2月26日の徳島県・上勝町ゼロ・ウェイストセンターを皮切りに、全国各地のサスティナブルな地域づくりを実践するキーパーソンをゲストに迎えて全9回シリーズで実施したオンラインセミナー「環境省presents SDGsローカルツアー2021」の最終回が、3月22日に東京都の目白センター・Rスタジオにて開催されました。
「SDGs」というと、大企業の社長さんがシンボルマークのバッジを付けていたり、CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)やESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治)投資といった言葉と一緒に語られたりと、企業経営の問題と考えている方も多いのではないでしょうか。
本セミナーのメイン講師である『ソトコト』の指出一正編集長は、「これまで皆さんが取り組んでいる社会にとっていいことを、方向性を示しやすいようにSDGsという言葉で編集したもの」と言い、だから「SDGsと気負わずに、皆さんそれぞれのやり方でゆるふわに取り組んでいけば、それが結果的にローカルSDGs(=地域循環共生圏)につながる」と続けます。
指出一正編集長の挨拶とアイスブレイクも終わり、ゲストによる講演がスタート。
東京会場のゲストは、「マイパブリック」や「グランドレベル」といった独自の観点から「喫茶ランドリー」の運営、「パーソナル屋台」など数多くのまちづくりプロジェクトに関わる株式会社グランドレベル代表の田中元子さんです。
田中元子さんは最初にSDGsのロゴを見て大変感銘を受けたそう。なぜかというと、6行×3列の17ゴールを示したアイコンの18番目にあたる場所が空欄になっていて、18番目に自分なら何を入れるかと考える余白があるから。そして18番目には、まちを歩いていて人の目線上にある建物の1階(=グランドレベル)からのまちづくりという自身の考え方の根本にある「『孤独の解消と自己肯定感』を入れたい」と話します。
続いて、近隣住民の方が能動的になれる「補助線」をデザインしたという「喫茶ランドリー」がオープンしてから、店内装飾や店内でのイベント企画を店員や利用者の方が自発的に行うようになり、自分でもできるという達成感や充実感を得たり、地域の方同士の信頼関係が生まれたりという変化を紹介。
「孤独の解消と自己肯定感」といった問題が解消してはじめて、近隣の人と環境や社会について語り合える信頼関係を築くことができる、だからこそ「1階づくりは世界平和に通じる」と照れながら話す田中元子さんに、指出一正編集長も同意します。
続いて指出一正編集長が、これまで8回のセミナーに登壇した8名のゲストの各地での取り組みを振り返ります。
これまでの8会場のゲストの話を伺って、「ローカルSDGs」という考え方は日本人にぴったりで、「人が能動的に関われる関係案内所となっているか」「おしゃれな地域循環」「仲間の存在を知ると気分が和らぐ」という3つの視点が重要と再認識したとのことでした。
ここからは、関係人口の調査を行った国土交通省の田中康嗣さんを交えて、田中元子さん、指出一正編集長とのローカルの未来を考えるトークセッション。
田中康嗣さんは自己紹介に続けて全国の関係人口は1800万人超という調査結果を紹介し、「人口減少と高齢化が進む中で地域づくりを持続可能なものにするためにも、定住でも観光でもない地域との関わり方である関係人口の存在が欠かせない」と話します。
「地域づくりもSDGsも自分ごとにならないと変化が起きないという点で共通する」と田中元子さん。「自分ごとにならないのは会社や肩書、家での役割などを踏まえて振る舞いを考えなければならず、自分として過ごす時間や自分の判断で行動する機会が少ないからで、そういった視点からも働き方や暮らし方を見直す必要がある」と続けます。
それを受けて指出一正編集長は、「地域と関わる・関わらないというようなゼロ・ヒャクの議論は自分ごととして捉えられていない証拠で、どこで折り合いをつけるかチューニングすることが社会との関わり方として健全」と付け加えます。
そして「どんな未来になっているとうれしい?」という指出一正編集長の質問に、田中元子さんは「他人が存在することを祝福できる未来」、田中康嗣さんは「再チャレンジができて、多様性が認められるゆるい社会」と答えたところで終了の時間に。
最後は主催の環境省から挨拶。SDGsは「幸せになるための通過点」であって目標を達成すること自体がゴールではない、だからこそ一緒に歩いていきたいと締め括りました。
今年は新型コロナウィルス感染症を考慮して来場参加は人数を制限しての開催となりましたが、会場は少人数ならではのアットホームな雰囲気で、一方のオンラインでは全国から様々な意見や質問が飛び交い、リアルとオンラインのいいとこ取りでローカルSDGsについてじっくりと考えることができた会となりました。