか。相談もしていないのに「あなたは望みが高すぎる」とか言われたり。なんでときめきもしない相手と無理やり一緒にいなきゃいけないのかな、って思います。だから、日本だともっとすごいんだろうなあ、って。

竹中 意外! オランダでもそういうところがあるんですね! もっと個人の自由を尊重しているイメージあります。

真理子 でも、そういうところも興味深いです。私自身、押しつけがましいアドバイスとかしてたなって反省するところもありました。必然的に、誰かと一緒にいることのほうがいいこと、みたいな、無意識に一人でいることがアンハッピーみたいな考えを持っていた気がします。
でも、パートナーがいてもいなくても、自分を幸せにするためのマインドセットや日々の努力が大事な気がしています。パートナーがいる=幸せではないじゃないですか。私は必ずしもパートナーは要らないけど、ドキドキハラハラするような楽しい恋はウェルカムです。

「若さ=女性の価値」に疑問。

竹中 楽しい恋……。日本はお節介文化があったのに、今は無くなってて、みんな「誰か紹介するよ」って言うのに結局誰も紹介し合わないっていう。

真理子 本当にいい人いたら紹介しないですよね。自分がいくっつーの(笑)。

竹中 た、たしかに。だったら、余計なことを言わなければいいのに……(笑)。 

真理子 その人にとっての「いい人」を紹介されたとしても、たぶん私の求めてる人ではないし。「なんで恋人いないんですか?」って、その質問の意味もわかんないですね。

竹中 最近、結婚相談所にとりあえず登録してみたという知人もちらほらみられるようになりましたよ。

真理子 結婚相談所! こっちにもあるんだろうけど、聞かないですね。

果林 うん、聞いたことない。竹中さんは登録したんですか?

竹中 いえ、してません。登録は早ければ早い方がいいと言われたんですが、「登録しよう!」と思わなかったのは、向こうは超真剣に来ているのに、今のままだと失礼かなと(汗)。一緒に歩める人を見つける手段として相談所があるならいいんですけど。って一体どの立場で言っているんだっていう。

真理子 日本って「若さ=女性の価値」って感じます。メディアでも、日常でも、29歳までとか、35歳までとか。こっちでは40代でも出会い系アプリを使ってデートしたり、離婚しても恋人がいたりとかが普通。当たり前だけど、生きている限り、恋とか愛とか続くものかなって思いますけど……。

果林 若い健康な卵子が欲しいってのなら年齢にこだわる理由がわかるけど(笑)、みんな必ずしもそうではないですよね。

真理子 日本では女性は赤ちゃんを当然望んでいるものと思う男性も多いんじゃないですか?だからこそ若さを求めるんでしょうけど。オランダ人の男性って若さを求めてなくない?

果林 若い人好きな人オランダ人もいると思うけど……年齢にかかわらず、内面的に成熟した女性のほうが深みがあって一緒にいておもしろいって思っている人も多いように思います。

真理子 やっぱり日本の男性は若い子がいいんですかね、乾さん?

 場をなごませる、空気を読む、いつも笑顔で気を遣えて、みたいな、そういうのを求めている人はいると思いますね。まあ、人によりますけど……。

真理子 つまり森喜朗元首相が求めるような「わきまえる女」ですね!

果林 日本だと、お食事を女性がとり分けることって多いじゃないですか。ファッション雑誌なんかでも「こうすれば女子力アップ!」みたいなアドバイスがあったり。そもそも女子力ってなんなんでしょうね。

 メディアの責任は大きいですよね……。

竹中 女性が男性に対して経済的な支え、安心を求めるのと引き換えに、男性は女性に、自分をお世話してくれる人を求めている、みたいな構図?

「かわいい」って言ってもいい?

竹中 オランダの男性の好きな女性のタイプってあるんですか?

果林 いろいろあると思いますが、美人だったらモテるし、明るかったらモテるし。人を惹きつける、チャーミングな人はやっぱり人気あると思います。

真理子 日本だと、「かわいい」っていうのが、女性に求められているように思いますが、なぜ男性は女性にかわいさを求めるのか、自問自答してほしい。私の感覚では、「かわいい」は子どもやペットに言う言葉。精神的にも、経済的にも自立している大人の女性にふさわしい言葉だとは思いません。

 そういえば、取材で行った先で、女性編集者が漁師さんに魚のさばき方を教わって、意気揚々と実践していたら、夜呑んでいる時に「かわいげがねえ」って言われてました。ちなみに「やってください〜」というスタンスだったライターさんはなんだかんだ言われつつも、もてはやされていました(笑)。

真理子 そういう女性への扱いも、どこかお決まりで、なにも考えずに発言しているんでしょうね。

 たしかに。でも、「かわいい」「かわいげがない」という尺度が一時代の日本にはあったことは事実。今もあるかもしれないけど、僕自身も気をつけようと思います!

▼第6回『日蘭の食事情の背景に見えるコト』
https://sotokoto-online.jp/5331

 お国によっていろいろですね。

みんな生きづらさを抱えている。

真理子 オランダ人女性も自分よりも学歴が高い人を選ぶ傾向はあるみたいです。でも、25歳から35歳のオランダ人女性は平均的に男性よりも学歴が高い傾向にあるそうなので、そういう女性は学歴が高いほどパートナーを見つけるのはなかなか難しいようです。都市部は女性よりも男性が少ないので、アムステルダムでもやはりシングル女性が多いですね。

果林 結局、女性と男性は、完全にフィフティフィフティの関係になるのは難しいんでしょうね、社会や家庭において。子どもを産むのは女性ですし、キャリア志向でないオランダ人女性も傾向として多いですし。

真理子 こないだ、私が自転車の修理に行ったときのことなんですけど……。そこはイタリア人男性が経営している店で、彼と恋の話をしたんですけど、彼のオランダ人女性の考察がおもしろかったです。
「彼女たちはなんでも自分でできるし、すごく強い存在だと思っている。だから僕的に優しさでドアを開けると、『いや、自分でできるからいい』って断られる。オランダ人女性はそういうところで温かみに欠けると思うんだ」
オランダは自転車がメインなので、女性でも壊れたら自分で直しますし、階段も担いで登ったりします。女性=か弱いという認識は少ないですし、自分たちでもそんなことは思っていない。男性に奢られるとかもノーで、「全部平等で!」みたいな。でも、裏を返したら、オランダの女性が強い存在であるということを周りに示さないといけないという状況は、実は本当の意味で自立をしていないからと思ったりもします。誰かがドアを開けてくれたら、それが男性でも女性でもスマートに「ありがとう」って言えばいいだけ。力まなくていいはずですから。でも、そういうところ、こっちにいると自分にもあるなあ、って思ったりしています。

 自由で自立したイメージのあるオランダ女性も、いろいろあるんですね……。

真理子 やっぱり、いろんな価値観があることは伝えたいですね。30年、40年と一緒に居られる関係性を築けたらそれはそれでハッピーだと思いますけど、そうできなかったとしても、10年一緒に居た人がいる、それもハッピーの形だと思いますし、一人でいることもハッピー。いろんなカタチ、価値観があるはずなのに、やっぱりオランダでも一般的にはパートナーと出会って子どもをつくって一生連れ添う、みたいなのが、世間から見るハッピーの形みたいになっているなって。

 ちょうど、LGBTQの法案が日本で議論されている中で、関連しそうな記事ありました。種の保存的な意味合いから、同性愛や同性婚は間違っているような発言で批判を受けた議員がいましたが、それは生物学的には違っているそうで、最新の研究では、個体それぞれの自由な行動が先で、その結果というか行動の中で繁殖が選択されていく、ということになっているそう。だから、それでいいんだと思います。

真理子 価値観を押し付けてくる人は、やっぱりいますよね。自分も気をつけなきゃって思います。

 真理子さんは大丈夫でしょう(笑)。

真理子 いやあ、私もお節介で人を紹介してあげたことありますもの(笑)。

ーーーーーーーーーー
桑原果林 くわはら・かりん
コーディネーター、翻訳者、通訳者。日本で日蘭バイリンガルとして育ち、2010年渡蘭。レインワードアカデミー美術大学文化遺産学科でミュゼオロジーを学び、在学中に姉・真理子と共に通訳・翻訳事務所So Communicationsをアムステルダムにて設立。メディア・教育・介護・農業・デザイン&アートなど多岐にわたる翻訳・通訳・コーディネート業務を行い、日本とオランダの交流のサポートにつとめる。
ーー
桑原真理子 くわはら・まりこ
アーティスト。東京都生まれ。 父が日本人、母がオランダ人。19歳の時にオランダへ渡る。2011年、ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)、グラフィックデザイン科卒業。過疎地域で出会った人々との対話を元に、ドキュメンタリー形式の出版物、映像作品を制作している。
ーー
乾祐綺 いぬい・ゆき
編集者、フォトジャーナリスト。写真家でもあった祖父の影響から、幼少期より写真を始める。海、環境、暮らしなどを主なテーマに、日本各地はもちろん、海外への取材を続ける。ソーシャル&エコマガジン『ソトコト』、ANA機内誌『翼の王国』誌上などで、写真と記事を掲載。日本と海外、それぞれのソーシャルグッドな文化や活動を双方向で伝えることをテーマに活動する株式会社ニッポン工房代表。

編集部ピックアップEDITER’S PICK UP