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サスティナビリティ

連載 | リトルプレスから始まる旅

FULL本屋

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目次

路地裏で出合った怪しい古本屋。

今回紹介するリトルプレスは『FULL本屋』。香川県高松市にある予約制の古本屋『なタ書』を、漫画家の赤目キクヤさんが紹介したリトルプレス。

高松は、『451ブックス』のある岡山県玉野市と瀬戸内海を挟んで位置し、フェリーの定期便などもあって縁も深い。

451ブックスと同時期に店を始められたこともあって、『なタ書』店主の藤井佳之さんとは、イベントなどで10年ほど前から縁がある。

表紙のイラストは、店先のベンチでタバコを一服しながら本を開いている店主。いかにもな風情がよく特徴をとらえているなと思いつつ、よく見ると傍の看板には「↑2F なタ書」と書いてある。そのまま裏表紙まで続くイラストには、屋外に置かれた古いモニターや、メニューボードのような赤い案内板があり、その後ろに2階にある『なタ書』へ上がる入り口が見える。

『FULL本屋』

赤目さんが『なタ書』を見つけたのはまったくの偶然だそう。バイトの帰り、夜中の路地裏で怪しく光るお化け屋敷のような外観に驚き、ツイート。帰ってパソコンで調べ、一晩悩んだ末に予約した。

訪れた『なタ書』は、昼でも怪しさが健在。2階に上がると外国の隠れ家書店のようなオシャレ空間を感じたそう。

店主は、“水木しげる絵”の人?
店主は、“水木しげる絵”の人?

昭和レトロな家具に囲まれ、ざっくり置かれているようでいて、計算されて並べられたかのようにも見える本の配置。さぞかしオシャレな店長さんかと、登場したのは“水木しげる絵”の人・店主の藤井さん。まるで時空はおろか、次元すら狂っている風に赤目さんには見えたらしい。

漫画の後半は、不思議な店名『なタ書』の由来、店主のアダ名・キキ、そのイラスト。もともと古着屋の倉庫だという驚く歴史、そして古本屋を始めたきっかけ。予約してまで訪れるお客さんや、人生相談も請け負う古本屋の接客術。ハンドボールや、勝負勘。『なタ書』を説明すればするほど、普通の書店の枠から外れていく。

赤目さんが店を後にする時、藤井さんに見送られながら、感じた一言、「やはり、この店で一番パンチがきいてるのは店主だな」。

書店はどこの店も、大きさや立地の差こそあれ、商品構成も接客も似たようなものと感じているかもしれない。

しかし『なタ書』のように、ここにしかないと感じさせてくれる店も、まだまだ存在している。

インターネットや、従来型の書店では体験することのできない「本に出合う楽しさ」は、実際に本屋に足を運ぶことでしか得られないもの。

『FULL本屋』は、本屋に行くという体験が、実はそれぞれ唯一無二のものであることを教えてくれている。

『FULL本屋』発行者より一言

『FULL本屋』発行者より一言

私が改めて漫画にしなくても、『なタ書』は十分有名でした。メディアに取り上げられていて、一部にコアなファンを持つほどに。それでも私は暗闇の路地裏で、最初にこの店を発見した時の、なんとも言い難い興奮を、漫画で表現せずにはいられませんでした。

今月のおすすめリトルプレス

『FULL本屋』

『FULL本屋』

古本屋『なタ書』を漫画で紹介するリトルプレス。

発行者:赤目キクヤ
2017年12月発行、148×210ミリ(18ページ)、300円

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