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仕事・働き方

連載 | フェムコト | 26

自身の壮絶なつわり体験から健康に必要なソリューションを生み出す|株式会社TRULY 代表取締役 CEO・二宮未摩子さん

フェムテックtv編集部

フェムテックtv編集部

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地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。

今回対談させていただいたのは、株式会社TRULYで代表取締役CEOを務める二宮未摩子さん。更年期やフェムテックなどオトナの男女に寄り添うオンラインメディア「TRULY」などを運営しています。前職の広告会社時代に妊娠を経験し、その際ひどいつわりに悩まされることに。その原体験が今の事業に繋がっていると言います。当時のことを振り返っていただきながら、TRULYへの想いなどお話を伺いました。

ー二宮さんの3つのルールー

RULE1.働いている姿を子供に見せる
RULE2.朝食は毎日同じメニュー
RULE3.早寝早起きで睡眠時間を確保する

〈Profile〉
株式会社TRULY 代表取締役 CEO 二宮未摩子さん
1982年生まれ。2007年、新卒で博報堂入社。CMやグラフィックなどの制作営業を行う。入社2年目に結婚、3年目で妊娠を経験。復帰後は美容や健康系クライアントの商品開発に特化したプロジェクトを発足するなど、新規事業に携わる。その後、社内ベンチャー企画でTRULYを起案し、2019年株式会社TRULYを設立。2022年に博報堂から独立する。中学1年生の男子の母親としての顔も持つ。https://www.truly-japan.co.jp

目次

第二子の妊娠を後ろ向きにさせたのは“ひどいつわり”だった

フェムテックtv:元々二宮さんは新卒で博報堂に入社し、社会人としての経験を積まれたんですよね。

二宮さん:そうですね。ただ入社して2年目で社内結婚して3年目には妊娠・出産があったので、一旦そこで営業のキャリアは中断されました。妊娠中はひどいつわりもあったので、産休に入る前から仕事はできなくなってしまいましたね。

フェムテックtv:つわりの時期は「パートナーともギクシャクした」とのことで、心身ともに大変な状況だったかと思います。

二宮さん:私自身“男性はわからないだろう”と決めつけていた部分があって、自分がどういう状況なのかを伝える努力ができていませんでした。“これは私の問題だ”とひとりで背負ってしまっていた気がします。彼は彼で理解したくても理解し切れない。苦しそうだけど何もしてあげられないと思っていたようです。こんなにツラいなら2人目は当然考えられない。妊娠に対して後ろ向きになってしまいました。

フェムテックtv:27歳で出産、29歳で職場復帰を果たされました。産前と産後では働き方は変わったでしょうか?

二宮さん:産前は徹夜することもありましたが、子供が生まれてからはそうはいきませんよね。営業職は難しいなと感じていたので、社内のマネジメント部門に復帰後、新規事業開発のクリエイティブチームで再スタートを切りました。そこで新規事業のコンペティションに参加することに。コンペのテーマは「シニア市場の事業開発」。それまで美容や健康関連のクライアントの開発業務を担当していたこともあり、現在のTRULYの原型にもなるアイディアを考案しました。

「2019年のTRULY起案時、元同期の創業メンバーとアメリカ・サンフランシスコの投資家に会いに行きました」

フェムテックtv:そのアイディアが生まれた原体験はどこからきたのでしょうか?

二宮さん:やはりつわりの体験は非常に大きかったです。それまで PMS(月経前症候群)などもひどかったのですが、なんとなく日々の忙しさもあってやり過ごしてきました。ただ、つわりはそうはいかない。真正面から向き合わなくてはいけません。私自身が知識もないし計画的な妊娠・出産ではなかったことも大きいです。心の準備もリテラシーも足りないことで、周囲の理解も得られずひとり孤独に苦しみました。決して、誰が悪いわけでもない。ただそういった経験がずっと自分の中では課題感として残っていたんです。

同じような悩みを持っている人は他にもいるはず。そういった悩みをわかり合える社会であってもいいのに、そのことを隠すのはおかしい。また次に自分自身が大きな体の変化を迎えるときは、更年期かなという想いがありました。いざ調べてみると、更年期にまつわるサービスやソリューションがまだ世の中に全然ないことにも気づいたんです。これは誰もやっていないからこそ必要で、やらなくてはいけないテーマだなと。当初はもう少し広い範囲での心と体の閉ざされた悩みを想定していましたが、徐々に更年期に絞っていきました。

フェムテックtv:「PMSがひどかった」とのことですが、具体的にはどのような症状がありましたか?

二宮さん:生理前は落ち込みや不安が強く、心が不安定になることが多かったです。体の面でいうと、貧血でクラクラすることが。それが出血によるものなのか、自律神経の乱れによるものなのかはわかりませんでした。それから体温コントロールが上手くできなくなる症状も出ていましたね。

フェムテックtv:それらに対して何か対策はされていましたか?

二宮さん:私が入社した15年くらい前は、本当に徹夜もザラの時代。3徹したら指も震えてくる。体を酷使してきました。それもあって、体の不調が生理によるものなのか徹夜によるものなのかがなかなかわからなかったというのがあります。それもあり、特に何もしていませんでした。まともな生活になって、純粋に自分のPMSを知ったということはあるかもしれません。

フェムテックtv:ご自身の体験を振り返ってみて、今だから言えることはありますか?

二宮さん:女性ホルモンのことや体のメカニズムを少しでも理解していれば、“自分に起こっていることは別におかしいことじゃない”とつわりに関しては整理ができていたと思います。当時はネットで情報を得ることが決して盛んではない時代。今ならアプリなどネット上で相談し合える人もいますよね。

それからつわりをきっかけに、パートナーとはお互い理解できない部分みたいなものが顕在化した気がします。あらゆることの相互理解がなかなか上手く持てなくなりました。自分の体のことを知っていたら、パートナーシップもスムーズに進んだかもしれませんね。

フェムテックtv:女性特有の健康課題は、男性はなかなか理解できないこともあるかと思います。理解を得るために必要なことは、どのようなことだと考えていますか?

二宮さん:“なんとなくツラい”ではなくロジカルに説明する必要があると思います。女性の体の仕組みから話すと、男性は理解しやすい傾向にある。お互い理解し合うことが大事だと思うので「私は体がツラいから理解して」ではなく、男性にだって悩みはあることを踏まえた上で相手のことをわかろうとする姿勢は大事ですよね。

フェムテックtv:現在中学生の息子さんを育てている二宮さんですが、子育てと仕事の両立はどのようにされていますか?

二宮さん:TRULYは、2019年11月に創業、2020年の1月から事業開発をスタート。博報堂からの出向と、ドタバタとしていた中でコロナ禍に突入し緊急事態宣言となりました。起業とコロナ禍が重なったことで漠然とした不安を抱えたのと同時に、オンラインで仕事ができたことで乗り切れたとも思います。母親が働いている姿を息子に直接見せて伝えることができたのは、子育てにもいい影響があったんじゃないかなと。

私から更年期という言葉も嫌というほど聞かされているので、彼なりに理解はしているみたいです。会社を成長させていくためにはお金が必要で、そのために資金調達をすることなどもしっかり伝えてきました。資金調達をした2年前の私の誕生日には、息子から“ママが信頼されていてすごいなと思いました。がんばって会社を大きくしてください”という手紙を贈ってくれて、うれしかったですね。

「今年の誕生日のお祝いは家族でしゃぶしゃぶ。2年前に息子からもらった手紙は今でも宝物です」

フェムテックtv:誰よりも近くで見てきた家族からの言葉は、うれしいですよね。ちなみに息子さんへの性教育はされていますか?

二宮さん:女性の体にまつわる本を見える場所に置いたり、あえて生理用ナプキンは隠さなかったりということはしていて、自然に学んでもらいたいなと思っていますが、もう少し進んだ性教育もする必要があるなと感じています。そこは私自身、どうしていくか課題ですね。

心身にまつわるリアルな課題や悩みから“本当”だけを伝える

フェムテックtv:「TRULY」を運営する上で、気をつけていることや課題はありますか?

二宮さん:正直メディアに関しては、まだまだ課題だらけ。メディア戦略があまりないまま記事をつくって情報発信するだけにとどまっていたので、まさに今どうビジネスとして展開していくかを検討しているところですね。コンテンツに関しては「TRULY」という名前に込めた“真実”の情報をお届けすること、医療監修という絶対的なルールにこだわっています。

教科書的なコンテンツだけなら製薬会社やクリニックのポータルサイトでも掲載されているので十分。私たちは「TRULY」の会員さんのリアルな課題や悩みから、ネット検索しても出てこないような情報をお届けできたらと思っています。

フェムテックtv:会員獲得はどのように軌道に乗せられましたか?

二宮さん:現在コンテンツのひとつに“セルフチェック”があるのですが、質問に答えていき結果を見るために会員登録するというもの。特にプッシュ型ではないので、自然流入で記事を読むためサイトに訪れた方がセルフチェックを行い、登録する。それ以外での登録シーンはないですね。

フェムテックtv:セルフチェックは“更年期度”や“セックスのお悩み度”など項目に分かれていて、“はい”か“いいえ”で答えられるのがいいですね。今後のフェムテック市場というのは、どうご覧になっていますか?

二宮さん:世界的には成長市場だと思いますが、思ったより成長が遅いと感じています。フェムケアの市場は伸びていますが、フェムテックはそこまで広がっていないイメージ。海外と比べて日本は保険が充実しているので、医療でカバーできることは多いですよね。吸水ショーツや月経カップなど第三の生理用品アイテムが増えていくことは、QOL(生活の質)を高めていくという意味では時代にフィットしていると思います。ただフェムテックのニーズがそこまであるかといえば、まだまだな気もしますね。

「仕事風景。リモートワークもしますが、打ち合わせで移動も多いです」

食事や睡眠に気を使いミーハーなことはしない

フェムテックtv:二宮さんの1日のスケジュールをお聞かせください。

二宮さん:朝は6時頃に起きて、軽く洗顔した後に蒸しタオルを3回くらい繰り返してパックします。8〜9時頃に朝ご飯として、納豆、鮭、生卵、セロリや生姜と煮込んだ鶏の手羽スープをいただきます。朝にしっかり栄養を摂ることを意識しているので、もう長いことメニューは変わっていません。起きてから朝食までの間は、ひたすら白湯を飲んでいますね。それから9時頃からミーティング。最近は自宅作業が多いですが、オフィスに出社するときは自転車移動です。18時頃まで仕事をしたら犬の散歩に行き、夜ご飯はパソコンを触りながら軽くつまむ程度。23時には眠りたい気持ちです。

「アスタキサンチンが多く含まれ栄養素が豊富な鮭は朝食の定番です」

食事や睡眠と当たり前のことを意識。20年続けているホットヨガで汗をかくことが、メンタルケアになっていると感じます。ミーハーにいろいろ試すことはなくなりました。一時期、炭水化物抜きの食事が流行りましたよね。それを実践していたことがあるんですが、体力がなくなり肌も乾燥するように。自分には合わないと実感しました。炭水化物を再び摂るようになったことで、眠りの質は向上したと感じています。

フェムテックtv:規則正しい生活を意識されていますが、健康面や美容面でプラスαのケアはされていますか?

二宮さん:出産のときに会陰切開をしてそれがすごく痛くて。そこで初めて自分の腟を鏡で見るきっかけにもなりました。そこからデリケートゾーンのケアは意識してするように。脱毛や専用アイテムを使うようになりました。

フェムテックtv:お気に入りのアイテムはありますか?

二宮さん:いろいろ試しましたが、トレスマリアのミルクがすごく好きで愛用しています。さらっとしたテクスチャーで香りもいいんですよ。それからfuwariのオイルで会陰マッサージをしています。

「愛用のフェムケア商品。アイムラフロリアのデリケートボディクリームとデリケートボディウォッシュも愛用しています」

フェムテックtv:日々ご自身の体と向き合う二宮さんですが、ご自身の未来のライフプランとはどう向き合っていますか?

二宮さん:仕事中心でしんどいことはたくさんありますが、仕事というよりも、TRULYと子供のことでいっぱいいっぱいな状態です。夢中になれることがあるという意味では、幸せなことですよね。ゆくゆくは海外で生活したいなど漠然とした夢はありますが、今はとにかく走り切る。そして子供が無事に自立することに集中していきたいですね。

フェムテックtv:仕事も家庭も全力なのは素敵です! では最後に、二宮さんにとってのウェルビーイングな社会とは?

二宮さん:社会と考えると壮大になってしまうと思うので、まずは自分が心身ともに健康と感じられる状態であること。風邪を引いたとき、健康のありがたみを実感しますよね。健康だと人にもやさしくなれるし、それが会社単位から社会単位へと広がっていくはず。またそのために必要なソリューションや支援が世の中にもっと充実して選択肢がたくさん増えていくことで、個人の幸せがより実現しやすくなると思います。その意識を個人個人がもっと持って自分と向き合っていく。それが一番のウェルビーイングだと思います。

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