広島県尾道市から愛媛県今治市まで、瀬戸内海に浮かぶ大小727の島々を結ぶのが「瀬戸内しまなみ海道」。
「瀬戸内しまなみ海道」は、日本で初めて海峡を横断できる自転車道だ。”海の上を自転車で走れること”が魅力の「空中サイクリング」スポットを目当てにやってくる外国人サイクリストも多いという。
今回は、米CNNの「世界7大サイクリングロード」にも選ばれたサイクリングの名所を駆け抜けていく。
“サイクリストの聖地” 瀬戸内しまなみ海道とは?

「瀬戸内しまなみ海道」は西瀬戸自動車道の愛称で、広島県尾道市から向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島の6つの島を経て愛媛県今治市まで全長約60kmで結ぶ架橋ルート。西瀬戸自動車道に沿ってサイクリングをするのは、各島を結ぶ橋の上のみで、島では一般道を走るため、サイクリストにとっての「瀬戸内しまなみ海道」は全長約70km。
しまなみ海道サイクリングでは1時間で進める距離の目安は約10キロと言われている。全長約70kmなので、アップダウンは想定以上にあるもののしまなみ街道ビギナーの方でも7〜8時間ほどで横断が可能な距離だ。中には、片道およそ3〜4時間で横断する強者もいるというのには驚いた。
また、しまなみ海道のルート上に13ヶ所のレンタサイクルターミナルが整備されていて、乗り捨てが自由自在。しまなみ海道を片道だけ楽しむことはもちろん、いくつかの島をじっくりとサイクリングできるなど、様々な楽しみ方が可能だ。
今回は、今治エリアから尾道エリアを駆け抜けていく。
サイクリストの道標。その名は「ブルーライン」
「しまなみ海道」はサイクリニストへのサポートも充実している。
サイクリング推奨ルートには道標となる「ブルーライン」が引かれているので、水色の線に沿って走るだけで目的地まで辿り着くことができる。
尾道や今治への残り距離も表示され、分岐には地図看板もある。初めて走る道でも安心だ。
今治エリアからのスタート地点、「来島海峡大橋」-ここから約70キロの冒険が始まる
今治方面から、しまなみ海道サイクリングで最初に渡る橋が「来島海峡大橋」。来島海峡大橋は、今治市と大島を結ぶ世界初の三連吊橋で、しまなみ海道で最大の規模を誇る。全長は約4キロ。
いよいよ「空中サイクリング」の始まりだ。
瀬戸内海の風を全身に感じながら見る、来島海峡大橋からの眺めは素晴らしい。思わず叫び声たくなるほどの開放感。
40分ほど掛け来島海峡大橋を横断。次の伯方・大島大橋を目指して一つ目の島「大島」を走る途中、尾道から今治方面へ向かうサイクリストとすれ違う。しまなみ街道のサイクリストは礼儀正しく、挨拶を交わしてくれる人も多い。
サイクリング中よく目にするのが、瀬戸内海に浮かぶ小さな島々。何やらこの島には小屋が立てられているようだ。
二つ目の橋、伯方・大島大橋を横断し、「海運と造船の島」、「伯方の塩」発祥の地として知られる「伯方島」を走る。透き通るような綺麗な海も印象的だ。
多々良大橋を渡り、目指すは国産レモン発祥の地でありアートの島「生口島」へ
スタート地点から約35km、ここまで約4時間。大三島から四つ目の島「生口島」を目指し、世界最大級の斜張橋「多々羅大橋」を横断する。国産レモン発祥の地と言われ、レモンの収穫量日本一の広島県「生口島」は見所も満載。多々羅大橋のたもと付近には「レモン谷」と呼ばれる広大なレモン畑が広がっている。
多々羅大橋を降りて沿岸を走ると見えてくるのが「瀬戸田サンセットビーチ」。真白い砂浜が約800m続く。「日本の水浴場88選」にも認定された、全国でも指折りの透明度を誇る海だ。
茜色に染まる夕暮れ時の景色が、ノスタルジックな気分にさせてくれる。沖合には「ひょうたん島」が浮かび瀬戸内海の島々と、夕日が作り出す光と影のコントラストが絶妙。
生口島ではアートも楽しめる。瀬戸田サンセットビーチから自転車を走らせること約30分。耕三寺・耕三寺博物館内にある「未来心の丘」は、船で運ばれてきたイタリア・カッラーラ産の大理石で造られた美しい庭園。
世界的な彫刻家である杭谷一東氏が手がける芸術作品は、5,000平方メートルにもおよぶ。白一色の建物と綺麗な海が広がる世界観はまるで、ギリシャ・エーゲ海の町並みのように見えた。
芸術的なアートに魅了された後はサイクリングを再開。あとは、尾道へひた走る。
生口橋を渡り、5つ目の島「因島」を走る。しまなみ街道最後の島「向島」へ続く、因島大橋と夕焼けのディナーは最高だ。
この小さな島々とサヨナラするのが、なんだか寂しくなってきたが、先を急ぐ。
尾道まで残り12キロ。約7時間走ってきた。
アップダウンが激しい道も多く、何度も挫けそうにもなった。それでもここまで走れたのは、目指すべきゴールがあるから。サイクリングも人生も同じじゃないか。
しまなみ街道の爽やかな風を感じ美しい景色を見て走りながら、ふとそんなことを思ったのだった。
ゴールへ向かうべく、僕は、一気に駆け抜けた。
世界のサイクリストの新拠点「ONOMICHI U2」
無事に尾道へ到着した後、尾道駅から自転車で約3分の「ONOMICHI U2」へ向かった。ここは、倉庫をリノベーションし、レストラン、カウンターバー、カフェ、サイクルショップ、ホテルが集約された複合施設。
施設の大半を占めるサイクリスト向けの宿泊施設「HOTEL CYCLE」は、共有スペースや客室に自転車を置くことが可能。サイクリストに人気の高いロードバイクメーカー「ジャイアント」のレンタサイクルも利用できる「ジャイアントストア尾道」も併設されている。日本人だけでなく、外国人サイクリストの利用者も多いという「世界のサイクリスト」が集まる場所だ。しまなみ街道サイクリングの拠点としてぜひ活用して欲しい。
また、「ONOMICHI U2」の一画にあるYard Cafeでは、瀬戸内海をイメージして造られた、スッキリと味わえる柑橘系のクラフトビール「しまのわビール」(600円、税抜、店舗提供価格)や、宮島の地下水を使用し、柑橘系の香りと苦みが特徴的な「宮島ビール ペールエール」(840円、税抜、店舗提供価格)を味わえる。
サイクリストの聖地で、最高の汗をかいた後に、至福の一杯を味わってみてはいかがだろうか。