100年に一度花を咲かせるという意味から、センチュリープラントという別名を持つリュウゼツランだが、“100年に一度”は大げさだ。「日本では30~50年くらいで開花する」と園芸研究家の小川恭弘さんは言う。
南房総で、空高く伸びたリュウゼツランの花を今年はよく目にした。「どうして今年はこんなに開花しているのだろう?」という疑問と興味から、園芸研究家や園芸店店主、リュウゼツランを育てている人たちに話を聞いて、植物について素人のライターがリュウゼツランについてまとめてみた。これを読めば、あなたもリュウゼツランを育てられるかも?
リュウゼツランてどんな植物?
学名:Agave americana
和名:アオノリュウゼツラン
(リュウゼツランは斑入りの変種 A.americana var.marginataを指す)
原産:メキシコ、テキサス州
※リュウゼツラン属で300種類ぐらいあるというが、この記事ではリュウゼツラン属を差す場合は“アガベ”と記載し、和名と区別している
アオノリュウゼツランが好む場所は、どんな場所だろうか?
小川さん「日当たりと排水のよい場所で、斜面が理想的です。南房総地域の海沿いは砂質土壌で排水がよくて気候も温暖なので、栽培には適しています」
アオノリュウゼツランが3本同時に開花! 当時新聞にも取りあげられた家
Iさん「最初は、大きな株を植えてから5年後くらいに同時に3本開花して、その後も3年おきくらいに次々と2、3本ずつ数回咲いて、この夏までに合計8本は咲いたと思います。最初に咲いたときは、何十年に一度しか咲かない珍しい花が、しかも同時に3本咲いたということで、房日新聞や読売新聞の取材を受けました」
松の木を連想させる一本の木のようなアオノリュウゼツランの花だが、どんな風に花を咲かせていったのだろうか?
Iさん「急に中心から真っすぐに太い緑色の芯のようなものが出てきたと思ったら、それがどんどんニョキニョキと真っすぐ空に向けて高く伸びていき、そこから木の枝のような形になって、その先端にぼこぼこと丸い突起物が出てきて、岡本太郎の太陽の塔のような雰囲気でした。そしてその突起物から細かい刷毛のような花がたくさん咲きました。でも、言われなければそれが“花”とはわからないほど地味な見た目と色で、花というより木の枝か、小さいほうきのようでした」
Iさん「枯れた株の周りには小さなベビー株がポコポコといくつも発生していて、開花して朽ち果てていった大きな株は、ちゃんと子孫を残して、その長い一生を終えたことがわかりました。花は地味でしたが、この一連の現象は生命最後の力強いラストスパートを見せてもらった気がして、感動しました」
特に手入れはしていないが、アオノリュウゼツランの周りにできる子株をせっせと移植しているそうだ。
園芸研究家に聞く、地植えで育てるアオノリュウゼツランの増やし方とお手入れ方法
鴨川市でリュウゼツランを育てる愛好家
庭がなくても育てられる? 園芸店店主が教える、鉢植えリュウゼツランの育て方
岡田さん「リュウゼツランは寒さに強く、日なたが大好きですごくタフ。関東より南なら、外のベランダに置いた方が室内よりもきれいに作れます。土は水はけがいい土で、多肉植物用がお勧め。間違って野菜や花用でやらないように」
ハウスで自ら育てた植物を多く扱い、仕入れるものは必ず自分の目で見て仕入れているという岡田さんは、植物園に勤めていたご主人と2人で店を運営している。鉢植えでアガベを開花させた経験もあるので、興味のある人は直接訪れて相談してみてほしい。
Binowee所在地:千葉県南房総市千倉町白子2616-1
web:http://unknownplants.blogspot.com/
取材協力:小川恭弘さん、岡田美穂さん、七世さん、しほさん、Iさん(順不同)
おがわやすひろ●園芸研究家/1968年、千葉県生まれ。東京農業大学卒業。千葉県館山市の植物園に勤務したあと、フリーランスで熱帯果樹の栽培などに携わる。NHK趣味の園芸でも活躍。https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-81