仲間とまちの未来のために動き、「まちにこういうものがあったらいいのに」と複数のプロジェクトを立ち上げて実行している、矢田項一さん。プロジェクトにおいて、関係人口を生むヒントになった5冊を選んでもらいました。
選者 category:プロジェクト
弊社設立のきっかけは、2019年、食を中心とした事業や取り組みで地域の未来を牽引する“地域リーダー”を応援する「地域創生トレーニングセンタープロジェクト」(通称:トレセン)の4期で地域プロデューサーに選出されたことでした。
全国のプロデューサーから多くの刺激を受けましたが、その一つが「トレセン」の先輩である市来広一郎さんが深く関わっている静岡県熱海市の事例です。『熱海の奇跡』には、衰退した観光地の代名詞になっていた熱海が再生していくまでが綴られています。特に市来さんが大事にしたのが「熱海のファンづくり」を通して小さなコミュニティをつくること。そのうえでプロジェクトをつくるのが大事だとこの本から学びました。函館も観光地です。観光は、「地域を知るきっかけ」でもありますが、「知って終わり」のケースも多いからこそ、関係性を継続していくために必要なのが、まちと関わるプロジェクトだと考えています。
地域という枠組みを超えて、北海道や日本というより大きな視野を教えてもらった本が『クオリティ国家という戦略』です。著者の大前研一さんは道州制の推進を掲げ、日本の進むべき針路を論じていますが、印象的だったのは、フィンランドが教育に力を入れて一人ひとりのリテラシーを上げていること。人材は国の資源で、この考えは日本の地域にも応用できます。地域の内外の人を交ぜ合わせることで、地域の人たちは外の感覚や技術を取り入れて一人ひとりの能力を上げられ、地域の人口の少なさを補っていけるのです。ここに関係人口を生む目的があります。国のあり方とともに、今自分に何ができるのかを考えさせられました。
また地域の将来像を打ち出し、そこに住んでいる人に伝えていくことも大事だと学びました。僕にとってプロジェクトとは、地域を盛り上げたいというより、「まちにこれがあったらいいな」をつくること。その繰り返しで、これからも地域の内と外をつないでいきます。
─新しい働き方に挑戦するための6つの対話
山崎亮著、駒崎弘樹著、古田秘馬著、遠山正道著、
馬場正尊著、柳澤大輔著、大南信也著、学芸出版社刊
佐藤可士和著、ダイヤモンド社刊
原 泰久著、集英社刊
新しい観光の開拓というより、何年も続いていく持続可能なまちづくりをしたことがすばらしいと感じました。小さなコミュニティづくりをすることで、次々とおもしろい人が集まってくる連鎖が起き、関わる人が増えると学びました。
クオリティ国家という戦略/大前研一著、小学館刊
日本が中国やアメリカに対抗する唯一の方法として、高い国際競争力をもつ「クオリティ国家」になることや、今後日本が進むべき針路を論について一冊です。地域に住む人や自治体に勤めている人におすすめです。