総合人材サービス会社に勤めながら、複業として地域おこし協力隊となり、長野県塩尻市で働くことを希望する人材を中小企業とマッチングしてきた横山暁一さんが、関係人口側、受け入れる地域や企業側の両方の視点から読んでおきたい本を紹介。
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その頃読んだのが、会社と個人の関係を新たな視点から提示した『ALLIANCE』です。現状、日本では退職すると会社との関係は途切れてしまう場合がほとんどですが、これからは退職後も関係が持続する、あるいは、一度辞めた人を再び雇う「アルムナイ採用」も増えると予測されていました。退職後も一緒にプロジェクトを実施したり、ほかで経験したことを会社で生かすなど、信頼で結ばれるネットワークを確保することが会社も個人も大切だとあり、転職への背中を押されました。
これは、「地域と個人の関係」に置き換えることもできます。地域に住民票を置く、置かないということではなく、その地域を好きになり、課題を自分ごと化し、解決のためにひと肌脱いでくれる関係人口がどれだけいるかが、これからの地域の生存戦略として重要になります。
『自律の時代を生きるプロティアン・キャリア戦略』は、「プロティアン・キャリア」という理論について書かれています。以前は、職位が上がることがキャリアの成功とされてきましたが、プロティアン・キャリアでは自分の心理的な満足度がキャリア成功の基準。キャリアの成否を決めるのは会社ではなく個人で、会社は個人の心理的成功を達成できる土台をつくる存在になります。
プロティアン・キャリアでは、自分らしさを追求することも重要です。自分らしいキャリアをつくるなかで、3つの資本を持つべきだと指摘されています。会社で培った仕事のスキルや資格などの「ビジネス資本」、人とのつながりや会社との信頼関係である「社会関係資本」、収入や貯蓄の「経済資本」の3つです。私も「ビジネス資本」を活用して地域で挑戦し、そこで「社会関係資本」を蓄積したことが、NPOの事業立ち上げにつながり、自分らしいキャリア形成につながっています。
地域での仕事のキャリアは、豊かな人生を送れるかどうかにも関わる大切なものだと思います。この本を読めば、本当のキャリアとは何かと考え、それを得るためのアクションを起こしたくなるでしょう。
エド・マイケルズ著、ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ著、ベス・アクセルロッド著、マッキンゼー・アンド・カンパニー訳、渡会圭子訳、翔泳社刊
リンダ・グラットン著、池村千秋訳、東洋経済新報社刊
駒崎弘樹著、筑摩書房刊