福島県郡山市逢瀬町(おうせまち)の「田舎体験」に参加したことがきっかけで、継続的に通う関係人口となり、現在は、逢瀬町で関係人口を受け入れる側として従事している中潟亮平さん。これから地域に入り、地域の人と外の人をつなぐ活動をするうえでヒントとなる本を選んでいただきました。
選者 category:地域体験
卒業と同時に逢瀬町に移住し、もうすぐ6年になります。今は、『郡山ふるさと田舎体験協議会』や『逢瀬いなか体験交流協議会』が実施する農村体験のコーディネーターとして関係人口をサポートしたり、『おおせのとおり』の屋号で町を元気にする仕事に携わったりしています。
地域で仕事をする上で肝心なのは、人とのつき合い方。そこで読んだのが、『人脈なんてクソだ。』です。人脈はいらないというのではなく、人脈を損得でしか見ないビジネスパーソンがダメだと言っていて、人とつながろうとするときに大切にすべきことが強い言葉で書かれています。
たとえば、「気を遣って『奇襲』せよ」という項では、気遣いとはへりくだることではなく、相手の気持ちを想像しながら、関係性をうまく築くことだと書かれています。私は「逢瀬町歴」がまだ浅いので、住民との交渉事のときは常に下手から、相手の機嫌を損ねないように話していましたが、気遣いとはそういうことではないと気付かされました。ほかにも、仕事との向き合い方など、人と上手につき合いながら仕事や生活するための指南書として役立てています。これから地域に入り活動していく人が町との向き合い方を学ぶのに、適した一冊です。
『人をつなげる観光戦略』は、一過性の観光ではなく、「着地型観光」について述べられている本です。逢瀬町の大きな魅力は「人」ですから、地域のおじさん、おばさんに惚れてもらうような農村体験の企画を考えています。きっかけは観光であっても、農村体験で地域の人に魅力を感じ、その後も2回、3回と繰り返し訪れ、地域の人と楽しく交流を重ね関係を育んでいく人も大勢います。タイトルにある「人をつなげる」という言葉はそういうことです。関係人口が生まれるような観光の形をつくり、それを継続させていく。そのためには人材育成も重要だといった理論と実践が書かれています。観光まちづくりのファシリテーターなど、地域の人と外の人をつなぐ仕事をする人におすすめしたい一冊です。
─人を幸せにするお金のあり方
岩坂健志著、唐木宏一著、白桃書房刊
─10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリングほか著、上杉周作訳、関 美和訳、日経BP刊
政治学
苅部 直著、岩波書店刊
大手広告代理店に勤めていた著者の経験に基づいた、これからの時代の働き方や会社のあり方などに関する持論が書かれています。「何か自分でやってみたい」と思っている若い人たちの背中を押す熱い言葉にあふれています。
人をつなげる観光戦略─人づくり・地域づくりの理論と実践/橋本和也編、ナカニシヤ出版刊
一過性の観光ではなく、地域の魅力を発掘し、それを訪れる人に体験してもらう着地型の観光に必要となる人材育成や地域づくりについて書かれています。逢瀬町に来る人と地域の人をつなぐ観光のあり方について考えさせられました。