「アーバン百姓」という肩書で、建築からカフェの運営、社会実験の企画まで「まち」を軸に幅広い活動をしている追沼翼さん。建物のまわりにまで視野を広げている追沼さんに影響を与えた5冊からは、より柔軟で楽しい建築やまちづくりの在り方が見えてくる。
追沼 翼さんが選んだ、地域を編集する本5冊
大学時代に始めた活動を法人化し、「建築を手段に、まちの中で何ができるか」をテーマに、建築設計や企画・運営をしています。今手がけている事業は、ビルのリノベーションやカフェの運営、国土交通省が進める「まちなかウォーカブル推進事業」に合わせた企画に、山形の暮らし観光メディアの運営など。まちづくりを軸に多様な仕事をしながらまちの文化を耕す、「アーバン百姓」という肩書で活動しています。そんな僕の視点や考え方を養った本を紹介します。
現在の活動のきっかけになったのは、ゼミの指導教授だった馬場正尊さんとその著書『都市をリノベーション』との出合いでした。建築の領域を再定義する事例がたくさん出ていて、まちと関わることの楽しさを感じました。さらに後半では、馬場さんがアメリカで体感したことを、東京で再現していて「真似てもいいんだ」「これならできそう!」と思えました。その後、授業の課題で出た「妄想でリノベーションを考える」で考えた『郁文堂書店』の妄想を実現したくなり、オーナーにかけ合い、クラウドファンディングを募って書店を生まれ変わらせました。勇気の源になった本です。
「もっと真剣にまちづくりに関わりたい」という想いに応えてくれたのは、都市計画の専門家、ヤン・ゲールさんが書いた『建物のあいだのアクティビティ』です。建物の間にある大通りや広場、店の前などで人々の活動を誘発する方法が、写真とともに具体的に書かれています。まちづくりに関わっている人はもちろん、お店をやっている人にもおすすめです。僕自身は、この本を参考にしながら、山形市のシネマ通りでマルシェを企画、開催しています。
『ポートランド ─世界で一番住みたい街をつくる』は、アメリカ・ポートランド市開発局で都市計画の仕事をしていた山崎満広さんの本。中からの視点で、町並み、組織、スキームを紹介しているのが魅力です。『建物のあいだのアクティビティ』で学んだ、建物の1階を公共空間にし、上の階をオフィスや住宅などのプライベート空間にする手法が、ポートランドでは当たり前で驚きました。こうすることで人々の交流が活発になり、多様な人が行きかうようになります。僕らがリノベーションを手がけたビルでも同じ手法を使っています。暮らすことの楽しさを発見できる本なので、ぜひ、読みながら「どんな暮らしがしたいか」を想像してみてください。
▶ アーバン百姓/『OF THE BOX inc.』代表|追沼 翼さんの選書 1〜2
▶ アーバン百姓/『OF THE BOX inc.』代表|追沼 翼さんの選書 3〜5