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サスティナビリティ

HPVワクチン、打つべきベストタイミングは?

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HPVワクチン(=子宮頸がんワクチン)の接種勧奨が再開されたことを知っていますか? 10代後半から20代前半の女性を中心に接種のタイミングを逃したという人も一定数いる中で、ワクチンを打つべきか、打たないべきか、賛否の声があるのが現状です。今回は、サッコ先生こと産婦人科医の高橋幸子先生にHPVワクチンを接種するタイミングやそのメリット、国内外の現状、これから接種を受ける人たちに向けて、HPVワクチンに関する気になるあれこれをインタビューさせていただきました。

目次

記事を読む前にインプット! HPVワクチンについて

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HPV(=ヒトパピローマウイルス)とは

性的接触のある女性であれば80%以上が生涯で一度は感染するといわれているウイルスです。子宮頸がんをはじめ、肛門がんや腟がんなどのがん、尖圭コンジローマなど多くの病気の発生に関与すると言われています。

無料の積極的接種勧奨が再開

国内では、HPVワクチンの2 の定期接種が2013年に積極的接種勧奨を一時的に中止。2022年4月に積極的接種勧奨が再開されました。(※後述参照)。2022年11月時点、小学校6年から高校1年に相当する女子を対象に無料で3回の定期接種が行われており、2023年4月から9価も無料適用対象となります。

キャッチアップ接種とは

積極的接種勧奨が中止になった期間に、接種を逃した人(※年齢に制限あり)に対しては「キャッチアップ接種」ができ、公費でHPVワクチンが打てる仕組みになっています。

大学生たちの熱望により再開されたHPVワクチン接種

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フェムテックtv:国内のHPVワクチン接種の勧奨が中断され、その後「推奨」という形で再開された経緯を教えていただけますか?

高橋先生:2013年4月に定期接種という位置づけで一斉に接種する流れとなりましたが、開始してから2か月後、接種を受けた一部女子たちに、痛みやしびれなどの症状が長く続いたことで積極的接種勧奨が一旦中止となりました。それ以来、国や自治体から定期接種として「積極的な接種の勧奨」を9年間中止していましたが、希望者がいれば国内でも接種できたのです。

2017年、女子高での性教育の講演で、高校2年生とHPVワクチンの話をした際、「みんなごめんね、このワクチンが無料なのは高校1年までなの」と話したら、生徒から驚きの声が上がりました。その時「この子たちはワクチン接種のことを知っていれば、打ちたかったんだ」と強く実感しました。

2015年から、女子栄養大学の養護教諭を目指す学生と一緒に性教育の勉強会をしています。この勉強会では2020年にはHPVワクチンについて取り組みを始めており、「中学3年生が理解できるHPVワクチン」という講演の際に配布する資料を一緒に作成していました。

資料を作っている最中に、2000年生まれ(当時大学1年生)の子たちが、「1つ上の先輩はワクチンを打っているのに、2000年生まれの私たちは一人も打っていない……」ということに気づいたのです。しかもその大学生は、中学3年生のためにたくさんの情報を集め、資料を作り、学べば学ぶほど「何で自分はワクチンを打っていないんだろう……」という気持ちになったそうです。

ワクチン接種は自由診療の扱いで5万円かかり、大学生にとって高すぎる金額です。2020年2月に無料でワクチン接種できるよう、署名活動をスタートさせ、翌年に集まった署名を届けました。そして2022年4月から積極的接種勧奨を再開するということが2021年11月に決まりました。この時(2021年11月)から接種希望者は増えました。

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フェムテックtv:接種推奨の再開によって自費で受けていた人も償還払い制度はあるのでしょうか。

高橋先生:HPVワクチンの費用は、5万円です。無料でない時期にワクチン接種をした人に対し、償還払い制度を設けている市区町村もあります。国としては「償還払いをしても良い」という通達を出しているので、償還払いするかしないかは、それぞれの自治体の判断に委ねているのです。

自治体によって接種率に差がでているのはなぜ?

フェムテックtv:現在の接種状況を教えてください。

高橋先生:ワクチンの接種勧奨される前の接種者の層は、親が医療従事者の子や、子宮頸がんの細胞診の結果が芳しくなく、「我が娘に私と同じ思いをさせたくない」という思いを持った母親の子が主でした。

ワクチンの接種勧奨のお知らせの後は、定期接種を希望する人だけでなく、キャッチアップ接種を希望する人も多くなったと思います。ただ、自治体によって通知のシステムが異なっているため、接種対象者全員がHPVワクチンを打ちに来ているとは言えないのが現状です。接種勧奨をきちんとお知らせしている富山市では70%ぐらいの接種率のようですが、一方で埼玉県の場合だと接種率は10%くらいとなっています。

フェムテックtv:自治体によって格差がありますね。

HPVワクチンの接種は6つのがん予防につながる

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フェムテックtv:HPVワクチンを接種するメリットとデメリットなどネットで色々な情報が出回っているので、リアルな情報がわかりにくく感じます。サッコ先生の目線からみるメリットとデメリットを教えてください。

高橋先生:メリットは6つのがん(子宮頸がん・中咽頭がん・肛門がん・陰茎がん・外陰がん・腟がん)と尖圭コンジローマ(=性感染症)を防ぎます。ワクチンには、2価・4価・9価の3種類あります。2価・4価は65~70%、9価は90%の割合で子宮頸がんを防げるというメリットがあります。

デメリットは、筋肉痛と似た痛みや関節痛が生じることです。打った場所が赤くなったり、腫れたりもします。副反応が絶対ないとは言い切れません。

HPVワクチンを何年も積極勧奨していなかった国は日本だけ

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フェムテックtv:日本のHPVワクチン事情は、接種勧奨が取りやめになったり、再開したりと色々な展開がありました。海外のHPVワクチン事情はどのような状況なんでしょうか。

高橋先生:ポーランドは日本と同じく、ワクチンを打ったら痛みやしびれが生じた人がいたので、一時期ワクチン接種率が下がりました。国が「HPVワクチンは安全」ときちんとフォローした後、接種率が上がりました。海外では、日本のように何年もワクチンを打つのを見合わせたという事例はありません。

フェムテックtv:海外だとHPVワクチンの接種はインフルエンザと同じように扱われており、日本が特殊なんですね。

HPVウイルス予防の近道は早めのワクチン接種

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フェムテックtv:HPVワクチンが必要な理由を教えてください。

高橋先生:HPVというウイルスは、身近に存在するウイルスです。HPVウイルスは1型から300型以上の色々な種類があり、そのなかで16型と18型がハイリスクなタイプ。16型もしくは18型のウイルスが身体に居据わると5〜10年以上経ってからがんになるといわれています。

ちなみに4価と9価の6型と11型は尖圭コンジローマを予防します。

そして、性交渉経験がある女性の80%が50歳までに何らかのHPVに感染するといわれているんです。

ただ、感染したから「がん」になるのではなく、免疫力があれば多くは排除できます。1回細胞診で引っかかったけれども、2年ぐらいで正常に戻ったという話はよくあります。そして、HPVウイルスはコンドームを着けていても防げません。予防法がHPVワクチンしかないのです。

個人の行動にもよりますが、セクシャルなコンタクトを持つ若い世代の方が多く、性行為の回数や相手の人数が多くなります。つまり若い世代の方がウイルスに感染しやすいのです。HPVワクチンを接種するベストタイミングは、初めての性行為の前が最も良いといわれています。

フェムテックtv:だから「10代で接種」を謳っているのですね。

ワクチン接種は早ければ早いほど良い

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フェムテックtv:10代は勉強や受験、アルバイトで忙しくしています。なかには海外留学や、親の転勤で海外暮らしをしている子もいるので、接種のプランニングが難しいと感じます。そういう子たちの接種のタイミングはどうなんでしょうか。

高橋先生:重複になりますが、HPVワクチン接種のベストタイミングは、初めての性行為をする前です。ワクチン接種がセクシュアルデビュー後だとしても、打たないより打った方が良いでしょう。ただ、初体験が何歳になるかは予測できません。「HPVワクチンを打つ○歳まで性行為をしない」「ワクチンを打ち終わるまでしない」「半年後に性行為をするから、今のうちにワクチンを打つ」という行動を意思決定できる子は、今の日本の性教育の現状では残念ながら、ごく一部かもしれません。中学生女子の性交経験の割合は4.5%といわれていますので、無料のタイミングで早めにワクチンを打った方がいいのです。

海外の場合、14歳までに打てば2回接種で完了したり、イギリスでは1回の接種で終わりにするなどの流れになってきています。今の時点、日本は3回の接種となっているので、海外に倣って「14歳未満で2回終了」という選択を自主的にしている方は既にいます。

2・4・9価、どれを打つべき?

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高橋先生:キャッチアップ接種の人たちは、無料で打つなら2価と4価、お金を払えば9価も選べます。今、定期接種も2価と4価の2つですが、現時点(※2022年11月時点)で、有償である9価が2023年4月から無料適用になる事が決定しました。それが今、懸念点として挙がっているのです。セクシュアルデビューが近い可能性がある高校生やキャッチアップ世代の場合には4価でもいいから早く接種した方がいいですし、小学生であれば4月以降に9価を打つという選択肢もあり得ます。

大事な身体を守るためにも性別関係なくHPVワクチン接種を

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高橋先生:HPVワクチンは、子宮頸がんのほかにも、陰茎がんや肛門ガン、尖圭コンジローマを防げます。男性も接種することで、女性に媒介するリスクが減り、子宮頸がんを防げるのです。

オーストラリアでは、2013年から学齢期の男子にもHPVワクチン4価が無料接種対象となりました。4価は尖圭コンジローマも防げますが、2価だけ接種した人は尖圭コンジローマを防げません。9価は尖圭コンジローマ予防に加え、90%の確率で子宮頸がん予防ができます。やはり男女関係なく、接種することで確実に女子たちの子宮を守れます。今年高校2年になる息子は、14歳の時に9価のHPVワクチンを2回打ちました(※2022年11月現在、男子の9価のHPVワクチンは適応外であり、副反応などの症状が出た際、補償の対象外となります。なお、4価のHPVワクチンは男子にも承認されています)。

男子は9価は適応外ですが、4価は男子にも承認されています。

フェムテックtv:日本では男子の接種はあまり知られていない話ですよね。

高橋先生:ICU(国際基督教大学)の学生グループ・一般社団法人Voice Up Japanの大学生たちが、男子のHPVワクチンを無料にする署名活動をしています。この署名は厚生労働省に届ける予定です、ご関心のある方は署名に参加してみてください。

家庭環境や保護者の価値観によってワクチンを打つ打たないを決める傾向が見られます。これからHPVワクチンを打つ人たちは、できるだけ専門家とよく相談し、自分がワクチンを打ちたいと思ったタイミングで接種してほしいと思います。

フェムテックtv:ありがとうございました。

※HPVワクチンの最新情報は、厚生労働省ホームページに公開されていますので、詳細をご覧ください。

※HPVワクチンの接種条件などの情報は、各自治体で内容が異なっています。接種前にお住まいの自治体のホームページを必ずご確認ください。

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高橋幸子(たかはし・さちこ)先生
●埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター/産婦人科/医学教育センター助教。日本家族計画協会非常勤医師。彩の国思春期研究会西部支部会長。全国の小学校・中学校・高等学校にて性教育講演の傍ら、NHK『きょうの健康』NHK『ラジオ保健室』などに出演。著書に『マンガでわかる!28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)など多数。

Twitter:@sakko_t0607

フェムテックtv
株式会社ツインプラネットが運営するフェムテック情報共有サイト。《毎日をイキイキと、自分らしく過ごす》ため、《自分のカラダについての“知らなかった”をなくす》ことを目的に、女性の健康に関するコンテンツを公開しています。
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