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「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」アワード(第9回選定)受賞者決定

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「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に向け、農山漁村が有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化や所得向上に取り組んでいる優良な事例を「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定し、全国へ発信する取り組みにより、優良事例の他地域への横展開を図るとともに、地域リーダーのネットワークの強化を推進しています。第9回選定となる令和4年度は、全国から616件の応募の中からアワード受賞者が決定されました。

目次

【グランプリ】株式会社沖縄UKAMI養蚕

未来へ紡ぐ小さな村の農福連携と沖縄シルク
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事業概要
株式会社沖縄UKAMI養蚕は沖縄県国頭郡今帰仁村で、養蚕と飼料生産に廃校と荒廃農地を活用するほか、養蚕施設の整備や飼料生産のための高齢者雇用、蛹(さなぎ)と繭の選別のための農福連携など、地域の資源と人材を活用しています。
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◯今回応募したきっかけ

昨年、地方版の令和3年度「沖縄総合事務局ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選定いただいたことから、令和4年度の募集について沖縄総合事務局 農林水産部のご担当者様からご案内いただき、応募を決意しました。

応募の目的として、弊社取り組みの発信により、高齢者、女性や障がいを持つ方が活躍できる職場が農業と福祉との連携にとどまらず、さまざまな産業分野へ広がることとともに、多様な人材においては、個性を活かした社会参画と役割、居場所づくりを後押しし、福祉の拡大や共生社会の推進を図るものになればと応募しました。

◯地域の生物資源を商品化してブランド化するなかで、一番地域で未来へ紡いでいくために重視していることは?

ヒトとヒトとのコミュニケーションを一番大切にしています。
電話やメールといった、時代とともに便利なコミュニケーションツールが増えたことに加え、コロナ禍でヒトとの接触が激減したことなどもありましたが、これらがヒトとヒトとのコミュニケーションの重要性を見直す機会にもなりました。

地域を置いてきぼりにしない、地域との連携によるモノづくりのデザインには、ヒトがお互いに顔を合わせ、お互いの表情を感じ、声を聞くといったコミュニケーションにより、古臭いと言われるかもしれませんが、仲間への思いやりや目的達成に向け、助け合いの気持ちが生まれ、それらが固い絆となり地域を一つにし、地域活性化へとつながっていると考えています。

◯地域の人材活用(農福連携・高齢者雇用)と土地活用(荒廃地利用)で苦労した点、また実施してよかったエピソードがあれば教えてください

地域の人材活用(農福連携・高齢者雇用)で苦労した点は、業務処理スピードがゆっくりであることから目的とする生産力に達するまでに時間を要したことです。

耕作放棄の利活用では、土地所有者が高齢であることが多く、事業への理解を得ることが大変困難でした。また、賃借契約を結んだ経験者が非常に少ないため、土地の賃借契約をすると土地をとられてしまうという勘違いをする方や、貸してしまうと返してもらえなくなるという考えをする方もおり、賃借契約については、現在も大変苦労しております。

実施してよかったエピソードは、地域の障がい者施設のメンバーが楽しい、また「UKAMI」で就業したいと明るく話してくれることや荒れ果てた農地だった畑でキャッサバが成長し、借主の方から「畑がよみがえった、ありがとう」と声をかけていただけたことが活力となっています。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

農福連携の取り組みにより、障がいをもつ方から多くの「気づき」を得、取り組みを推進することで多様性への理解が進み、誰(障がいを持つ方、女性や高齢者等)もが活躍できる職場づくりが実現しました。この結果、組織に活力が生まれ、企業として魅力ある職場となり、人材確保の可能性が拡大しました。

また、地域にしか生息しない多様な生物に興味を持ち、生き物が持つデザインを社会に役立てる研究開発、製品づくりや持続可能な地域のつくり手を育む「学びの場」づくりの発信により、地域資源の魅力を最大限に活かす・地域資源を活用するメリットや地域資源を有効活用することで、地域活性化につなげる可能性を多くの方にお伝えできたらと思います。

「沖縄UKAMI養蚕」は、今後も一次産業の力、地域の資源および地域の方々の力を一つにし、小さな村から発信し続け、世界から注目される産業の発展を目指します。
今後とも応援よろしくお願いいたします。

【優秀賞ービジネス・イノベーション部門】伊根浦地区農泊推進地区協議会

泊食分離で舟屋群が滞在エリアへ変貌
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事業概要
伊根浦地区農泊推進地区協議会は、京都府与謝郡伊根町の地域内に230軒が立ち並ぶ舟屋を活用した宿泊施設と食事施設を整備。宿泊と食事を別施設で提供する「泊食分離」の実現によって宿泊施設の開業を促進しています。
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◯今回応募したきっかけ

「近畿農政局版ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選定いただいており、以降も継続して農泊の取り組みを実施していました。近畿農政局を通じて今回の「第9回ディスカバー農山漁村(むら)の宝」について情報を提供していただき、近畿農政局版選定後の現在の姿を皆様にお伝えしたく応募いたしました。

◯「泊食分離」で宿泊施設の開業を推進するなかでどんなことを意識されましたか?

開業そのものの支援は行政や商工会に担当していただくため、協議会としては平成30年度の「農泊推進対策事業」で整備した1棟貸しのモデル宿泊施設の運営を通じて、予約システムの導入や帳場の対応方法、一年間の収支を広く公開することで、新規開業の機運醸成に寄与してきました。

あわせて、行政による飲食店増加施策や域内交通の強化なども泊食分離での宿泊施設開業につながっていると思います。

◯伊根の地域全体で事業を推進するなかで、伊根に起こった変化があれば教えてください

ひとつは、宿泊施設開業者の増加です。協議会エリア内のみならず、町内全体でも宿泊施設の開業が増加しています。また、宿泊ではない観光関連事業者の開業も増加しており、体験コンテンツとして海上タクシーの開業、宿泊者の夜間の賑わい創出としてバーも開業しています。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

私たちは、観光地化を進めている訳ではなく、地域の魅力(漁村の生活、新鮮な魚介類、唯一無二の舟屋の滞在など)をストレートに皆様にお伝えしたいと考えています。

ウェブサイトでの周知だけではなく、体験プログラムに参加していただいたり、実際にご来訪いただき宿泊してもらったりすることで、その魅力を体感し、何度も行ってみたい!と思っていただけるとうれしいです。

【優秀賞ービジネス・イノベーション部門】株式会社四万十ドラマ

地元発着型産業づくりとSDGs への取り組み
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事業概要
株式会社四万十ドラマは、高知県高岡郡四万十町で「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに地域の6次産業化に取り組み、地域の事業者と連携し芋栽培から商品開発、販路開拓を進め「地域商社」として運営しています。
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◯今回応募したきっかけ

前からこの「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」事業は知っていましたが、ある程度我々の事業が形になるまでは応募することは控えておこうと思っていました。実はまだ我々の事業は進行形で完成形ではありません。 ただ今回農林水産省の皆さんからお声がけいただき、「ここまで来たら出した方がいいんじゃないですか」と言われたこともきっかけで、今回応募しました。

◯地域の6次産業化に取り組むなかで、いちばん意識したことを教えてください

まず基本の1次産業がないと、2次産業にも3次産業にもなりません。1次産業の底上げが大事です。我々は有利な土地ではなく、中山間地域の中でも山間地にあたります。95%が森林で5%の面積の中で我々はいろんな作物をつくるわけですが、その5%は宅地も含めた5%ですから実際はもっと少ない不利なところで事業をやっていく上で、6次産業化の見せ方は大切です。そして当然一次産業がしっかり稼げる仕組みをつくらない限り、田舎に若い人は残らないということをつくづく感じています。

だからこそ1次産業で若い人たちが稼げる仕組みをつくることを6次産業化の中でも意識してやっています。

◯地元でのSDGsの取り組みでいちばん力を入れているポイントを教えてください

我々の1次産業部門で力をいれることは、加工品に使う原料の農産物をオーガニックにシフトしていくことが1番大きな付加価値だと思います。1次産業者はオーガニックに取り組んでいただき農産物の価値を付けていただくと農産物の価値が上がります。それで利益も上がっていくと我々は考えています。それにプラスして1次産業は当然1ヘクタールあたりの収量アップで稼げるような仕組みが見えてくると思います。

2次産業の部分では地域の雇用創出です。地域に若い人たちが残っていかないと地域は成り立っていかない。それを意識して我々は工場をつくりました。100人規模の雇用の場をつくり、そこに取り巻いている一次産業者、例えばペーストをつくってくれる会社、それを売る会社など2〜300人の雇用が生まれていくと、それに関連する家族など500人規模が地域での雇用に関連付けられることになります。

3次産業の部分では我々の取り組みをしっかり「四万十ツアー」を組んで知ってもらうことです。どんな想いで事業をやっているかをしっかり伝え、取引者はそのことを理解して販売をしていただくと売り上げも違ってきます。

我々が想定してるのは10億円規模の産業をつくっていきたいと思っています。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

次の世代へつないでいくことです。次の次の次という形で100〜200年続く四万十を我々はつくっていきたいと思っています。四万十の土地の良さと風景を守り育てていき、そしてつなげていくことになるんじゃないでしょうか。

よく持続可能な社会と言いますが、我々はここでもっと具体的にやってきました。これが形になって見えてきたと思います。

【優秀賞ーコミュニティ・地産地消部門】オホーツク農山漁村活用体験型ツーリズム推進協議会

オホーツク地域産業と触れ合う新しい旅の形
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事業概要
オホーツク農山漁村活用体験型ツーリズム推進協議会は、北海道網走市内に交流拠点「Connectrip(コネクトリップ)」を国定公園内の湖畔に開設。地元のバス会社や料理人、生産者等と連携し、農漁業体験や景観、地元の食材の料理が一度に楽しめるレストランバスを運行するなど、異業種間の連携強化の後押しをしています。
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◯今回応募したきっかけ

網走市は監獄や極寒の地といった暗いイメージが多いと思いますが、実は小麦や馬鈴薯、砂糖用のてん菜など道内でも1、2を争う農業の一大生産地です。流氷が来る冷涼な気候は農薬散布が少なく、オホーツクは大規模なオーガニック農業の生産者も多いエリアです。

日照時間も多く 1400年前から北方系民族モヨロ人が暮らしたと言われるほど資源が豊富な場所とされています。農業はもちろん漁業もカニは日本一の水揚げ量を誇ります。網走国定公園内の網走湖は道内一のシジミの産地、網走川は日本一サケが遡上する川で、環境を活かした持続可能な産業をまさに実践するエリアです。

ところが・・・
コロナ前、網走市は年間160万人が訪れていた一大観光地でありながら、こうした強い1次産業に触れる場がなく、観光客は監獄を見て通過してしまう現状でした。何とかアクティビティの体験を通して網走の国定公園や雄大な田園風景、生産者の取り組むフィールドを紹介したく、観光と一次産業や歴史、食文化などさまざまな地域の魅力をConnect した新しい旅の形を紹介する窓口機能をつくろう!と民間の事業者や漁業、農業者が中心に立ち上げた団体です。

◯地元の異業種間の連携強化を後押しをする際にいちばん重視していたポイントは?

農業、漁業はこの地域の基幹産業です。病害虫の持ち込みや、事故、密猟などは最も一次産業者が懸念するポイントです。

ガイドは観光客に地域の魅力を伝えるだけでなく、こうした一次産業のフィールドでやってほしくない行為を説明し、抑制する役割も担っています。

つまり、当団体のツアーは必ずガイドが同行し、単なるアクティビティ体験ではなく、地域産業の魅力を伝え、一次産業側がやってほしくないことをしないようにする!これにつきます。

◯地元で兼業ガイドを育成する際に苦労した点や具体的なエピソードがあれば教えてください

私たちの活動拠点となる「体験交流施設 Connectrip 」がある網走国定公園の網走湖、網走川は優良な漁場であることから長い間、観光客の乗り入れを快く思わなかった点もあり、カヌーやカヤックといったアクティビティを実施するガイドは高齢のガイドがわずか1名しかいないという現状でした。

ですのでまずは我々の取り組みに賛同し、カヤックの技術を備えながら、地域のお話ができるガイドを育成する必要がありました。これには農林水産省の「農泊推進対策事業」を活用してガイド育成講座や市の歴史勉強会などを行ってきました。

カヤック、サイクリングのガイドは漁業や農業の従事者や、内装業者、ガラス職人など市内のさまざまな業種の面々が参加してくれています。

フィールドを使わせてもらうために漁業協同組合やサケマス増殖協会の方々にはたくさんの意見交換の場を設け、実際に行うカヤックツアーコースを乗艇して体験していただいたりしながら一緒にコース造成を行ってきました。ガイドの一方通行の思いにならないように、一次産業の従事者さんたちの思いと重なるようにお互いがお互いを理解するための場づくりを心掛けました。

またこのフィールドは北海道開発局の管理する河川敷地であり、国定公園であったため新しくアクティビティを実施するにあたり沢山の許可申請を行い、実績が認められ現在特区エリアとして体験型観光を行ってよい場所となっています。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

北海道開拓の歴史はわずか150年前の事です。国策として開拓した広大な大地では、農林水産業が衰えていくのではなく、自動運転のトラクターが動き、寒くて仕方ないようなイメージの気候はかえって病害虫の繁殖を防ぎ、農薬散布などを極力行わない形で機械化された大規模農業が盛んにおこなわれています。

漁業も自然資源が枯渇し始めた段階から約50年をかけて現代の持続可能な漁業の在り方を模索し、育てる漁業として取り組んできた鮭やホタテの放流事業がこの地域の水産業を支えています。こうした強い一次産業の今をもっと消費者の方々に知ってほしく、農業、漁業体験ではとっつきにくい観光客の方々にも楽しいカヤックやサイクリングといったアクティビティ体験を通して、オホーツク網走地域の空気や自然、生産地の力を知ってほしいと考えます。

生産地を応援する消費地があれば国産の生産地が守られ、持続可能な産業が行われていくのではと考え、我々はそのお手伝いができれば!と考えています。

【優秀賞ーコミュニティ・地産地消部門】瀬戸内かきがらアグリ推進協議会

瀬戸内の海とつながる、おかやまの農畜産物
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事業概要
瀬戸内かきがらアグリ推進協議会は、岡山県岡山市で漁業関係者のみならず地域としての処理課題であった瀬戸内海で水揚げされた牡蠣の殻を加工粉砕して、農畜産物の生産・飼育に活用した農業を実施しています。
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◯今回応募したきっかけ

農林水産省の中国四国農政局から定期的にメールが来ており、その中に「ディスカバー農山漁村(むら)の宝アワード」の第9回の選定がある告知を見て申込みました。昨年からいろんなところでSDGs関係のアワードに申請をして受賞していた経緯もあり、今回農業に関することだったので、ある程度の評価をいただけるんじゃないかなと思って応募しました。

◯かきがらを農畜産物に有効活用すると決めたきっかけは?

以前お米に「かきがら資材」はあまり効果が出ないと言われていました。しかし昨今土壌が酸性になり、お米に対してかきがら資材を使用をしても効果があるとなり、「かきがら資材」を土壌に巻いてできたお米をブランディングできないか考えていました。

平成28年からこの取り組みをスタートさせていて、当時はお米の減反政策がなくなる年に向け、産地間競争が非常に激しくなっていました。全国ではこしひかりを超えるお米として、新たな新品種を育成して生産拡充を進めることがトレンドになっていましたが、岡山では新品種の取り組みを一切行っていなかったなかで、「かきがら資材」を入れた製法で出来たおいしい良質の「里海米」を広めていけばブランディングになると始めたことがきっかけです。

◯かきがらを利用したSDGs促進で、地域に起こったいい影響とその広がりについて教えてください

「かきがら資材」を撒いて出来た里海米を生産及び販売すること自体が持続可能な循環型の農業になります。他にも里海米からできた里海酒や里海卵・里海野菜もやっています。その中で事業でできた収益の一部を「瀬戸内かきがらアグリ基金」に積み立て、里海再生活動に活用する取り組みを3年前からやっています。

基金ではそこまで大きな金額ではありませんが、里海という言葉の象徴的な活動として「アマモ再生活動」に自分たちも農業者として参加もし、なおかつ「アマモ再生活動」に対してその基金で支援をしています。漁協ではどうしても経費を使って「アマモ再生活動」をやっているため、そういったところに充当していただくため、アマモ再生をやっている「里海づくり研究会議」というNPO法人へ全額支援しております。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

結果的にお米の消費拡大にいちばんつなってほしいと思います。ただこの事業を通して「里海」という言葉がポイントになっていますので、里海再生活動と海と山、田んぼ等が持続可能で循環した取り組みとしてつながっていることを一番に伝えていきたいです。

「かきがら」の処理には困ってはいるんですが、「かきがら」自体は非常に有能な資材で水質を浄化することもできるし、建築剤でも漆喰や床に塗ったりすると強度が良かったり、消臭効果があったりするため、今後はいろいろな方面に「瀬戸内かきがらアグリ事業」としても進めていきたいと思っています。

【優秀賞ー個人部門】大石 亘太

地域に開かれた、200 年後も残る牧場づくり
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事業概要
大石亘太さんは、島根県奥出雲町にて、牛の放牧がつくり出す風景に憧れて牧場として省力的に山を管理し、多目的に利用できるフィールドとして整備するとともに小頭数飼育による適正な量の堆肥を土地に還元。バターづくり体験などの観光メニューの提供と地域の保育園、幼稚園及び小学校を受け入れて牧場で「牛のいる風景」を解放しています。
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◯今回応募したきっかけ

理由は2つあります。1つは地元の観光協会さんや、牧場に出入りされる大学生、遠足に来てくれる近隣の小学生など、関係する人々が増えていくなかで、喜んでくれる人たちの声、応援してくれる人たちの声に何かの形で応えたかったためです。これまでの活動のおさらいをするつもりで応募しました。

もう1つは、10年かけてやってきた牛の放牧がやっと様になってきたので、放牧の良さというのを少しでも外部に伝えるために、です。

◯200年後も残る牧場づくりをするために苦心している点、やっていて良かったと思えることを教えてください

いちばん大事にしているのは牧場の景観であり、雰囲気です。そのための技術的な肝は牛の放牧なのですが、うちは商品開発ができていないのでこれが利益に直結しないこともしばしばあります。

ですが、経営のためと放牧をやめてしまっては思い描く理想の牧場づくりを諦めてしまうことになりますので、それだけは意地でもやり通しています。結果として春や秋などの行楽シーズンには道行く人たちが足を止めるような景色が眼下に広がります。そのときに何とも言えない充足感を感じています。

◯この事業のやりがいと地元の子どもたちとの触れ合いについて教えてください

やりがいはやはり子どもたちの笑顔や笑い声です。当牧場では、牛たちが草を食んで寝そべっている放牧場の中を子どもたちと一緒に歩くこともしており、「さあ、ここから先は牛の世界ですよ」と伝えて放牧地のゲートをくぐるときの子どもたちの興奮した声がとても好きです。

印象深く覚えているのは、ある小学校の遠足で、1時間の体験時間が終わって帰る時になると、元気な男の子が前に出てきて「おれ、もう給食の牛乳絶対残さんわ!」と言ってくれたことです。こうした反応をもらうたびにとても元気になれます。

先生方もまた次の年の受け持ちの子どもたちを連れてきたいと思っていただけるようで、遠足にいらっしゃる小学校は教員の異動や口コミに合わせて年々増えていっています。

◯このプロジェクトを通して伝えたいことは?

よく、牛乳パックに書かれているような風景はまやかしであり、牛は牛舎の中で飼われているんだという言説をネット上などで見かけます。しかし、牛乳パックに描かれているような景色だって本当にあるんだということを伝えたいです。

また、この牧場づくりは今後もずっと続くのですが、そうして出来上がってきた牧場が地域の人に喜ばれ、この町出身の子どもたちが、自分の町の良いところとして思い出すようなそんな場所にしていきたいです。価値観がどう移ろっていっても、200年後も、このまちに住む人たちから、ここにこんな牧場があって良かった、ずっと残ってほしい、とそう思われるような形にしていきたいのです。

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