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自分を見つめなおし、変わる。大崎電気工業が新しいパーパスとともに見つめる未来 

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全国の家庭に広く設置されている「スマートメーター(電力量計)」の製造を手がける『大崎電気工業株式会社』は先日、2024年度から3か年の中期経営計画を策定するとともに、企業理念を新たにパーパスというかたちで発表しました。なぜ今、新たなパーパスを打ち出して『大崎電気工業株式会社』という企業は変わろうとしているのか。これまでも自社工場のGX化や、実業団ハンドボール選手の柔軟な働き方をサポートするなど、社会や暮らしに貢献する取り組みを続けてきた同社の代表取締役を務める渡辺光康さんにお話をうかがいました。 

目次

社会ニーズの変化、その先に見える新しい時代 

ソトコト 『大崎電気工業株式会社(以下、大崎電気)』は5月9日に中期経営計画を発表するとともに、企業理念を「見えないものを見える化し、社会に新たな価値を生み出す」に改定し、パーパスとして制定しました。今、このパーパスを制定するに至った経緯をお話しいただけますか。 

渡辺光康さん(以下、渡辺) 私たちの主力製品である電力量計は、もともとはその名の通り、家庭で使用した電力量を月1回計測するだけのものでした。目立つ場所にあるわけでもなく、住宅に設置されていてもお住まいの方は基本的に見ることはありませんでした。ですが、通信機能を持った「スマートメーター」が、ほぼ全世帯・全事業所に導入されたことで、電力の使用状況をタイムリーかつリモートで把握できるようになりました。  

さらに、スマートメーターは法律で10年間での交換が義務付けられており、2026年からは第2世代スマートメーターの導入が予定されています。この第2世代スマートメーターは、今まで以上にみなさんの生活にも大きく関わるものになっていきます。 

例えば、スマートメーターの通信機能を活用することで電力の取引が変わっていきます。電力の需要が多く不足するときには料金を高く、需要が少なく余るときには料金を安くするといった価格設定がより自由にできるようになります。一般の方も、自分の生活スタイルに合ったやり方で環境にやさしい電気の使い方をしたいと考えたときに、柔軟にプランを選べる時代になりつつあるのです。 

また固定電話が減っている現在では、スマートメーターは住宅に直結している唯一の通信インフラとしての役割も期待されています。災害時などに停電の状況を把握して、いち早く対策につなげるなど、第2世代スマートメーターは単に電力量を計測する以上の役割を果たすようになっていきます。 

こういった新しい時代に大崎電気が追いつくのではなく、率先して先に行かなくてはならない。これが、今、大崎電気が変わらなくてはいけないと考えている一番の理由です。 

そして電気の使い方の変化を見据えて、新しいサービスを生み出そうとしている企業も数多くあります。大崎電気も、これまでお付き合いがなかった企業とパートナーシップを組む機会が今後さらに増えていくでしょう。そのためにも、より広い視野を持った会社へと変わっていくことが必要だと思います。 

電気の使い方が変わり、それによって新しい生活スタイルが生まれると語る渡辺氏。

ソトコト  「変わらなくてはいけない」という思いから、さらに一歩踏み込んで企業理念を見直し、パーパスとして制定したのはなぜでしょうか。 

渡辺 実は最初は、新しい言葉をつくって掲げても会社や従業員は変わらないだろうと思っていました。その考えが変わったのは、ソニーグループ株式会社さん(以下、ソニー)の取り組みを知ってからです。2019年にパーパスを制定した後、グループの事業の柱である金融事業を含め、さまざまな変革を行っています。パーパスを契機に、ここまでダイナミックに会社を変えていける、変えていかなくてはならないんだという気付きがありました。大崎電気で言えばスマートメーターと、スマートメーターを中心とした電気の有効利用を実現するサービス(エネルギーマネジメント)がメインの事業です。これは今後も変わりませんが、エネルギーを計ることだけが大崎電気の仕事なのか、一度見直してみようと考えたのです。 

ソニーの社長が自ら率先して世界中の従業員にインタビューをしたという話も大いに参考にしました。私も数か月かけて、全体の2割ほどの社員から話を聞くことができました。少人数で車座になって、言いたいことを好きなように言ってもらいやすい形で話をしたつもりです。他にも全社員を対象とするアンケートやアイデア募集などいろいろな形で社員の意見を聞きながらまとめることができました。 

その中でひとつ大きな決断だったと思うのは、以前の企業理念には入っていた「エネルギー」という言葉を、新しいパーパスには入れなかったことです。大崎電気は確かにエネルギー関係の仕事をしているけれど、エネルギーそのものをつくったり売ったりしているわけではないから、ということと、エネルギー関係の製品・サービスだけではないところにも挑戦して変わっていくんだという方向性を明確にするために決めました。 

スマートメーターが大崎電気の主力事業であることは、言わば当たり前のことで、それをパーパスにしても「また同じことを言っているな」と受け止められてしまいます。どう変わっていくか、ということに焦点を当てたのが、このパーパスです。

挑戦、迅速、革新、そして社会貢献。従来の強みを生かすための「価値観」

ソトコト 今回、パーパスとともに「挑戦」「迅速」「革新」「社会貢献」という、4つの価値観が示されています。この言葉を選んだ理由をお聞かせください。  

渡辺 「大崎電気がこれまで持っていた価値観」と「これからの大崎電気に必要な価値観」を明確化し、9つほどの価値観が挙がってきました。その中から絞り込んだのがこの4つの価値観です。 

この4つの言葉は、「社会貢献」を除いていずれも「今までの大崎電気に足りていないもの」なんです。誤解されたくないのですが、これらが無いということが必ずしも悪いわけではありません。言葉には表と裏、両方の意味があって「挑戦」や「革新」の裏は「安定」や「しっかり」ですし、「迅速」の反対には「丁寧」があります。「安定」、「しっかり」、「丁寧」、これらはいずれもこれまでの大崎電気を支えてきてくれた価値観でもあります。  

これまでと反対にある価値観を意識することで、従来の大崎電気の強みをより生かすことができると考えて選びました。 

新しい4つの価値観の陰には、これまでの大崎電気を支えてきた価値観が息づいていると言う。 

パーパス策定にかけた1年。変わったこと、そして変わろうとしていること

ソトコト 大崎電気はこれまで約1年の時間をかけてパーパスと価値観の策定を進めてきました。そのなかで実際に会社が変わったところ、これから変わろうとしていることなどについてお話しいただけますか。 

渡辺  まさにこの6月末から、約20年ぶりに会社の組織を大きく変えました。スマートメーターをはじめとする電力会社向け製品の開発・生産・営業までを担うグリッドシステム事業部と、社会の課題を解決する新たな事業を生み出し推進するソリューション事業部の2事業部制に再編しました。事業部を大きくまとめることで、社員の一人ひとりがそれぞれのテーマに沿ってより自由に動いてもらえるようになり、社内に新しい流れが生まれると思っています。そして、今回のパーパスの下で会社が変わりつつあるなと社員に実感してもらうことが、より大きな変化のスタートになることを期待しています。  

さらに私もその流れに加わって、多くの社員と忌憚のないやり取りをしたいと考えています。これからは、社員のちょっとしたアイデアが私まで届くような新しい仕組みもつくれたらと。1日100件、何らかのアイデアが寄せられるような状態が理想ですね。そのくらいあっても、私もしっかり目を通すので、入社2年目でも20年目でも関係なくどんどん声を聞かせてほしいです。 

パーパス策定前に行った社員との対話の機会も続けていきます。車座になって話をする場だけではなく、他の役員も交えて事業のテーマを聞いたり、時には食事をしながら気軽に話をしたり。いろいろな仕掛けをして、大崎電気の存在価値をもっと高めるためにできることは何か、活発に議論していきたいと考えています。 

パーパスを制定はしましたが、これが実際に社員に受け入れられて、みんなが「これでいこう」と一丸になるためには、これからが勝負になります。まずは、パーパスができて会社が変わりつつあるなと感じてもらうことがスタートです。そして理解し受け入れてくれる社員、さらには存在価値を高めるために行動する社員が増えていくことで、このパーパスが本物になっていくのだと思います。 

大崎電気が変わるのはこれからであり、色々な仕掛けをしていきたいと渡辺氏は話す。 

暮らしを支え、社会と伴走し、ときにリードするように進む大崎電気へ

ソトコト 最後になりますが、あらためて今回のパーパスに込めた想いについて、社員のみなさんやお客様・株主といったステークホルダーの方々、そして日々、電気を使っている読者のみなさんに向けてメッセージをいただけますか。  

渡辺 振り返ってみると、大崎電気は10年ほど前までは海外展開をほとんどしていませんでしたが、現在は海外売上比率が約40%になっています。これも大きな変化なのですが、海外も国内と同じくスマートメーターの事業をしているので、もともとあった柱が太くなったと言えると思います。 

これからは、もともとある強い柱に加えて、もうひとつ新しい柱を建てることに取り組んでいきます。 

社会貢献というと大それたことに聞こえますが、スマートメーターと同じように、生活の中の便利なものの裏に実は大崎電気がいる、というようなものをつくっていくということです。2018年から展開しているスマートロック「OPELO」もそうで、生活していれば必ず家から出かけて戻ってくる、という行動をします。その行動の過程に「OPELO」があることで、生活をもっと便利にできると考えています。 

1軒にひとつあるスマートメーターだけではなく、1軒にひとつ以上ある大崎電気の製品・サービスをつくっていくこと。たとえ直接サービスを提供するのは別の会社だとしても、実際にそのシステムを支えているのは大崎電気だというものをつくることが、私たちが目指しているところです。 

そんな事業をもうひとつつくって、スマートメーターと同じように圧倒的なシェアを持つことができたら、大崎電気は本当に強くなれるはずです。 

社内では、そのためにいろいろな仕掛けを始めたところなので、社員みんなでその方向を向いて企業の存在価値を高めていきたいと考えています。 

そしてステークホルダーの皆さんにも、大崎電気はスマートメーターだけの会社ではないんだねと早く言っていただけるようになりたいと思います。 

スマートメーターに続く事業の柱をつくることで、社会貢献できる余地は大きいと展望を話す渡辺氏。

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