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特集 | SDGs入門~買い物から地球環境を考える!~

『土屋鞄製造所』取締役、SCM本部本部長・金澤将悟さんの「買い方」

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1965年創業のランドセルやかばんの老舗メーカー『土屋鞄製造所』に17年、職人として勤めた金澤将悟さん。革製品は買い求める際だけでなく、購入後の接し方も大切だと教えてくれました。

目次

買い方の3つのPOINT

革製品を持つことは、ものを育てること。植物や動物を育てるように気持ちを込めて接していく。

革製品は使ってこそ。使い込んだ履歴は、5年後、10年後の新しい革製品づくりに役立つ。

革製品にはさまざまな側面がある。なぜ革製品を持つのかを自問し、自分なりの答えを出す。

愛着を持って革製品に接し、日常生活で使い込んでいく。

革製品の材料である皮は、牛や豚など畜産業における家畜が食肉処理される過程の畜産副産物です。なので、動物や植物のように生命を宿しているわけではありませんが、時間の経過とともに革製品の表面に現れる変化は、まるで生きているかのように感じられることがあります。革製品を買う際は、「買い物をする」という行為にとどまらず、暮らしのなかに新しい命を迎え入れるような気持ちで革製品を手に取り、愛着を持って接してもらえるとうれしいです。手入れをしなければ傷みますし、経年変化の味わい(いわゆるエイジング)は、使い込み方次第で千差万別です。
ただ愛着を持つあまり、使うことをためらう方もいらっしゃいますが、革製品のよさをより感じられるのは日常的に使っていただくことだと考えています。先ほど触れたエイジングも、使うことで初めて現れるものですので、日常生活でどんどん使っていきましょう。もちろん、使い込めば革製品は傷みますし、壊れることだってあります。でもそれでいい。革製品が傷んでしまったときは、修理に出しましょう。私たちの会社もそうですが、街中には革製品の修理を受け付けてくれるお店があります。傷み、壊れて修理に出された革製品にはその製品がどのように使われたのか、また製造時の予想に対して、実際に使ってみたらどこが傷みやすいのか、壊れやすいのかなど、たくさんの情報が詰まっています。その情報をつくり手側が知ることで、5年後、10年後の新しい製品づくりに活かせます。「革製品を買い求める」とは、「買った」その瞬間だけでなく、買ったものを使い込み、育てていくことだという、これから先を見すえた視点も大切だと思います。
また、昔から環境保護や動物愛護の観点で革製品を選択する是非が問われています。特に近年はその傾向が強まっているように感じます。だからといって、すべてを代替素材にしていけばいいとは言い切れないと考えています。なぜかというと、革製品はしっかり手入れを施していけば、何十年という長い期間にわたり使い続けることができます。代替素材でつくられた製品を数年単位で買い替えるのとどちらがベターなのか、一概には言えないのではないでしょうか。
さまざまな社会問題と多様な価値観が存在する現代において、自分はどういった理由で革製品を持つのか。自分なりの答えを持ちながら革製品を買い、使っていってもらえたら、うれしいですね。
 (203694)

かなざわ・しょうご●革職人になりたい一心で、2002年、『土屋鞄製造所』に入社する。以降、約17年にわたって職人としてかばんづくりに携わり、その後は工場の設立と運営を任される。現在は、同社における製品の製造全般を管理している。
text by Takanobu Mihashi illustrations by Yuka Hashimoto
記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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