齋藤直巳さんが選ぶ「地図×ローカルデザインのアイデア本5冊」

特集 | 地域をつくるローカルデザイン集 | 齋藤直巳さんが選ぶ「地図×ローカルデザインのアイデア本5冊」

2022.05.09

目的地にきちんとたどり着け、しかも美しい地図は意外に少ない。地図専門のデザイナーとして数多くのさまざまな地図を作ってきた齋藤直己さんが、地図作りのポイントに関わる本を紹介する。

齋藤直巳さんが選ぶ、地図×ローカルデザインのアイデア本5冊

(左から)1. インフォグラフィックス ─情報をデザインする視点と表現 / 2. 恐るべきさぬきうどん ─麺地創造の巻
(左から)3. 魔法をかける編集 / 4. 河童が覗いたインド / 5. 世界の終りと ハードボイルド・ワンダーランド(上・下)

大学卒業後に入社したデザイン事務所で、地図のデザインを任されたのが、私が地図専門のデザイナーとして仕事をしていくきっかけでした。美術系の大学を出ているわけでもなく、デザインの勉強をしていたわけでもなかったので、仕事を通してさまざまなことを覚えていきました。

地図は雑誌や本、チラシやポスターなどいろいろなところに載っていますが、地図帳に掲載されるような詳細なものか、デザイナーによってアレンジされたもののどちらかがほとんどです。僕はその中間くらいを意識していて、地図として機能しながらデザインとしてもきれいなもの、つまり「機能美」のある地図を心がけています。

いちばん大切にしているのは、「行ける地図」「行きたくなる地図」にすること。見て目的地に辿り着けることは大前提ですが、そのうえで地図を見てみようと思わせるデザイン力が必要だと思います。

そういう意味で、『恐るべきさぬきうどん』の地図は、行ってみたくなるものでした。香川県のディープな讃岐うどんのお店を紹介しているガイド本なのですが、地図自体はとてもざっくりしています。「果たしてこの地図だけで行きつけるのか」とも思えるシンプルさ。しかし、店までの過程が詳細に描写されている"地図的"な文章とあいまって、私の行きたい欲をとても掻き立ててくれました。地図は、「この店に行ってほしい」という思いを込めてつくるべきだと思った本です。

外から人を呼び込む地域のイベントを告知するチラシやポスターの地図は、実はとても大きな役割を果たしています。地図制作者は、ぜひ「来てほしい」という思いを込めてつくってほしいと思います。

雑誌や書籍に掲載される地図をデザインすることから始まって、フリーランスの地図デザイナーとしてとことん地図と向き合ってきました。僕のような専門の地図デザイナーは少ないです。地図づくりの技術は独学で、わかりやすい地図をつくるために自分の中で、どのランドマークを入れるとか、道路の入れ方などのルールを決めています。

その参考になったのが『インフォグラフィックス』です。インフォグラフィックとは、情報やデータを視覚的に表現したもの。地図もその一つに含まれていて、地図のデザインに必要なことが簡潔にまとめられています。また、色の使い方や組み合わせ方に自分とは違う発想があり、デザインのヒントになっています。

さいとう・なおみ●『アルテコ』代表。雑誌や書籍のマップをデザインする『マップデザイン研究室』や小さな本屋『ふやふや堂』、古民家を改装した『カイバテラス』を営む。重要伝統的建造物群保存地区の群馬県桐生市本町1・2丁目周辺のまちづくりにも携わる。

text by Reiko Hisashima, Fumi Itose, Kentaro Matsui, Sumika Hayakawa, Ikumi Tsubone, Etsuko Ishii & Daisaku Mochizuki

記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。